2月13日に、ベルギーで欧州向け新型カローラが発表された。日本ですでに発売されている「カローラスポーツ」のほか、セダンとステーションワゴンを加えての発表だ。
それによると、カローラセダンの車体寸法は、全長が4630mmで全幅は1780mm。その全幅は、国内で販売されているカローラスポーツの1790mmより10mm狭い。しかし、国内向けがそれと同じだとすると、5ナンバーカローラがいよいよ消えることになる。
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ちなみに、現行カローラアクシオの車体寸法は全長が4400mm、全幅が1695mm。海外向けのカローラと差別化することでこのサイズを実現してきたが、年内に登場予定の新型カローラセダンは“海外のカローラ”をベースに開発。国内向けと海外向けのカローラが共通化されるのは2000年発売の9代目以来となる。
ただし、国内向けの新型カローラセダンは、海外仕様より若干、小型化することで日本のニーズに応えるという情報もある。“ニッポンのカローラ”を小型化することは果たして可能なのか?
文:御堀直嗣
写真:編集部、TOYOTA
新型カローラの小型化はプリウスにヒント?
カローラの開発責任者である小西良樹チーフエンジニアは、昨夏、カローラスポーツ発表の際のインタビューに答え「これまで永年にわたりご愛用戴いてきた日本のお客様のことは十分に配慮しながら、アクシオ(セダン)とフィールダー(ステーションワゴン)の開発を進めています」と答えている。それは誠意ある口調であった。
公開された欧州仕様のカローラセダン1.8Lの写真を改めてじっくり眺めてみると、偏平タイヤを装着したかなりふくよかなブリスターフェンダー的造形を持つ姿であることがわかる。そこから80mm+αの幅を削れば、5ナンバー枠に入る。
しかし、“たかが8cm強”ではあるが、それを削ることは容易ではないだろう。また、フロントグリルなども、あとに続くフェンダーの形状が変わることで影響を受けないとも限らない。車体寸法を削ることにより全体的な印象は変わる可能性がある。
一説によると、日本仕様の車体寸法は、全長4495mmで、全幅が1745mm程度になるとの噂もあるようだ。噂の域を出るものではないが、これをきっかけにすると、現行プリウスは、全長が4480mmで全幅は1745mmである。プリウスは4ドアハッチバックで、アクシオはセダンであるとはいえ、国内向けと噂される車体寸法にプリウスは比較的近い大きさといえる。
全長についても、欧州仕様のカローラセダン1.8Lの写真を見ると、伸びやかな造形をやや縮める道がないとはいえない姿にも見えてくる。
ここで肝心なのが、現行プリウスからはじまった、TNGA(=トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー、同社の新世代プラットフォーム)の存在だ。
「車種に適した調整」で日本のカローラに小型化の道も
かつて、カローラは国内向け5ナンバー車を実現するため、海外向けのカローラはオーリスを基にしたプラットフォームを2006年から使い3ナンバー化したが、国内には前型(9代目)のプラットフォームを継承して5ナンバーを維持した経緯があった。また、2012年の国内向けアクシオは、ヴィッツと通じるプラットフォームを活用してきた。
しかし、トヨタは「もっといいクルマづくり」をするため、TNGAを導入し、その成果はプリウスからC-HRへの展開で成果を上げ、カローラスポーツでも世界的な走行性能の向上を果たしている。TNGAというクルマづくりの根幹を定義づけた今日、国内向けセダンだけ別のプラットフォームというわけにはいかないだろう。
TNGAの成果は、世代を追うごとに着実に進化と結果を残しており、ことにプリウスからC-HRへの段階でいかんなく効果を発揮した。そのTNGAを活用したカローラセダンとなるアクシオが、国内向けにおいても走行性能のみならず快適性を含め格段の進化をもたらすことへの期待は高い。それによって、永年カローラを愛用してきた人々に新たな喜びをもたらすに違いない。
とはいえ、今日のアクシオでさえ、初代から5代目までのクラウンを超える車幅となっている。車庫の問題一つをとっても、クルマの性能や商品性が向上するからといって安易な3ナンバー化は国内の交通事情に対し不便さを伴わせるものとなるに違いない。
街を歩けば、家の脇のわずかな空間に、どうやって止めたのかと思うほど巧みに駐車した様子を目にすることがある。そのように、ぎりぎりの空間を駆使して愛車をおさめてきた人たちがいる。
TNGAを使ったプリウス、C-HR、カローラスポーツの諸元をみると、車体寸法やホイールベース、トレッド、そして最小回転半径などに若干の違いがみられる。つまり、TNGAは単に同じ部品の共用化ではなく、技術の基本概念の共通化であり、“それぞれの車種に適した調整”が行われることがわかる。
TNGAを活用した車種の中でもっとも車幅の狭い現行プリウスか、それ以下の車体寸法に抑えられれば、それなりの顧客に納得してもらえるかもしれない。日本自動車販売協会連合会の乗用車ブランド通称名別順位において、昨年プリウスは、ノート、アクアに次ぐ3番目の販売台数を残している。
多くの消費者が、プリウスの寸法を認めたともいえる。そのうえで、日常の使い勝手の面で、既存のアクシアが最小回転半径4.9mであるのに対し、プリウスは廉価車種で5.1mとなっている。こうした点も、さらに努力がはらわれる必要があるだろう。
最小回転半径は、タイヤ寸法も影響してくるから、欧州仕様のカローラセダン1.8Lでブリスターフェンダー的な造形と偏平タイヤの組み合わせであるところを、より細身で、偏平でないタイヤと組み合わせて行くことで、最小回転半径を詰めていけるのではないか。
「タイヤ」で取り回し改善も! 新しい国民車への期待
すでに発売されているカローラスポーツにおいても、実は、もっとも廉価グレードの「X」に標準装備となるタイヤサイズ(195/65R15)での運転感覚が、操縦安定性と乗り心地の両立において国内における適切な選択との印象を筆者は持っている。
外観の好みで偏平タイヤ(※ゴム部分が薄いタイヤ)を志向する傾向が根強いのは承知している。しかし、公道を走る上で、舗装路といえども偏平タイヤの接地面が路面に十分に接していないと感じることもある。
極端な例ではあるが、BMWのi3は、電気自動車(EV)という特殊な背景があるにせよ、これまでの常識を覆すタイヤ寸法を採用してきた。そのように、市販乗用車として性能面で適切であり、かつ造形的にも魅力を失わせないタイヤ寸法と車体の外観という新しい関係を切り拓く創造が生まれてもいい時代に来ているのではないだろうか。
話が飛躍しすぎるかもしれない。だが、TNGAという商品力を車種に応じて最大に引き出す戦略を導入したトヨタが、適切かつ新しいクルマの造形とタイヤの関係を発信してくれたら、大衆車の発展形としてのこれまでのカローラ以上に人々のためのクルマが生まれるのではないか。
小西エンジニアの誠実な言葉を信じる一人として、国内向けカローラセダン、アクシオの登場は待ちきれないところである。
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