モダンでプレミアム感に溢れる車内
キャデラックの新しいBEV SUV、リリック。オーディオには、オーストリアの上級ブランド、AKGの19スピーカー・システムを採用。33インチのタッチモニターの下には、エアコンなどの実際に押せるハードボタンが並ぶ。
【画像】新時代キャデラック リリック 欧州で競合するBEVと比較 CT5-V ブラックウイングも 全112枚
センターコンソールは宙に浮いたような造形で、ドライブ・コントローラーが手元に来る。ウッドトリムはレーザーカット処理され、バックライトでやんわり照らし出される。インテリアのすべてが、モダンでプレミアム感に溢れている。上質で洗練された空間だ。
シート自体は柔らかく、座り心地も上々。筆者に丁度いいドライビングポジションを取ることができた。リアシート側も広々としており、荷室容量は793Lもある。
リリックで選べるパワートレインには、2種類が用意されている。今回試乗したのはエントリーグレードに当たり、後輪駆動のシングルモーターだった。最高出力340ps、最大トルク44.8kg-mを発揮するという。
ツインモーターの四輪駆動も選べる。こちらの最高出力は500psと、大幅にパワフルになる。
フロア下に敷き詰められる駆動用バッテリーは、実容量で102kWhと大きく、航続距離は後輪駆動版で502km。キャデラックの技術者は、WLTP値に準じたテストならもう少し伸びるだろうと話していた。
急速充電能力は、最大で190kW。驚くほど速いとまではいえないものの、悪くない数字ではある。
リラックスしたリリックの雰囲気
車体が大きいこともあり、リリックの車重は2585kgもあるが、シングルモーターでもアクセルレスポンスは良い。滑らかに、勢いよく発進できる。
とはいえラグジュアリーSUVとして、何より目指されているのはプレミアムな質感だろう。アクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載し、BEVの基準で比較しても、車内は至って静かだった。
ステアリングホイールの裏側には、回生ブレーキの効きの強さを選べるパドルがある。実際にどの程度変化するのか、今回はじっくり試すことができなかったけれど。
少なくともデフォルト設定では、非常に強く効く。アクセルペダルだけで発進から停止までまかなえる、ワンペダルドライブに近い運転ができるほど。リラックスしたリリックの雰囲気にも、合致しているように感じた。
サスペンションは良く仕事をし、テストコースの人工的に荒らされた路面を巧みに処理。実際の道路環境にあるような、鋭い隆起部分や橋桁の継ぎ目に動じることはなかった。うねりも上手に沈め、全体的にもの静かな印象への影響は最小限に抑えていた。
穏やかな個性を反映してか、ドライビング体験で得られる興奮は控えめ。アメリカ車らしいといえるが、ステアリングのレスポンスはダイレクト感に少々欠ける。
欧州へ導入される場合は、市場の特性に合わせてチューニングを受ける可能性はある。だが、スポーツサルーンのCT5-V ブラックウィングのような感触は期待しない方が良い。そもそも、SUVとしてクルマのベクトルが異なる。
欧州のプレミアム・ブランドに代わる選択肢
短時間のテストコース試乗ということで試せなかったが、リリックは半自律運転システムも搭載する。GMがスーパークルーズと呼ぶハンズフリーを許すもので、アメリカの特定の道路上でのみ、アダプティブ・クルーズコントロールと連動して機能する。
ステアリングホイールのリム上部にはLEDライトが内蔵され、システム・オンで点灯。ドライバーの介入が必要になると、赤く点滅して教えてくれる。
デトロイトの高速道路で、シボレーのBEVサルーン、ボルトに搭載されたリリックと同じシステムを体験させてもらうことができた。時間は限定的だったが、不安を感じることなく運転してみせた。
現在のところ、キャデラック・リリックが英国や日本の市場へ導入されるのかは不透明。2023年前半に欧州での販売計画が発表される予定で、前情報によれば英国への上陸は充分にありえるという。
英国価格や発売時期も、計画発表まではわからない。北米価格は6万2990ドル(約850万円)からとなっており、少なくともこの地での競争力は高いといえる。
あくまでもテストコースでの試乗となったため、公道での印象を含めて、リリックの評価を具体的にすることは難しい。それでも、今後数年のキャデラックのなかでも、特に強い訴求力を持つモデルになるであろうことは間違いない。
欧州の主要プレミアム・ブランドに代わる選択肢として、充分な存在感を示せるだろう。新しいキャデラックの時代がやって来そうだ。
キャデラック・リリック RWD(北米仕様)のスペック
北米価格:6万2990ドル(約850万円)
全長:4996mm
全幅:1976mm
全高:1623mm
最高速度:189km/h
0-100km/h加速:6.1秒
航続距離:502km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2585kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:102kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:340ps
最大トルク:44.8kg-m
ギアボックス:−
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