メガーヌ・シビック・ゴルフ・インプレッサを比較テスト
4コントロールと呼ばれる4WSを武器に、日本へ堂々と上陸した新型ルノー・メガーヌ。さらに復活を遂げたホンダ・シビックなど、今日本市場でCセグメントハッチバックが激戦の様相を呈している。今回は国内外のライバル車4台を集めて1400kmのロングツーリングを行った。五味康隆さんのリポートをお届け!
【試乗】新型ルノー メガーヌGTは「R.Sを待つ必要がない」完成度!
走行ルート
東京・文京区にある編集部をスタートし、首都高~東名~新東名~伊勢湾岸~東名阪~伊勢道で津ICへ。ここから一般道で三重県の榊原温泉を経由し、国道369号・国道370号・国道371号で高野龍神スカイラインを目指す。さらに南下し、国道311号で川湯温泉へ。折り返して311号と途中阪和道を使い有田で2泊目。帰路はここから阪和道~西名阪~東名阪~伊勢湾岸~新東名~東名で東京へ戻るという行程。
東京を出発し三重・奈良を経由しながら紀伊半島を下道でぐるりと巡り、和歌山で美味しいみかんをゲット。今回もさまざまな道を走ることで、クルマの素性を隅々までチェックすることができた。
比較試乗を行なったのは4台の5ドアハッチバックモデルで、かなりハイレベルの接戦となった。それぞれが飛び道具的な魅力を持っているなど、特徴ある作りが印象的である。
ホンダからは今話題のシビックハッチバック。1.5リッターの直噴ターボでトランスミッションはCVT、特徴は2700mmのロングホイールベースだ。次にハッチバックの定番、スバル・インプレッサスポーツ。排気量は2リッターと大きいが、唯一のNAエンジンで、スバルお得意のAWD。そして世界のスタンダード的存在のフォルクスワーゲン・ゴルフ。1.4リッター直噴ターボで、7速DSGだ。最後にメガーヌGTは1.6リッター直噴ターボで7速EDC、特徴はリヤ操舵にある。
高速道路では性能のバランスがいいゴルフが好印象
一部区間の最高速度が110km/hに引き上げられた新東名を経由し、伊勢道の津ICまで高速道路を駆け抜けた。まずは高速クルージングの印象からお伝えする。
●フォルクスワーゲン・ゴルフ
ゴルフが搭載する1.4リッター直4ターボエンジンはアクティブシリンダーマネジメントを搭載し、低負荷時は2気筒を休止させて燃費を向上。トランスミッションはツインクラッチの7速DSGを組み合わせる。
追い越し加速での速度の伸び感ではメガーヌGTに軍配があがるが、それ以外の要素はゴルフのほうが優れている印象。乗り心地を含めて穏やかに運転できる。これはタイヤサイズが17インチと控えめかつエアボリュームが豊富で、そのしなやかさを上手く使いこなしていると読み取れる。運転支援システムも充実しており、長距離移動も苦にならない。路面変化に対して乗り心地や走行音の変化がとても少なく、絶えず穏やかな走行を続けられる。
気になる要素を挙げるなら、突然の強い追い越し加速操作に対して、変速して加速までのタイムラグがあること。それくらいクセのない仕上がりで、接戦になればなるほど強みが出てくる。
●スバル・インプレッサ
軽量かつ低重心がウリの2リッター水平対向4気筒エンジンを搭載するインプレッサ。トランスミッションはリニアトロニックと呼ばれるCVTで、高開度になるとステップ変速に切り替わる。
その走りは、乗り心地だけをとらえたら、ゴルフを超えている。4WDで走行安定性が高められ、足まわりは突き上げが少ないしっとりした滑らかな乗り心地に仕立てられる。シートのクッション性がいいのも、細かいコツコツ感の低減に効果を発揮している。
一方で、わずかながらハンドルに遊びがあるのが気になった。この遊びが”わだち路”などの路面変化が起きたとき、突然ハンドルが取られるような動きをする。レーンチェンジのような操作に対しても、急にクイっと反応する感覚があり、4WDで安定しているが、インフォメーションとして唐突さがある。
●ホンダ・シビック
シビックが積む1.5リッター直4ターボエンジンには、直噴システムや吸排気デュアルVTC、電動ウエストゲート付きターボチャージャーを採用。トランスミッションはCVTと6速MTが選択できるが、今回はCVTだ。
同じ波を超える際に、大きい船と小さい船、どちらが揺れるか? やはりホイールベースの長さがメリットを生んでいる。ゴルフより65mm、メガーヌやインプレッサより30mm長いメリットは、揺れの少なさや穏やかな姿勢変化、優れたフラット感で享受できる。
しかし味付けは全般的に硬派でスポーティだ。まず走行音が大きい。巡航時のエンジン音、後輪のホイールハウス付近から入るロードノイズ。とくに荒れた路面での後席での音はかなり気になる。ハンドルにインフォメーションが的確に入ってくるが、高速道路を走る環境ではもう少し”いなし”てほしい。
動力系の完成度は高く、CVTの賢さ、追い越し時の加速を含めてエンジンの吹き上がりや反応はとてもいい。
●ルノー・メガーヌ
メガーヌが搭載する1.6リッター直4ターボエンジンは205馬力/280N・mというGT専用の高出力型ユニット。トランスミッションは7速EDCと呼ばれるツインクラッチタイプ。パドルシフトも備わっている。
さて、高速走行では、シート形状がよく、4台中もっともリラックスして乗っていられるのだが、乗り心地がとにかく硬い。奇麗なアスファルト路面では優れた乗り心地を提供してくれるが、荒れた路面や凸凹ではダイレクトに振動を伝えてしまう。
追い越し加速でのエンジンレスポンスはいいし、意識しただけでレーンチェンジ動作が行なえそうなほど、ダイレクト感のある動きを備える。それでいて過敏さのない味付けとしているなど拍手を送りたい要素が多い。メガーヌはどこを取ってもスポーティな味付けだということだ。
ワインディングでは4WSを装備したメガーヌの楽しさが光る!
