2021年F1第6戦アゼルバイジャンGPの決勝レースは、序盤こそ大きなトラブルもなくレースが進んだものの、折り返しを過ぎた30周目にランス・ストロールがタイヤバーストに見舞われた。そして後半は首位を走っていたマックス・フェルスタッペンもタイヤバーストによりリタイアに。波乱の展開となったアゼルバイジャンGPのレース後半を無線とともに振り返る。
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【F1第6戦無線レビュー(1)】「なんで彼らはあんなに前なんだ?」ハミルトン、タイヤ交換後にライバルとの差に愕然
30周目のランス・ストロール(アストンマーティン)のタイヤバーストによるクラッシュで、セーフティカー(SC)が導入された。しかし事故の場所がピット入り口に近く、エントリーは閉まったまま。誰もピットに入ることができない。
SC先導で走る間、ルイス・ハミルトン(メルセデス)はハードタイヤの酷さを、担当エンジニアのピーター・ボニントン(通称ボノ)に何度も訴えていた。
ハミルトン:ミドルセクターのトラクションとグリップは凄いね。このタイヤじゃ、とても対抗できそうにない
ハミルトン:このタイヤでのリスタートは難しい。みんな同じだろうけど
ボノ:そうかもしれない
上位3台の順位はリスタートでも変わらず。ハミルトンはペレスの1秒以内に迫るものの、仕掛けることはできない。
46周目、タイヤをいたわりながら首位を快走していたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が、ストレートを時速300km超で走行中にクラッシュ。ストロール同様、左リヤタイヤのバーストだった。
フェルスタッペン:(xxxx)タイヤだ!
ストレート上には破片が散乱し、明らかにレースを続けられる状況ではない。それなのにセーフティカーは、なかなか出てこなかった。
マルコス・ペドロス:まだレースは続いている
シャルル・ルクレール:ジョークだ、ジョークとしか言いようがない。どうしてセーフティカーが入ってこないんだ?
ハミルトンは事故原因をボノに訊いていた。
ハミルトン:タイヤが壊れた? パンクなのか? それとも摩耗が原因か?
ボノ:まだ何とも言えない
ほぼ2周後にようやくSCが導入されるが、ここでウイリアムズ陣営で混乱が起きる。ラティフィの担当エンジニア、ガエタン・ジェゴが、ピットに入らないよう指示したのだ。
ジェゴ:ステイアウト、ステイアウトだ。
ラティフィ:え? ステイアウトって、コース上にステイアウトという意味だよね?
ジェゴ:いや、ピットは通過するが、ピットには止まらない。あ~申し訳ない!
コース上の破片を避けるために、各マシンはSC先導で次々にピットに入って行ったが、ラティフィだけはそのままストレートを通過していった。ジェゴはすぐに過ちに気付いたが、ラティフィはピットエントリーを通過した後だった。ラティフィはレース後、30秒のタイム加算と3ポイントのペナルティポイントを科されてしまった。
レースはそのまま赤旗中断となり、残り2周で決着をつけることになった。
ハミルトン:これはマラソンだ。スプリントレースじゃない。どれだけアグレッシブに行くか、十分考えようじゃないか
ボノ:了解
トト・ウォルフ:完全に同感だ
ピットでリスタートを待っていた時のハミルトンは、無理して優勝を狙わなくても、2位で十分だという気持ちだったはず。ところが1コーナーのブレーキングで止まりきれず、最下位に転落してしまう。ブレーキバランスを極端にフロント寄りにする『マジックボタン』の誤作動だった。
ハミルトン:みんな、すまなかった
ボノ:いいんだ、ルイス
ハミルトン:僕はマジックボタンをオンにしたままだったのか? オフにしたはずだったのに……
ボノ:ああ、オフにしたと思う。でもアップシフトの時に、またオンにしたようだ
対照的にレッドブル陣営は歓喜に湧いた。
クリスチャン・ホーナー:よくやった、セルジオ!
セルジオ・ペレス:君たちの勝利だ、素晴らしい仕事をしてくれた
ヒュー・バード:すぐにマシンを止めろ
ペレス:了解だ。マックスは残念だった
油圧系のトラブルを抱え、リタイアも覚悟したというペレス。キャリア2勝目に喜びを爆発させながらも、フェルスタッペンへの配慮も忘れなかった。
そして2位にはセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)が入った。アストンマーティン移籍後、序盤4戦は1度も入賞できず。それがモナコで5位に入り、ここでは11番グリッドから2位表彰台を射止めた。まずは自身の復活を素直に喜んだベッテルは、続けてペレスの勝利を祝福した。それも彼の母国語のスペイン語で。実に心憎い気遣いだった。
ベッテル:チェコ、優勝おめでとう。きみの優勝が、本当に嬉しいよ
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