この記事をまとめると
■初のスプリント形式となったスーパーGT第4戦富士でのBRZ GT300に注目
優勝まで残り2kmに近づくも勝利の女神に裏切られる……! スバルBRZを襲った悪夢があまりにも悔しすぎたスーパーGT第2戦
■土曜日は山内選手が8位となったが日曜日に走った井口選手はトラブルによりリタイア
■2戦連続の富士でトラブル発生となり次戦鈴鹿での巻き返しに期待がかかる
前代未聞、ピットインなしのスプリントレース
国内で人気を誇るレースのスーパーGT。8月2~3日にわたって、静岡県の富士スピードウェイで「2025 AUTOBACS SUPER GT Round4 FUJI GT SPRINT RACE」が開催されました。
スーパーGTはセミ耐久レースというカテゴリーになり、ドライバーふたりもしくは3人で300~500kmもしくは3時間などのレースを戦います。そのため、レース中にはピットでのドライバー交代やタイヤ交換、給油といった作業が発生し、そのタイミングでレース展開や順位に変動が起きるのもスーパーGTの魅力のひとつです。
今回のスーパーGT第4戦では、スーパーGTでは初めての試みとなるスプリントレースが開催されました。
今回のスプリントレースのフォーマットは、8月2日(土)にGT500クラス、GT300クラス混走の35周レースを行い、8月3日(日)にGT500とGT300それぞれがクラス別の50分レースを行うというもの。両日とも給油義務はなし、ドライバー交代なし、タイヤ交換義務なし、サクセスウェイトもなし。ドライバーは担当する申請した曜日のみ出走が可能で、担当日以外は出走できない。以上のような特別ルールとなります。
また、これらのほかに、各レースごとに行われるBoP(性能調整)は設定されており、最低重量や地上高、エアリストリクターや燃料給油リストリクターなども個別に指定されています。
そんな特別な状況でスーパーGTが開催されることは初めてのことです。勝利をすると次戦にハンデウェイトを搭載することで同じチームが連勝をしないようにするスーパーGTにおいて、ノーウェイトでレースを行うのは開幕戦と最終戦のみ。シーズン途中でノーウェイトになることはいままでありませんでした。富士スピードウェイという国内屈指のコースで、どのようなレースが行われるのか期待が高まります。
スバルBRZ GT300では、土曜日の混走レースに山内英輝選手が、日曜日のクラス別レースに井口卓人選手が挑むことになりました。
参戦するレースはふたりでじゃんけんで決めたともいわれましたが、自分のスティントは先に終わらせたいという山内選手の気もちが働いたのかもしれません。
レースの世界は朝が早いというのは通説ですが、1日で練習走行、予選、そして決勝を行うため、チームやドライバーはいつもよりもさらに早い時間からサーキット入りし、入念に準備を進めていきます。
土曜日の練習走行では、山内選手がマシンのセットアップやタイヤ選択などを行います。通常のレースであれば練習走行が2時間程度あり、さまざまなセットアップや決勝用のシミュレーションを行いますが、今回は朝8時30分からFCYテストの10分間を含む混走40分、各クラス専有10分間の合計60分が行われ、この時間内でセットアップ、タイヤ選択などを決めていく必要があります。
山内選手は練習走行を終え4番手に位置しています。予選でスーパーラップを刻む山内選手のアタックに期待されますが、惜しくもトップには届かず、2位を獲得します。
午後の決勝レースでは、2位からスタートしトップを追いかける展開ですが、途中から徐々に後続に追いつかれ抜かされていきます。BoPでターボの過給圧が制御されていたためか、パワーが足りていないような状況のなか必死に走りますが、最終的に8位でのフィニッシュとなります。
BRZのピットは表彰台の下に近いところにあり、優勝マシンが表彰台の下にストップしチームのメンバーと歓喜あふれている場所を通り過ぎて、ピットにマシンが戻ってきました。
