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一歩戻って二歩進む……アルピーヌ、コンセプト変更での大低迷は覚悟の上?「そうしなければ、後でもっと苦労するかもしれない」

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一歩戻って二歩進む……アルピーヌ、コンセプト変更での大低迷は覚悟の上?「そうしなければ、後でもっと苦労するかもしれない」

 アルピーヌF1は今季、ワークスチームであるにもかかわらず最下位争いを繰り広げる、苦しい立場に立たされている。これについてチームは、昨年のマシンには限界が見えていたため、躍進を果たすためにはコンセプトの変更が必要であり、その過程で一時後退しなければならないことは覚悟していたという。

 どんなチームでも、マシンのコンセプトを転換する場合には、新しいプラットフォームからパフォーマンスを引き出す方法を理解するための学習期間を過ごさねばならない。その際、厳しい日々を過ごすことになるのも避けられないのだ。

■アルピーヌF1、最遅の”衝撃”が体制刷新の引き金に「変革の必要性を確認できた」

 アルピーヌは今季厳しい状況に立たされており、同チームの今季マシンA524は、開幕2戦で最下位争いから抜け出すことができていない。

 このA524の発表会の際にチーム関係者は、シーズン序盤は厳しい戦いになると口を揃えた。その懸念が的中してしまった格好だ。とはいえ、その予想よりもはるかに厳しい状況であるのも確かである。

 チーム代表のブルーノ・ファミンは今週末のオーストラリアGPに先立ち、次のように語った。

「それは実際には、我々が予想していたよりもはるかに困難だった」

 そうファミン代表は言う。

「我々は進歩を続け、なぜパフォーマンスが不足しているのか、そして最終的にパッケージをどのように改善できるかについて、理解を深める必要がある。明らかに、早急に解決しなければいけない問題があるんだ」

アルピーヌが解決すべき問題とは?

 アルピーヌにとって厳しいのは、複数の面で問題に直面しているということだ。復活するためには、これらのすべてに対処しなければならない。

 開幕当初、同チームでテクニカルディレクターを務めていた(現在は辞任)マット・ハーマンは、アルピーヌが直面している問題を率直に語った。曰く、顕著な点が3つあるという。

 まずひとつ目は、パワーユニット(PU)のパフォーマンスだ。アルピーヌが使うルノー製PUは、ライバルに比べて出力が劣っているのは間違いなく、その差は15~30bhpの間とされている。僅差の戦いとなっている中団グループでは、その差が大きな違いを生むことになる。

 ふたつ目はマシンの重量だ。近年のF1マシンは、いずれのチームも軽量化に苦しんでいることが知られている。そんな中でアルピーヌの今季マシンA523は、最低重量よりもかなり重いと言われる。

 アルピーヌは冬の間にクラッシュテストを通過することに苦労。ある情報筋によれば、補強のために、重量が嵩んでしまったという。当初最低重量以下でマシンを作ることができていたが、このクラッシュテスト対策の結果、最大15kgも重量が増加してしまったという。

 この数字がどれほど正確なモノかは分かっていない。しかしハーマンは、クラッシュテスト対策が重量増加の一因になったのかと尋ねられた際、次のように語った。

「一部ではない、あるひとつの部分だった。それは、重量増加に影響を及ぼした」

「しかし忘れてはいけないのは、(クラッシュテストに向けては)とても厳しく攻めなければいけないということだ。何も失敗しないのは簡単なことだ。そういうことは、我々には間違いなくできる」

「エンストン(アルピーヌのシャシー製造のファクトリー)の人たちは、そのことに驚くような形で応えてくれた。そして私は、みんなのことを誇りに思っている」

「テストには、非常に高い信頼性を持って臨むことができた。あとは修正していくだけだ」

 ハーマンは当時、最低重量となる798kgまでマシンを軽量化すべく、そのための明確な計画が策定されていると語った。

「我々は余分な重量がどこにあるのかを正確に理解しており、それを取り除くための方法も分かっている」

 そうハーマンは語った。

「主に、我々のオペレーションシステムを進め、それをマシンに導入していくだけでいい」

「正直に言って、このポジションは我々が望んでいたような場所ではない。しかしすぐに、最低重量に戻ることができると思う」

 アルピーヌにとって最大の悩みは、実はこのふたつではない。真の問題はマシンのリヤエンドにあり、ダウンフォースとトラクションが不足していることで、ピエール・ガスリーとエステバン・オコンの足を引っ張っている。

 ハーマン曰く、CLrと呼ばれるリヤの揚力系数がこの問題には関係しているという。平たく言えば、アルピーヌA524は、フロントで得られるダウンフォースとのバランスを取るため、より多くのダウンフォースをリヤで発生させなければならないということを意味している。それが実現するまで、状況の改善は難しいだろう。

「ほとんどの人が最初にそうするように、もっとCLrが必要なのだ。つまりクルマのリヤに、もっと荷重が必要なんだ」

 そう彼は語った。

「我々は、マシンのトラクションを改善したいと考えている」

「機械的にトラクションを向上させるために、いくつかの工夫を施した。今我々は、それを高度な空力で補完する必要がある」

23年型A523のコンセプトは、限界に達していた

 ハーマンは当時、理想からは程遠いとしながらも、リスクを冒してでもコンセプトを変えなければいけなかったと語っていた。つまり昨年型のマシンを踏襲するだけでは、パフォーマンスの限界をすぐに迎えてしまうと、彼らは気付いていたのだ。

「A523の開発の途中で、パフォーマンスを引き上げるのが難しくなってきたと感じ始めた」

 そうハーマンは説明した。

「我々には費用対効果の基準がある。そして、パフォーマンスを引き上げていくことができると正当化するのが、さらに難しくなった。そこで我々はそのずっと前、可能性を解き放つために、2022年の状態に戻れるようにしようと努めた」

 すでに開発を離れているハーマンだが、今年新しい方向性を目指すという決断は、今後壁にぶち当たることを避けることが目的であると明言した。しかも2026年からはテクニカルレギュレーションが大きく変更される予定であるため、基本的にはこの2024年マシンをベースに、2年間戦っていくことになるのだ。

「基本的にこのマシンには、2年間分のポテンシャルが必要なのだ。だから、これは勇気ある決断だった」

 そうハーマンは語る。

「そうしなければ、後で苦労することになるかもしれない。それが、この件の要点だった」

 二歩前進するため、一歩後退することを選んだアルピーヌ。その甲斐はあったのだろうか? それとも??

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