車検からもどってきたボクの360モデナは絶好調である。ゆえに、ようやく、色々なスウィッチを押せるようになった。
というのも、「スウィッチを下手に押して故障したらどうしよう……」と、本気で心配していたのだ! それほど、故障に対しナーバスになっていた。
しかし、車検で各部の好調ぶりがわかったから、もう心配はない。ただし、360モデナは1999年デビューのモデルである。「348」や「F355」などに比べれば、電子制御技術が多く搭載されているとはいえ、昨今のフェラーリと比較すればその数はほんのわずかしかない。
ゆえに、インテリア内にある走行関連のスウィッチもごくわずかしかない。たとえば、「F430」に搭載される走行モード切り替えスウィッチなどもない。きわめてシンプルである。
【前回の振り返り】Vol.29 保険の見直しと共済という盲点
348は1989年に登場したV8ミドシップ・フェラーリ。先代の328と異なり、オートエアコンなどの快適装備を多数備えた。360モデナの後継モデルであるF430には、走行モード切り替えシステム「マネッティーノ」が搭載された。「マネッティーノ」のスウィッチは、ステアリング・ホイールにある。まず押したのは、F1マチックの「AUTO」モードだ。F1マチックのクラッチ残量90%の今なら、多少の負荷をかけても大丈夫だろう。
おそるおそるAUTOのスウィッチを押す。すると、メーターパネル中央にある小さな液晶ディスプレイ(シフト・インジケーター)に“AUTO”の文字が表示された。
センターコンソールにあるF1マチックの「AUTO」モードスウィッチ。横の小さなレバーはリバース用。信号が青に変わり、1速に入れて走り出す。クラッチをスムーズにつなげるべく、ごく低速で発進し、加速していく。2000回転を超えて2速に入った。が、2速→3速、3速→4速は3000回転あたりでないと変速(シフトアップ)しなかった。
その後、4速→5速、5速→6速もそれなりにエンジンをまわさないと変速(シフトアップ)しないゆえ、とくにゴー・アンド・ストップの多い都市部では非常に使いづらく、さっさと手動変速に切り替えてしまった。おそらく、流れの早い幹線道路や高速道路では問題ないだろう。
メーターパネル内のシフト・インジケーターに、「AUTO」の文字が表示される。と、思ったが、そうでもなかった。東名高速道路で試したが、流れに乗って加速しているとき(0km/hから80km/h前後まで)の変速(シフトアップ)は、あまりスムーズではなく、若干ギクシャクする。どうしたらスムーズに変速するのか? そういえば、編集長のスズキさんが以前、「床までベタ踏みすれば、スムーズに変速する」と、話していたのを思い出した。
そこで高速道路の料金所を出た瞬間、床まで踏み込んだ。すると8000回転まで一気に吹け上がり、そして、サッと2速に切り替わった。これまであったギクシャク感は皆無である。とはいえ、日本の法定速度では、2~3速であっという間に制限速度に達してしまう。ゆえに、AUTOモードを使ってのスムーズな加速は体感しづらい。機会あれば、サーキットで体感したいと思う。
それなりにアクセルを踏み込むと、F1マチックの「AUTO」モードでもスムーズに変速する。とはいえ、そんな場面はほとんどないので、結局、手動で変速している。リバース以外の変速は、ステアリングに備わるパドルシフトで操作する。ちなみに高速道路で、それなりに奥まで(床までではない)踏み込んだところ、6000回転近くで変速(シフトアップ)した。あまり賢いとは言えないが、アクセルの踏み込み量から、変速タイミングが判断されているようだった。なお減速時は、1200回転あたりで変速(シフトダウン)していく。シフトアップと異なり、シフトダウンは非常にスムーズである。
そういえば、先日乗った「GTC4ルッソ」のAUTOモードは非常に洗練されていて、街中でもスムーズに変速していった。GTC4ルッソが搭載するトランスミッションはDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)だから、F1マチックとは比較するのは少々酷だが。とはいえ、360モデナの後継の「F430」は、おなじF1マチックとはいえ、かなりスムーズに変速するという。
シューティングブレークスタイルのGTC4ルッソ。V型12気筒エンジンを搭載する。搭載するトランスミッションはデュアル・クラッチ・タイプの7AT。変速は実にスムーズだった。洗練されているとは言い難い360モデナのF1マチックであるが、クラッチ操作から解放されるのはやはり楽だ。日本に存在する多くの360モデナのトランスミッションが、F1マチックであるのも納得できる。とくに混雑する都市部では楽チンである。
【前回の振り返り】Vol.29 保険の見直しと共済という盲点
謎のSPORTモード360モデナのメーターパネル横にはいくつかのスウィッチがならぶ。そのひとつが「SPORT」モードだ。
取り扱い説明書には「SPORTモードではNORMALモードと比べ、サスペンションがハード セッティングとなりギヤシフトタイミングも素早く行われます」と、記されている。
「SPORT」モードのスウィッチは、メーターパネル横にある。ちなみに、取り扱い説明書の構成はなかなか興味深い。ページをひらくといきなり「フェラーリ デザイン プロジェクト」というタイトルがあらわれる。
本文には「新型Ferrari 360MODENAは、最先端技術を用いて開発された、8シリンダーFerrariの最新モデルです。」と記されており、そして360モデナのイラストが描かれている。
こんな取り扱い説明書、ボクははじめて見た。「取り扱い説明書にもフェラーリらしさがあるなんて!」と、ちょっと誇らしい。
取り扱い説明書や車検証などを入れておくスケドーニ社製のレザーケース。ボクの360モデナには取り扱い説明書をはじめ新車時にあったブック類はすべて揃っていた。取り扱い説明書の冒頭は、360モデナがなんたるかを説明している。話を戻すが、走行中、試しにSPORTを押してみた。が、違いはよくわからない。なんとなく乗り心地が硬くなったような気もするが、そもそもフロント部分の足まわりは社外品に交換されているゆえ、電子制御サスペンション・システムの効果はゼロのはず。