今回もっとも走り応えがあったのは「高野龍神スカイライン」。40kmを超えるドライブウェイで、壮大な自然のなか走りを楽しめる。ワインディングから市街地での走りを含めて、まとめていこう。
●フォルクスワーゲン・ゴルフ
街中でも高速道路同様に過不足なく、そして走行環境における印象の変化率が少なく仕上げられている。スポーツモードにするとハンドルが人工的に重くなり、グリップ感がつかみづらいのは気になるが、DSGの歯切れのいい変速とダイレクト感が、スポーティドライブの気持ちよさを一層高めてくれる。
それでいて燃費性能がどのステージでもいいのだから恐るべし。今回はジワジワと染み渡るようにゴルフのよさ、そして強みを再認識させられた。
●スバル・インプレッサ
乗り心地や狭い道での走りやすさまで含めて、走りはゴルフを凌駕するレベル。今回はターボモデルが多いため、NAでは加速などでパワー不足感があると予想していた。しかし予想に反して、CVTが賢く2リッターエンジンのおいしい領域を引き出し、むしろ一番いい仕上がりだったことに驚いた。スポーティドライブ時には上り坂でトルク不足が少し気になった。
ハンドリングにおいては、4WDの安定感と旋回力が高次元でバランスされている。しかしハンドルからビシッとした手応えが帰ってこず、走りの高揚感がないのが残念である。
少々気になるのは実用燃費だ。スバル車全般に言えることだが、ここがよくなると商品力は一気に高まるのだが……。
●ルノー・メガーヌ
ワインディングでのこのモデルの気持ちよさは格別だ。まるでボディがひとまわりもふたまわりも小さく感じる軽快な走りを実現。これはリヤからも曲がる力を発生できる、4コントロールと呼ばれる4輪操舵機構がなければできない。4輪操舵の威力はすさまじいと実感。
メガーヌGTはキャラクター的にその効果をスポーツに割り当てた印象だが、4輪操舵は車両の傾きを減らすなど快適性にも効果を出せるので、コンフォート方向で仕上げたらゴルフ越えの高バランスも可能だろう。
トランスミッションはゴルフよりも穏やかにクラッチ変速させる味付けで、歯切れのよさはゴルフだが、変速ショックの小ささや街中での滑らかさ、発進のスムースさではメガーヌが優れている。エンジンは低回転から力強く、4000rpmからさらに一段力強くなる味付けがあり、高揚感もあって好印象だ。
●ホンダ・シビック
エンジンとトランスミッションの完成度はトップだ。回転調整を積極的にできる優れたCVTとターボの相性がよく、ダイレクト感まで備えている。
しかし、ハンドルの手応えはイマイチで、しかも小まわりが利かない。乗り心地もコツコツ感があるし静粛性も高くない。せっかくのロングホイールベースを活かしきれていないのが残念だ。
とはいえシャーシを含め基本性能はいいのだから、どのような方向性で熟成していくのか、今後が楽しみなモデルである。
シートやラゲッジに燃費もチェック
ではざっと使い勝手などをチェックしておこう。
●フロントシート
サイドサポートが大きく運転姿勢をしっかり支えるのはメガーヌ。フランス車らしい快適さも持つ。ゴルフも長距離移動に適したシートだ。国産勢はやや平均的で、とくにシビックはロングドライブでは腰が痛くなる場面も。
●リヤシート
広さではインプレッサ、シビック、ゴルフの順で余裕がある。メガーヌは今回のライバルたちに比べると少しタイト感あり。快適性を高める後席吹き出し口は、インプレッサ以外の3車が装備していた。
●ラゲッジ
スクエアで実用的なのがインプレッサとゴルフ。メガーヌも深さがあり広いスペースが確保されている。シビックは奥行き&深さはあるがピラーの傾斜がきつく高さがイマイチ。インプレッサのみトノカバーがオプション。
●燃費
最後に燃費性能の確認をしておこう。全体的に燃費に優れるのはゴルフ。次いでメガーヌとシビックといったところ。インプレッサは全ステージでもっとも燃費が厳しい。唯一の200馬力超え、さらに最大トルクも4台中もっとも大きい280N・mという数値を考えると、メガーヌの燃費は高く評価できるだろう。
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