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インタビュー:「まだまだやれる」メーカー育成から外れるも自力でのチャンスを模索する荒川麟

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インタビュー:「まだまだやれる」メーカー育成から外れるも自力でのチャンスを模索する荒川麟

 2024年、スーパーGT GT300クラスではRUNUP RIVAUX GT-Rを、全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権ではB-MAX RACING TEAMの51号車をドライブしているのが、埼玉県生まれの荒川麟だ。今季、荒川は自動車メーカーのサポートを受けず、上を目指し戦いを続けている。ここまでのキャリア、そして将来の夢について荒川に聞いた。

 荒川は1999年生まれ。レーシングカートを経て、スーパーFJで戦っていた2019年には鈴鹿サーキットレーシングスクール(SRS)でSRS-Fアドバンスを受講している。この年は岩佐歩夢や大草りき、木村偉織、同い年で今季B-MAX RACING TEAMのチームメイトでもある小出峻もこの年に受講していた間柄だ。

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■2年間TGR-DCで戦うも掴めなかったハシゴ
 そこでスカラシップを得ることはできなかったが、2020年にはZAP SPEEDに加わりFIA-F4に参戦。ヘルメットドライヤーでお馴染みのDr.Dryのカラーリングで戦い、ランキング8位となった。この翌年の2021年、荒川は大きなチャンスを得る。FIA-F4でトヨタの若手育成プログラムであるTGR-DC Racing Schoolのシートを得たのだ。チームメイトは野中誠太、奥住慈英、清水英志郎という3人だった。

 この年、荒川は開幕からコンスタントにポイント、そして表彰台を獲得。鈴鹿での第4戦で優勝を飾ると、もてぎでの第12戦を制し、野中と白熱のチャンピオン争いを展開した。しかし、最終ラウンドの富士では野中に連勝を許しランキングは2位。タイトル獲得はならなかった。

 翌2022年も荒川はTGR-DC Racing SchoolからFIA-F4を戦うも、「次の年はチャンピオンを狙いたかったのですが、逆に2021年よりも悪い結果で終わってしまいました」と小出、三井優介に次ぐランキング3位となってしまう。この年もコンスタントにポイントを獲得していたが、荒川は一度も優勝することができなかった。

「未勝利に終わってしまったことが大きいと思います」と荒川は分析するが、この年限りで荒川はTGR-DC RSスカラシップドライバーから外れてしまった。ここ数年は必ずしもそうではないかもしれないが、ステップアップの“ハシゴ”からは外れてしまったも同然だった。もちろんTGR-DCとしても、全員を育成し続けるわけにもいかない。さまざまな検討の中で下された結果だった。

■知り合いづてで掴んだスーパーGTへの挑戦
 ただ、荒川は諦めることはなかった。「まだまだやれると思っていました」と、2020年と同じく、Dr.DryからFIA-F4を戦った。「2020年に所属していましたが、チームオーナーの大阪八郎さんにはそれからもいろいろお世話になっています。(TGR-DC時代の)2021~22年もお世話になっていて、2023年にはまた声をかけていただき、体制としては2020年と同じ体制でやらせていただきました」という体制で戦ったこの年のランキングは6位。4年間戦いタイトルには届かなかったが、常にトップグループで戦い続けてきた。

 荒川は2024年に向け、F4挑戦に区切りをつけ、新たな活動に踏み出した。「FIA-F4はやり尽くしたところもあったので、スーパーGTに出場したいと思っていました。そこで、知り合いづてに田中篤オーナーをご紹介いただき乗らせてもらうことになりました。まだ結果はしっかり出ていませんが、今年は何戦か出場させていただいています」とTOMEI SPORTSが走らせるRUNUP RIVAUX GT-Rのシートを得た。

 初めてニッサンGT-RニスモGT3で戦っているシーズンだが、スーパーGTでは第2戦富士から3戦連続で大滝拓也とともに予選を担当するなど、その速さをしっかりと買われている。今シーズンの残りのレースでも速さをみせれば、多くのドライバーがそうであったように、関係者たちが見ているなか次なるチャンスに繋がるはずだ。

■持ち込みで臨むライツへの挑戦
 そして、荒川が挑戦しているもうひとつのカテゴリーがスーパーフォーミュラ・ライツ。今シーズン当初はB-MAX RACING TEAMからスポット参戦の予定だったが、開幕となった第2大会のオートポリスから全戦に出場している。

「スーパーフォーミュラ・ライツについては、完全に自分の持ち込み資金でやっています。それはどちらかというと、上に繋げるというか、乗ってみたいという希望がありました。2023年もそうですが、まだまだ戦えるというのは自分自身も思っていたので、メーカーの育成ドライバーたち相手になりますが、出場することを決めました」と荒川は今季参戦を決めた理由を語った。

 荒川が語るとおり、今季の参戦はすべて持ち込み。コントロールエンジンの投入などでコストは下げられつつあるとはいえ、「正直、すごくかかります。スポンサーさんにも支えていただいていますが、使い切ったというか、自分の資金だけでやっているので、苦しいところがあります」という。シリーズはまだ3大会あるが、スポンサーが必要では? と問うと「はい。募集中です」とのこと。

 それでも、「あれだけダウンフォースも強くて速いクルマになるので、自分のドライビングの幅も増えましたし、セッティングの項目もすごく多いです。そういう面でいろんな知識をつけることもできましたし、本当に出て良かったと思います」とライツへの挑戦で得るものは大きいと荒川は言う。

 今シーズン、開幕前のテストでドライブすることもできず、レーシングスーツも“お下がり”でライツに臨んでいる荒川だが、3大会9戦を終えて表彰台を4回獲得。他に誰も成し得ていない全戦ポイント獲得を続けており、メーカー育成のライバルたちを前にランキング4位につける結果を残している。

■「ステップアップしていくしかない」上にいき恩返しを
 GT300、そしてスーパーフォーミュラ・ライツでの経験、さらに「富士SUPER TEC 24時間レースだけですが、Green BraveさんからGRスープラGT4に乗せていただいたりと、いろんな車種のクルマに乗ることができています」とドライビングの幅を広げている荒川。2022~2023年はスーパー耐久でKTMSからGRヤリスをドライブしていたが、こちらもチャンスを掴み「ハコについては上手くなることができたと思います」と経験を積んでいる。

「今年、こうしてたくさん乗る機会をいただいているのはまわりの皆さんのおかげです。RUNUP SPORTSの田中篤オーナー、B-MAX RACING TEAMの組田龍司総代表、そして大阪さん、スポンサーの方々のおかげです」と荒川は感謝を語った。

「ここまでしていただいたら、もうステップアップしていくしかないと思っていますし、上に上がることで恩返しすることが夢です。スーパーフォーミュラには乗りたいですし、GT500もぜひ乗りたいと思っています。日本のトップドライバーとして活躍できるように。これからも頑張っていきたいと思います」

 もちろんF4、そしてライツの結果からもコンスタントに結果は残すものの、爆発的なスピードで圧勝……というタイプではない。また荒川は礼儀正しい青年ではあるものの、口数が多いタイプでもない。

「速さの面では、トップドライバーになるからには当然必要ですが、自分をアピールする力というか、自己アピールがまだ得意ではないので、しっかりできるようにしたいですね」と今後に向けた課題は自覚している。

 今季GT500で活躍している大草りきのように、決してメーカーのスカラシップドライバーではなかったとしても、見ている人は見ていて、いつか大きな転機がやってくるはずだ。今季自らの力でもがき続ける荒川が、新たなチャンスを掴む日を待ち続けたい。

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