遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる"ヤングタイマー"なクルマを振り返るという、かつて小社WEBサイトでひっそり!?連載していた伝説の連載、その進化版がこの『ボクらのヤングタイマー列伝』です。今回は連載21回目にちなんでルノー21をピックアップ! この連載らしく21ターボではなく、"素"の21ですヨ!
ボクらのヤングタイマー列伝第20回『シトロエンBX』の記事はコチラから
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粘っこい直進安定性と素晴らしいハンドリングを持つ、" 乗ったら(相当)スゴイんです"というクルマでした!
何の変哲もないクルマなのに、印象が濃くて忘れられないクルマってありませんか。その中から今回は『ルノー21(ヴァンテアン/以下R21)』の話をしたいと思います。ルノーはかつてクラス感が把握しにくい数字、車名でしたが、R21はDセグに属し、当時のライバルはシトロエンBX、プジョー405、BMW 3シリーズなど……といえばわかりやすいかもしれません。ちなみにラグナの前任モデルでもあります。
R21といえばご存知、21ターボが思い出されますよね。派手だけどクールなスタイルに、ギャレットT3+空冷インタークーラーで武装した2リッター直4エンジンを搭載。"ドッカンターボ"で多くのファンを魅了しました。最高出力は175psを誇り、メルセデス・ベンツ190E 2.3-16やBMW M3と渡り合えたほどの性能を持っていました。しかしこの21ターボは、プジョー205でいうGTIのような頂点に位置するスポーツグレードで、実際の販売の主力はもちろん"素っ気ない"ノーマル仕様でした。
直線基調でさっぱりした面構成を持つデザインは、イタルデザイン・ジウジアーロによるもの。今なお古さを見せない、モダンアートのようなスタイルはさすがです。とはいえターボに比べると派手さはなく地味。欧州車は当時、現在よりもパッケージングに心血を注いでいたのでR21の室内はボディサイズのわりに圧倒的に広く、実用車としても秀でた設計を有していました。つまりR21は"地味だけど実に良く出来た実用車"という、いかにも欧州サルーンらしいクルマだったのです。日本には正規代理店のジヤクスによってターボとTXEという非ターボ版が導入されました。深夜の競馬番組でCMが流れていたのを覚えている方もいるかもしれません(笑)。TXEは日本では"素"ですが、実際はフル装備の最上級版で、エンジンは2.2リッターの右ハンドル、A/T仕様でしたが、日本ではキャラ立ちしたモデル以外はなかなか販売に結びつかず、当時から希少車でした。
しかしR21で忘れてはいけないのは、シートの良さ。ターボとTXEは性格上異なるシートが装着されていたのですが、そのどちらも極上だったのです。ソフトだけど闇雲に柔らかいのではなく、沈み込んでから体を支えてくるタイプで、座った瞬間に"あぁぁ……"って声が出ちゃう(笑)。運転しても粘っこい直進安定性と素晴らしいハンドリングを持つR21は、まさに"乗ったら(相当)スゴイんです"というクルマでした。見た目の地味さとは裏腹すぎる乗った際の感動は今なお強く、ボクにR21の印象をいつまでも忘れさせないのです。
ちなみにボクがR21 TXEを最後に見たのはもう13年くらい前。とあるクルマの在庫を見に信州のショップへ行ったとき、店の片隅にいたあの1台っきり……。ああ、あのとき買っておけばよかったのかしら。
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みんなのコメント
素の欧州車の魅力が詰まってましたね。
確かにターボのパワー感は凄かった。
思い出すのはこの「素」の方がカーグラの長期テスト車になっていて、トラブル続きで大変だったこと。
当時のヨーロッパ車は魅力もたっぷりだが、リスクも大きかったことを思い出した。
9/11(アライアンス/アンコール)同様、70年代のルノーとは一線を画した直線基調のボディもアメリカ市場攻略のためであり、また、伝統のエンジン縦置きFWDとオーソドックスな横置きFWDが併存する過渡期の車でもあった。21をベースにイタルデザインによるフルサイズセダンのボディを載せたイーグル・プレミア(ダッジ・モナコ)はクライスラー復活の起点となるLHカーのベースとなり、二世代今世紀初頭まで縦置きレイアウトを維持した。
21は普通のモデルもJAXが輸入していて「NAVI」周辺の業界人ウケは良かったが、街で見かけたことはない。ディーラーの自社買いを除いて何台くらい売れたんだろう?