日本では安全基準を満たさないチャイルドシートの出荷は禁止されている
現在は多くのサイトが販売中止としているが、楽天市場では4月9日頃までほぼクッションのような布製チャイルドシートが販売されていた。
【画像】【殺人チャイルドシート】 違法チャイルドシート買った人に返金はある? 関連写真をみる 全24枚
日本で流通できるチャイルドシートは国連欧州基準【UN/ECE】に適合した製品だけであり、ECE R44/04(旧基準)やECE R129に適合した製品には通称「Eマーク」と呼ばれるシールが貼られている。購入する際はこのEマークを大前提として、クルマとの取付けが正しくできるかどうかの適合を確認して選ぶことになる。
ちなみに日本でチャイルドシートの着用が義務化されたのは2000年4月のこと。警察庁とJAFの調査によると未だに装着率は0~5歳全体で7割強、ジュニアシート世代となる5歳においては5割前後と非常に低くなっている。
また、ドイツをはじめとした欧州各国が10~12歳、身長150cmまで着用義務としているが、日本はいまだに5歳までで身長基準はなし。後席シートベルトが正しく着用できる身長145~150cmまではジュニアシートを着用するべきだがなかなか浸透しない。小学生になったらチャイルドシートは卒業というイメージか?
その結果、日本では近年、自動車乗車中にジュニアシートやシートベルトを正しく着用しないことで年間1万人以上の小学生が死傷している。
日本で流通できるのはいわゆるEマークがついている製品となるわけだが、2012年7月1日からはECE R44、2023年9月1日からはECE R129に適合した製品だけがメーカーや輸入業者からの出荷が許される。
R44製品は旧基準となり生産終了となっているが、在庫があるうちは新品での販売も可能である。
楽天市場で販売されていた恐ろしい布製チャイルドシートとは?
今回、楽天などのECサイトで大量に販売されていたチャイルドシートは、もちろんどこの国の安全基準も満たしていない危険過ぎる商品だ。なぜこんなものが大手通販サイトで販売されていたのか?
実はこの違法チャイルドシートの販売はいまに始まったことではない。もっと前からあったかもしれないが、筆者は2015年にアマゾンで販売されていた違法商品2種を検証用に購入している。
安全基準を満たしていない製品がどのようなものなのか? 値段はいずれも3000円前後であったが、見た目からして「ヤバさ」がすぐわかる。ほとんどクッションかシートカバーか? というつくりで説明書に日本語はなく中国語のみ。もちろんEマークもなし。そして、筆者のところには2017年と2020年にアマゾンから返金の連絡があった。
アマゾンがリコール&返金に動いたきっかけのひとつが、2017年に国交省が「未認証チャイルドシート」の危険性を公表したことだ。国交省は市販されている7製品を購入して検証を行っており、すべてが国の安全基準に適合していないことを確認。
動画では衝突の衝撃でいとも簡単に違法商品のベルト部分がちぎれて座っていた子どもがシートから放り出される様子がわかる。実際の事故であれば車外に放り出されて地面にたたきつけられて死亡…という最悪の結果となる可能性もある。
この動画がきっかけで以降は危険な布製チャイルドシートは各通販サイトから姿を消した。が、しかし間もなく楽天でもアマゾンでも販売が再開されており、以降は指摘を受けて販売中止→1~2年後に販売再開→再び販売中止→販売再開…を繰り返す状況となっていた。
違法チャイルドシートに高評価?
そして今回もいつの間にか楽天で複数の業者がこの違法な布製チャイルドシートを販売しており、ほかの通販サイトでも形は少し異なるが明らかに安全基準を満たしていない製品の販売が確認できた。
注目すべきは購入者からのレビューである。どれも☆4~5の高評価で、祖父母や親と思われる無知な保護者がこの危険な商品を絶賛しているのだ。
「2000円で買えるチャイルドシートはコスパ最高!」(20代女性)
「デザインもかわいくゆったりしたつくりなので孫が嫌がらず乗ってくれる」(70代女性)
「小さくたためるので場所をとらず邪魔にならない」(30代女性)
などなど…
目を覆いたくなるような恐ろしいレビューが並んでいる。自分の無知と恐ろしい勘違いで孫だけを死なせてしまう地獄が見えていないのだろうか?
