■次世代HVとして「プリウス」はまだ役目を担うのか
ハイブリッド車の普及に貢献したトヨタの「プリウス」。1997年に世界で初めて量産型ハイブリッド車として初代が登場してから、プリウスは20年以上の歴史を有しています。
しかし、最近では新型車のほとんどにハイブリッド車の設定があり、プリウスの役目は果たしたように取れますが、今後もハイブリッド専用車として次期型プリウスが登場する可能性はあるのでしょうか。
次期型「プリウス」は超絶進化? トヨタが「全固体電池」に全集中する訳とは
初代プリウスは、「21世紀に間に合いました」というキャッチフレーズとともに、世界初の量産ハイブリッド乗用車として1997年12月にデビュー。
当時、ハイブリッド車は現在の電気自動車や燃料電池車などと同じように、ユーザーからは未来の乗り物という印象を持たれていました。
しかし、2代目、3代目が世界中で爆発的な人気を誇り、初代の登場から20年経った2017年には、トヨタのハイブリッド車累積販売台数は世界で1000万台を突破。世界で「エコカー=プリウス(トヨタ)」という図式を作り上げたのです。
プリウスを始めとしたハイブリッド車が続々と登場したことで、現在では多種多様なモデルにハイブリッド車が設定され、いまやガソリン車と同じく定着しています。
その一方で、プリウスの独断場は続かなくなってきます。ハイブリッド車が普及するということは、プリウスが特別なクルマではなくなるということに繋がり、2015年に登場した現行の4代目は、2代目、3代目よりも販売台数において勢いがなくなってきているのも事実です。
しかし、トヨタにとってプリウスはハイブリッド車が当たり前になることを目指して開発されたモデルです。2018年12月に現行のマイナーチェンジがおこなわれた際、トヨタは次のように説明しています。
「ハイブリッドカーの先駆者であり、エコカーの代名詞であるプリウスにとって『燃費がいい』『環境にいい』のは当たり前のことです。
その先の感性に響く“ドキドキ”“ワクワク”をハイブリッドカーで体感してほしい。その答えが新型プリウスには詰まっています」
この際のセールスメッセージとして、「エコカーの先へ、ドキドキするような走り、トヨタがハイブリッドカーの未来像を描く」と謳っています。
このマイナーチェンジでは、ユーザーから不評だった現行モデルの外観デザインを刷新したほか、燃費数値よりも安全面を重視した改良を実施。これにより、2019年の登録車販売台数は1位の12万5587台に返り咲きました。
しかし、2019年後半からは同じトヨタから「カローラ/カローラツーリング」、「ライズ」が登場。2020年は「ヤリス」、「ハリアー」、「ヤリスクロス」、「ミライ」と多種多様な新型車が登場します。
とくに、カローラはプリウスと似たようなパッケージを有しているうえ、性能・機能面では最新のものが採用されていることもあり、プリウスオーナーがカローラに乗り換えるというケースも多いようです。
また、ホンダ「フィット」や日産「ノート」などコンパクトなハイブリッド車がフルモデルチェンジして登場したことなども影響し、2020年の登録車販売台数は12位の6万7297台(前年比53.6%)と大きく落ち込む結果となりました。
そのため、一部ユーザーからは「プリウスの時代は終わった」などという声も出ているようです。
現状の販売動向について、首都圏のトヨタ販売店は次のように話しています。
「プリウスは2020年に入ってから同じトヨタ内、または他社の新型車に押されているのは否めません。
しかし、現在でも『プリウスが欲しい』という指名買いをされるお客さまもおりますし、20年以上の歴史を持つプリウスブランドに関心のあるお客さまも少なくありません。
5年目となる現行プリウスは、ほかの新型車と比べると見劣りするのは事実ですが、お客さまからは次期型プリウスに関して『いつ出るのか』『どのようなクルマになるのか』という問合せを頂きますので、プリウスブランドは今後も続けてほしいと思っています」
※ ※ ※
ハイブリッド車の市場をけん引するという役目は一段落した印象があるプリウス。しかし、カローラなどと同じくプリウス自体のブランド力は健在のようです。
■次期型プリウスは全固体電池で再び覇権を狙う?
2021年3月現在、次期型プリウスに関しての公式アナウンスはありません。
しかし、トヨタをはじめテスラや中国EVメーカーなどは、従来バッテリーの進化版ともいえる全固体電池の開発に注力しています。
そのため、次期型プリウスは全固体電池を搭載して発売されるのではないかともいわれています。
現在のハイブリッド車はリチウムイオン電池を採用していますが、ハイブリッド車ならび電気自動車、燃料電池車で課題となるのがEV航続距離を伸ばすことです。
しかし、それにはバッテリーの容量を増やすために大型化する必要があり、積載スペースの制約により限界があります。
そのため、全固体電池の量産化が今後の自動車市場で覇権を握る鍵ともいわれています。
これまでのリチウムイオン電池は、内部に電流を発生させるための電解質という液体が入っていました。
全固体電池では、その名のとおり固体化することで、EV航続距離の大幅向上やもうひとつの課題とされる1回の充電時間の改善を実現することが可能です。また、液漏れしないことで安全性の向上が期待されています。
そうしたなか、トヨタは全固体電池を搭載する小型EV「コムス」の開発を進めており、2020年代前半の製品化を目指す予定です。
これらの背景もあり、次期型プリウスが登場する場合には、次世代ハイブリッド車としてさらに進化したハイブリッドシステムの採用や全固体電池を搭載して、再び「エコカー=プリウス」というブランドを再建するのが理想的な道筋だといえます。
初代の登場から四半世紀たったタイミングで、再びハイブリッド車のパイオニアとして、5代目の新型プリウスが登場し、ハイブリッド旋風を起こしてくれることを期待せずにはいられません。
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