よって、変化があるとすればリアであるものの、違いはよくわからない。そもそも、フロントがハードなセッティングゆえ、段差を乗り越えたときの「ズシン」とくるショックに、差はないように感じた。
【前回の振り返り】Vol.29 保険の見直しと共済という盲点
「SPORT」モードをオンにすると、メーターパネル内の警告灯に、“SPORT”の文字が表示される。気になったのでフェラーリ横浜サービスセンターの高橋工場長に訊いたところ、「イナガキさんの360モデナは、SPORTモードのうち、足まわり関連の配線が外されているので、現状、機能しません」と、言われた。“なんとなく乗り心地が硬くなったような気がする”というのは、思い込みだった。
ちなみに、説明書をあらためて読むと「(電子制御式サスペンションの)システムのソフトウェアーは、12種類の異なる車の動作状態の中から走行状態に応じた最適の減衰力を計算します。このダンピング・エレクトロニック・コントロールは、車のスピードを感知して低速時には“快適さ”を、高速時には車の性能を最大限引き出すようにします」と、記されていた。
“快適さ”の部分のみ、太字になっているあたり、フェラーリは相当快適性に注力したのだろう。が、いかんせん、ボクのクルマではその快適性を味わえない。
フロント・サスペンションが社外品に交換されているので、本来の乗り味とは異なる。もっとも、新車時の乗り味を知らないから、どれほどの差があるのかは正直わからない。そういえば納車時、取り外した純正サスペンションがトランクに積まれていた。自宅に置いてあるこれを取り付ければ快適性を味わえるかもしれない。
交換には約10万円要とのこと。しかも、何年も取り外されていたサスペンションなので、保管状況によっては本来の性能を発揮しない可能性がある。では、サスペンションを新調するといくらになるか? フェラーリ横浜サービスセンターの高橋工場長に訊いたところ「約100万円ぐらいです」と言う。
フェラーリ・クラシケ(フェラーリ本社の公式鑑定書)を取得するには交換しなくてはならないが、現状、取得の予定はない。乗り心地は気になるものの、興味本位だけで100万円の出費は厳しいから、今回はあきらめた。
【前回の振り返り】Vol.29 保険の見直しと共済という盲点
フェラーリ本社が、フルノーマルの車両のみに付与する“フェラーリ・クラシケ”を取得すると、下取りがグンっと跳ね上がるという。ちなみに鑑定結果は、専用ケースにファイリングされ、オーナーに渡される。では、“ギアシフトタイングも素早く行われます”という記載についてはどうか? これもよくわからなかった。とはいえ、わからなかったのも当然である(ミッション関係のSPORTモードは機能している)。
というのも、説明書には「アクセルペダル全開でエンジン回転が7000rpm以上の時ギヤシフトは“素早く”なります」と、記されていた。公道ではなかなか難しい条件である。説明書にも「“SPORT”モードはサーキットでの使用をお薦めします」と、記されていた。どうやら、SPORTモードの実力はちょっとやそっとのドライブじゃわからないようだ。早々にサーキットに持ち込んでみたくなってきた。
横滑り防止装置? ではない!もうひとつ気になっていたスウィッチがあった。横滑り防止装置のオン・オフ“っぽい”スウィッチである。というのも、ボクの360モデナには横滑り防止装置は装着されていない(トラクション・コントロールは搭載されている)からだ。
はたして、このスウィッチはなにか? 説明書を読むと「Low Gripモード」と記されていた。「滑りやすい路面を走行する時に使用します。(雪道もしくはアイスバーン)」とのこと。
「Low Gripモード」のスウィッチは、F1マチックの「AUTO」モードスウィッチのすぐそばにある。Low Gripモードスウィッチを押すと、エンジンをかけたまま停止中(ニュートラル)もしくはリバースから、パドルシフトを“UP”すると、自動的に2速ギアに入るという。
試しにスウィッチを押すと、たしかに発進時、パドルシフトをUPすると2速から発進するようになった。
Low Gripモードを選ぶと、メーターパネル内に専用アイコンが表示される。とはいえ、2速発進なんぞ大概の場合、半クラ時間が1速に比べ長くなるので避けたいところ。なんてったって、F1マチックのクラッチ交換は多額の費用を要するのだから。
そもそも滑りやすい路面、つまりは雨に濡れた道や雪道を走る機会なんぞまずないはず。路面コンディションが悪い日は、愛車を守りたいゆえ極力乗りたくない。だから、Low Gripモードを選ぶ場面はきっとないはずだ。
ちなみに、雪道の発進時などは明確に2速発進の効果がわかるというし、北海道のような雪の多い地域に住んでいるフェラーリ・オーナーはLow Gripモードをよく使っているという。そんな話を聞くうち、どれほど効果があるのか試したくなった。せっかくなので、いずれは(1度は)雪道を走ろうと思う。
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速度計部分には、マルチインフォメーションディスプレイがある。ただし、現代のクルマと異なり表示は限定的である。エンジン・フードがあいている状態をしめすイラストは、今見ると、ちょっと微笑ましいデザインだ。気になっていたスウィッチ類について、疑問はすべて解決した。くわえて、取り扱い説明書を読んでいて、これが大変興味深い1冊であるのに気づいた。“読み物”として大変面白いのである。
取り扱い説明書の面白さについても、いずれ報告したいと思う。
文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
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