現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > オービスで「子ども守る」? 緊急対策としての新型オービス拡充 背景に警察の変化

ここから本文です

オービスで「子ども守る」? 緊急対策としての新型オービス拡充 背景に警察の変化

掲載 更新 24
オービスで「子ども守る」? 緊急対策としての新型オービス拡充 背景に警察の変化

可搬式オービス導入は、120km/h規制とセットだった

 2021年8月4日(水)実施された交通安全対策に関する閣僚会議で「通学路における交通安全の確保」緊急対策が取りまとめられました。千葉県八街市で飲酒運転の大型トラックにはねられ下校中の小学生が死亡した事故を受けたもので、歩道と車道の分離やガードレールの設置など、道路インフラの整備促進のほかにもう一つ、「可搬式速度違反自動取締り装置」(=可搬式オービス)の増強と、これによる速度取締りが柱として採択されました。
 
 なぜ子どもの安全を守る緊急対策に、可搬式オービスによる取締り強化が選ばれたのでしょうか。

紛らわしい「オービスっぽい装置」何が違う? 移動式オービスとの勘違いも

 話は2013(平成25)年にさかのぼります。国家公安委員長だった古屋圭司氏の、閣議後会見での発言が注目を集めました。

「(交通取締りは)取締まりのための取締まりになっている傾向がある。事故の抑止につながる、取り締まられた側も納得できる取締まりをしなければならない」

 走行実態とかけ離れている交通ルールを見直して、より効果的に事故抑止につながるものでなければならない、と、警察を監督するトップが交通行政に再考を促したのです。

 その象徴的な出来事が、2020年に恒久運用に入った高速道路の最高時速120kn/h引き上げです。一般道でも幹線道路の制限速度が引き上げられた事例がありますが、速度取締りを強化して、制限時速を確実に守らせる検討も始まりました。

 当時、焦点になったのは2011(平成23)年に制定された「ゾーン30」です。A地点からB地点までという区間ではなく、生活道路での歩行者安全を確保するため、指定ゾーン一帯にある道路はすべて制限速度を30km/hとするものでした。

 しかし、生活圏で歩行者を守るためのゾーン30なのに、そこで速度超過による重大事故を起こす例が目立ち、その対策として打ち出されたのが、可搬式オービスによる取り締まり強化でした。

 速度規制の緩和と実質的な強化。一見、対極ですが、両者は事故防止のための効果的な速度設定を維持するためには何をすべきか、という共通の視点で見直されたことでした。

可搬式オービス、初の導入は小学校目前の横断歩道

 可搬式オービスが日本で初めて導入されたのは2014(平成26)年です。警察庁は前年11月 12月にかけて、埼玉県警へ新型オービスの試験運用を依頼していました。

 当時、導入が検討されたのは、カメラを三脚に取り付けて、市販のスチールカメラのように簡単に持ち運びできる「可搬式」、軽四輪などに載せて移動可能な「半可搬式」、そして「固定式」の3種類でした。可搬式と固定式はオランダ製、半可搬式はスウェーデン製でした。これらを総称して、「移動式オービス」と呼ぶこともあります。

 一般の運転者が思い浮かべるのは、自動車道や高速道路上でフェンスに囲まれた地上や道路をまたぐ設置型のオービスですが、試験運用されたオービスは、固定式も含めてはるかに小型でした。可搬式であれば2、3人のチームで持ち運びから測定まですべて完結。固定式でも歩行者が気付かないほど見た目が小さく、ほとんど歩行者信号のような形状でした。

 今回の緊急対策で可搬式オービスによる取締まり強化が打ち出された理由は、すでに2013年の試験運用で見て取ることができます。

 固定式のオービスは、埼玉県内の小学校の通学路に設置されました。場所は学校と住宅地を隔てる道路、横断歩道を渡ればすぐ学校という歩行者用信号機の横です。現地は横断歩道があるだけで交差点はなく、横断歩道は主に児童の登下校に使われていましたが、見通しのいい直線路のため、速度超過で横断歩道を通り過ぎていく事例も知られていました。

 ここに設置された固定式オービスは、速度超過の車両が近づくと、LEDが点滅して光と音で警告し、減速しない場合に車両を撮影して検挙する、というものでした。ただ、固定式だと運転者が設置した場所に慣れて、オービスを過ぎると再び速度を上げる、という課題がありました。これでは、制限時速内での運転にはつながりません。そのため可搬式で、取締りの場所を変えて緊張感を持たせることが検討されました。

「可搬式」で速度規制の実効性を確保する

 可搬式オービスの運用から8年目。今回の緊急対策では、カメラを三脚に取り付けた可搬式オービスを都道府県警察へさらに配備する方針が打ち出されました。スピード違反は幹線道路、という常識を覆して、道幅の狭い生活道路で効果的な速度違反取締りを実施します。

 速度の実効性に課題のあるエリアではさらに、一定速度以上で通過すると、運転者が突き上げを感じる路面の盛り上がり「バンプ」や、スピードを抑える路面標示、障害物の設置なども検討されています。これらにより「速度規制の実効性を確保」します。

 今のところ警察庁は、緊急対策による各県への可搬式オービス配備計画の詳細は明らかにしていませんが、取締りの背景にあるのは、子供の安全な通行です。運転者からすると、不意のスピード違反取締りほど気分を害するものはありませんが、なぜ制限時速が低く抑えられているのか。そこに注意を向ければ、違反をすることはなくなるかもしれません。

関連タグ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
AUTOSPORT web
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
AUTOSPORT web
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
AUTOCAR JAPAN
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
乗りものニュース
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
motorsport.com 日本版
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
AUTOSPORT web
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
AUTOSPORT web
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
AUTOSPORT web
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
くるまのニュース
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
AUTOSPORT web
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
AUTOCAR JAPAN
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
Auto Messe Web
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
AUTOSPORT web
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
AUTOSPORT web
約10年ぶりに“メイド・イン・イングランド”に!? 新型「ミニ・コンバーチブル」が“ミニの聖地”で生産開始
約10年ぶりに“メイド・イン・イングランド”に!? 新型「ミニ・コンバーチブル」が“ミニの聖地”で生産開始
VAGUE
【クルマら部】「ポルシェ911」クルマ愛クイズ!全4問・解答編
【クルマら部】「ポルシェ911」クルマ愛クイズ!全4問・解答編
レスポンス
昭和の香り残す街に130台のクラシックカー…青梅宿懐古自動車同窓会2024
昭和の香り残す街に130台のクラシックカー…青梅宿懐古自動車同窓会2024
レスポンス

みんなのコメント

24件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村