BMWの新しい「X6」のディーゼルモデルに、サトータケシが試乗した!
時代の流れをリード
ザ・ニッポンの高級車の進化──新型トヨタ・クラウン・クロスオーバー試乗記
BMW X6に対して“とんがったクルマ”というイメージを持っているのには、いくつかの理由がある。
まず、クーペとSUVのスタイルを融合させるという、2008年に登場した初代X6のデザインのコンセプトが斬新だった。「カレーライス」と「とんかつ」を合体させた人も天才だと思うけれど、クーペSUVもひとつの発明だった。そしてカツカレーがあたりまえのメニューになったように、いまや自動車メーカー各社がクーペSUVをラインアップしている。
もうひとつ、2019年に発表された3代目X6が、BMW車としては日本で初めてハンズオフ機能を搭載したこと、つまり一定の条件を満たせばハンドルから手を放すことが許されたことも、先鋭的なモデルだというイメージにつながった。
この3代目BMW X6がマイナーチェンジを受けた。外観ではヘッドランプの中に矢印の形をしたデイライトランプが組み込まれ、幅広だった左右のヘッドランプ直下のエアインテークの形が縦長に変更された。フロントバンパーの造形も改めた顔つきは、全般にすっきりとした印象になっている。
インテリアも、メーターパネルと液晶スクリーンを滑らかなカーブでつなぐ、最新のBMWスタイルに変更されている。内外装のデザイン変更には時代の流れをリードしたいという狙いがあり、その目的は達成している。
上質な走行フィールエンジンを始動して走り出した瞬間に、とんがった気分ではなくホッとした気持ちになったのがおもしろかった。理由は、マイルドハイブリッドシステムを備える3.0リッター直列6気筒ディーゼルターボエンジンのいかにも頼り甲斐のあるフィーリングにある。停止状態から発進すると、タイヤの最初の1回転、2回転のあたりから、じわじわーっと滋味深いトルクが湧いてくる。これがドライバーの心持ちに余裕を与える。
BMW X6の直6ディーゼルモデルは以前からマイルドハイブリッドシステムを搭載していたけれど、今回のマイチェンでエンジンスターターとジェネレーター(発電機)の役割も兼ねるモーターは高出力化されている。
実際のところは、マイルドハイブリッドなので出力アップが体感できるほどモーターが駆動に関与しているわけではない。けれども、スムーズなゼロ発進、シームレスな変速、アイドリングストップ状態からのストレスのないエンジン再始動など、モーターは黒子のように、このクルマの上質な走行フィールに貢献している。
アクセルペダルを踏み込むと、直6ディーゼルはトゥルルルルと機嫌よく回転を上げる。あまりにご機嫌なので、このエンジン、ガソリンじゃなくてディーゼルだよな、と、確認したくなるほどだ。それくらい回転フィールも音も心地よい。
エンジンにはガソリンとディーゼルの2種類があるのではなく、いいエンジンと悪いエンジンの2種類があるのだと思い知る。
芯の部分はしっかり乗り心地とハンドリングは、いかにもBMWらしいもの。
引き締まった足まわりは路面の凹凸からのショックを割と正直に伝えるけれど、このクルマを選ぶようなドライバーなら気にならないというか、むしろダイレクトなフィーリングを好ましく感じるはずだ。そして速度域が高くなるほどにフラット感が増し、まさに矢のごとく走る。このクルマの高速クルーズのフィーリングは、「滑走」という言葉で表現したい。
コーナーでは、ハンドル操作に正確に反応する点が心に残る。そのぶん、ハンドル操作が遅れたりハンドルを切るタイミングが早すぎたりすると正直に挙動が乱れるから、「あぁ、オレって下手っぴ……」と、落ち込むことになる。
でも、それも含めてこのクルマを操る楽しさだ。クルマに乗せられているのではなく、うまく走ろうが下手に走ろうが、あくまで責任はドライバーにある。
ひとつだけ気になったのが、舗装の荒れた路面での乗り心地がちょっととんがりすぎているのではないか、ということ。キャッキャ運転しているドライバーはいいかもしれないけれど、同乗者にはちょっとキツいと思う。
オプション表を見ると、試乗車はオプションの21インチタイヤを装着している。これが標準の20インチだったらどうなるか、興味のあるところだ。ただしこの一点を除けば、気配りのきく優等生だった。
BMW X6はもはや、とんがった孤高のクルマではなくなっている。けれども、個性的なスタイルを持ついいクルマ、という芯の部分はしっかりとしていた。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
やっぱ意識高い系ライターの思考回路と感性は理解できんわ。したくもないけど。