このような恐ろしい商品に対して、通販サイトではどんな販売規制を敷いているのか?
ちなみに、ある販売業者に問い合わせたところ「こちらは自動車用ではない」との答えが返ってきた。確認すると商品紹介の最初にさっきまでなかった「非自動車用」という言葉が付け加えられていた。
商品紹介の写真はすべて車内で子どもと一緒に撮影されたものであり、取り付け方の説明もクルマ用である。「非自動車用」と書けば逃れられるとでも思ったのか。子どもの命を何だと思っているのだろうか。
怒りがこみあげてきたところで、楽天の広報担当者に尋ねてみた。販売中止と再開を繰り返している状態を知っているのか?
購入者への返金はあるのか? など、聞いてみた。
そもそも取り扱い禁止に指定されている
返ってきた答えが以下となる
「『楽天市場』では、自動車用チャイルドシートを取り扱う際は、法令が定める規格・基準を満たしていることを示すEマークの貼付(表示)を必須としております。Eマークが貼付(表示)されていない自動車用チャイルドシートは、法令で定められた販売条件にかかわらずユーザー保護の観点から『楽天市場』では取り扱い禁止商材に指定しております。
自動車用ではないその他のチャイルドシートについても、自動車に使えるかのような文言や画像を用いて、お客様に誤認を与えるおそれのある表示などを禁止しております。現在、ユーザー保護の観点から取り扱い禁止も視野に入れて検討しております。
なお、ご指摘の商品ページを社内で確認いたしましたところ、自動車用ではないチャイルドシートとして販売されていましたが、お客様に誤認を与えるおそれのある表示を確認いたしましたので、当該商品を一時販売中止し『楽天市場』の規約に則り厳正に対処してまいります。
また、チャイルドシートを取り扱う出店店舗様に向けては、上記ルールの周知徹底のメール配信などを行い、注意喚起を実施しているほか、継続的なモニタリングも実施しております。
ユーザーへの対応についてですが、行政機関の発表等を踏まえてリコールが必要とされる製品は、当該製品のリコール情報をお客様向けのヘルプページに掲載し、注意喚起を行っています。販売済の商品については、出店店舗による対応が困難な場合には、店舗に代わり、お客様対応をすることもあります」
購入者は今すぐ使用をやめて返金を求めるべし
楽天広報担当者からの回答では「販売業者に連絡をして、対応が困難であれば楽天側で補償を行う」そうである。
「商品の未着・遅延・欠陥品やブランド模倣品などの購入など、万が一のトラブルの場合に、購入金額の最大30万円までを補償する補償制度『楽天あんしんショッピングサービス』も提供している」とのことである。
恐ろしく危険な布製チャイルドシートを買ってしまった方は、今すぐ使用を中止し返金を求めるべきだと筆者は考える。Eマークのついたジュニアシートは1万円以下で購入することができる。
チャイルドシートはコスパで選ぶものでもないし、デザインや質感で選ぶものでもない。まずは、安全基準に適合している製品であることが大前提だ。そして、製品を選ぶ際にはまず装着する車との適合を確認する。
チャイルドシート売り場にある適合表を見るか、チャイルドシートメーカーの公式サイトでも調べられる。車の年式と型式を用意して確認すべし。まともなチャイルドシートメーカーなら適合表を用意するはずだし、そもそも適合表の設置は義務付けられている。
「安いから」/「場所をとらないから」/「デザインがカワイイから」そんな理由でチャイルドシートを選んではいけない。冒頭にも書いたが年間1万人以上の小学生がジュニアシートやシートベルトの不適切な使用のせいで死傷している。
その1万人の中には、安全基準を満たさない布製チャイルドシートを使用していた子どもが含まれている可能性もある。世界一大事なわが子の命を守れるのは親であるあなたしかいないことをどうかお忘れなく。
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