古き良きAMGボディキットをコンプリートしたメルセデス350SL
2024年6月17~24日にかけて、名門ボナムズ・オークション社がオンライン限定で開催した「AMG Rediscovered Online」オークションでは、アメリカにおけるAMGの大家、故バリー・テイラー氏が収集した、極めてレアなクラシックAMGたちにくわえて、スタンダードのメルセデス・ベンツながら、特別なエッセンスを利かせたモデルも出品されていました。今回はその中から、いかにも1970~1980年代風な時代感を湛えるメルセデス・ベンツ「350SL ロードスター」をピックアップ。車両解説と注目のオークション結果について、お伝えします。
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18年間にわたって生産された、メルセデスSLの佳作とは?
メルセデス・ベンツが1971年春にR107系「350SL」をデビューさせたとき、その背景には多くの要素があった。1970年代を迎え、オイルショックや排ガス対策、パッシブセーフティ問題など、自動車という乗り物にとって、そしてメルセデス「SL」シリーズにとっても受難の時代が訪れようとしていたのだ。
そのいっぽうで、さらに高まりつつあった高性能&コンフォータブルの風潮は、伝統的にV8エンジンを熱望する北米マーケットの要求。そして排ガス対策でパワーダウンを余儀なくされる分を補うことも併せて、すでに「280SE」やそのクーペ/カブリオレ版では生産化されていたV8エンジンへのスイッチが待ち望まれていた。このような状況とマーケットの要求のもと、SLシリーズに8年ぶりとなる完全リニューアルを図らせることになる。
このフルモデルチェンジではホイールベースが60mm延長されるなど、ボディは従来のW113型SL(現在では「R113」と呼ばれることが多い)より大型化されたかたわら、随所に当時世界各国の自動車メーカーがチャレンジした「ESV実験車」のテクノロジーも活かされ、安全対策には大いに気が遣われていた。
いっぽう、ファーストモデルである350SLに搭載されたのは、3.5Lの排気量から最高出力200ps/5800rpm、最大トルク29.2kgm/4000rpmを発生するV8 SOHCユニット。このエンジンがもたらすパフォーマンスは、当時のパーソナルカーとしては目をみはらせるものだった。
世界中のエンスージアストから愛されるR107系SL
こうして誕生したR107系SLは、リチャード・ギア主演の映画『アメリカン・ジゴロ』(1980年公開)や、エディ・マーフィの大ヒット作『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年公開)において、豊かで華やかな生活を象徴するアイコン的存在として出演。わが国においても、シンガーソングライター浜田省吾氏の大ヒット曲『Money』(1984年発売)の歌詞に登場する「純白のメルセデス」は、R107系SLを想定していた……というのが定説となっているそうだ。
ところが、安全政策の施行でフル・オープンカーが北米で販売できなくなる……? という疑心暗鬼的な観測が1970~1980年代の自動車界に蔓延したことによって、モデルチェンジの機会を逸してしまったせいか、結果的にR107系SLシリーズはじつに18年という長寿を保ち、新型R129系SLが発表される1989年まで生産されることになる。
そして、エレガントなスタイリングと卓越したエンジニアリングを併せ持つR107系SLは、近年になってクラシックカーとしての評価も爆上がり。世界中のエンスージアストから愛される、真のコレクターズアイテムとなりつつあるようだ。
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当時モノのAMGパーツで決めた、70~80年代感横溢の350SL
このほど、ボナムズ「AMG Rediscovered Online」オークションに出品されたメルセデス・ベンツ 350SL ロードスターは、R107生産初年度の希少な初期モデルで、「280SE 3.5」と共通のコンパクトな3.5L V8 200psのエンジンを搭載している。
もともとは左ハンドルのヨーロッパ仕様車で、ボディカラーは白に近いクリームベージュ。同色の取り外し可能な「パゴダ」スタイルのハードトップも取りつけられている。
また、バンパーやサイドスカート、フロントスカート、5本スポークをボディ同色で仕上げた「ペンタ」型AMG純正アロイホイールなど、当時のAMGキットをフルに活用してドレスアップされているのが最大の特徴といえよう。
さらにネイビーブルーのインテリアには、コントラストカラーのパイピングが施された濃紺の本革レザー張りの「レカロCアジャスタブル」スポーツシートを装備。標準のSL用シートよりもサポート性が大幅に向上しているだけでなく、快適性も改善している。
くわえて、当時のAMGの流儀に従ったローダウンスプリングも与えられていることから、時代を超越したR107系SLのスタイリングにアグレッシブなAMGテイストを加えた、1970~1980年代の時代感にあふれるルックスを誇っている。
「リザーブ」なしでもエスティメートを上回る
故バリー・テイラー氏のコレクションにあった間、この350SLは屋内に長期静態保存されていたという。しかし、ボナムズ・オークション社の管理下に移されたあとには走行しておらず、エンジンを再始動する前には一定のチェックとメンテナンスが必要とのことであった。
このAMGスタイルの350SLに、ボナムズ社は2万3000ドル~3万ドル(約342万円~446万円)という、ちょっと控えめにも感じられるエスティメート(推定落札価格)を設定した。また、今回の「AMG Rediscovered Online」オークションの前提条件にしたがって、「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」での出品となった。
この「リザーブなし」という競売形態は価格の多寡を問わず落札できることから、とくに対面型オークションでは会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が跳ね上がる傾向もある。その反面、たとえ価格が売り手側の希望に到達しなくても、自動的に落札されてしまうリスクも内包している。
しかし昨今のクラシックカー市場におけるR107系人気が、メカニカルコンディションには不安があるはずのこの個体の評価も底上げしたのか、あるいは希少な当時物のAMG純正パーツを装備していることが評価されたのかは不明ながら、1週間のオンライン入札を終えたところで、エスティメート上限の約3割増しにも相当する3万9100ドル、つまり約580万円で落札されることになったのである。
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みんなのコメント
あの手の番組を見ると日本と自動車に対する歴史の違いが見られる。