山内選手はコクピットからなかなか降りてこず、車内で今回のレースを振り返り、なにが足りていてなにが足りていないのかを逡巡しているように見られました。気もちを落ち着かせ、冷静な判断でエンジニアと会話をするように心がけていたのかもしれません。
普段ならすぐにドライバーの控室に戻る山内選手ですが、長い時間エンジニアとマシンを前に話をしていたのが印象的です。
「予選は路面状況と、練習走行の結果から考えればもっと下にいたかもしれませんが、エンジニアのアイディアによって2位という結果が得られてよかったです。決勝に関しては改善点が多く感じられたレースでした。原因はわかっているので、どう対策していくのか考えていかないとと思います」
「今回はスプリントレースというフォーマットですが、普段のレースの第1スティントより少し長いくらいでしたのでいつもどおりな感じでした。GT500と混走ということでうまく上位に行けるとも思えましたが、そこまでの力がなかった感じです。結果がよければ楽しめるレースだったと思います。結果がよければですけど……」と山内選手は語ってくれました。
井口選手の走る2日目は決勝でまさかのリタイヤ
続く日曜日、同じく朝8時30分から井口選手がマシンに乗り、練習走行に挑んで行きます。
山内選手が乗ったときの改善要素を練習走行までにできる限り施してコースインします。練習走行ではタイムを狙うのではなく、マシンの確認やセットアップに時間を費やしました。
続いて行われた予選では、山内選手と同等なタイムを出しながらもライバルが良好なタイムを出したことにより5位となります。
決勝はGT300だけのレースとなり、通常のレースでもまわりを囲まれると抜けだせなくなるFIA GT3の大排気量マシンと戦っていくことになります。
それでも井口選手は順位を落とすことなくレースを進めていきますが、5周目のホームストレートで異音を感じ、1コーナーをまわったコカ・コーラコーナーでランオフエリアにマシンを止めます。
小澤総監督は「マシンが帰ってきていないレース直後ではなんともいえませんが、井口選手からの話ではエンジンかターボか、という感じがします。昨日の山内選手のフィーリング情報から、タービン交換をしているのですが、そこが直接の原因ではないと思います。マシンが帰ってきて工場で確認してみないとなんともいえません。次の鈴鹿までは3週間あるので、しっかりと対策をしていきたいです」と語ります。
井口選手は「日曜のレース担当ということで、土曜日はのんびりしていればいいはずですが、そんなこともできず、山内選手の走りやマシンの状態、タイヤの状態など確認することが多くて緊張感が高く疲れました。しかし、山内選手から様子を聞いて自分なりにレースのシミュレーションを行えたのはよかったです」
「予選も、いまのマシンやタイヤの状況ではいい結果だったと思います。決勝では山内選手が苦労していたところを改善してもらったので、ペースも悪くなかったと思います。改善してもらったところが直接の原因かどうかは分かりませんが、5周という早いタイミングでトラブルが出たのは正直ツラいところです。チームもメカニックもエンジニアもみんな頑張って作り上げてきているので、今後も頑張るしかないのですが、レースをできなかったのが本当に悔しいです」と語ってくれました。
第2戦富士でもあと半周で優勝というタイミングでトラブルが発生してしまい、今回の第4戦富士でも同じくトラブルが出てしまう形となりました。
以前のBRZであれば、長い直線が続く富士スピードウェイは苦手コースでしたが、近年は富士スピードウェイの苦手意識が消えて表彰台を狙えるコースにもなっています。
しかし、2戦続いての富士スピードウェイでのトラブルは、今後のレース活動にも影響が出てしまいます。多くのファンはもちろん、チーム関係者全員が望む表彰台、そして優勝を目指す勇姿を見たいところ。次戦の鈴鹿ではどのようなレースになるのか見守りたいと思います。
次戦の2025 AUTOBACS SUPER GT Round5は、 8月23日(土)に公式予選、 8月24日(日)に決勝レースが行われます。
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