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お手頃ドライバーズカー選手権(1) アウディRS3 vs AMG A45

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お手頃ドライバーズカー選手権(1) アウディRS3 vs AMG A45

もくじ

ー 購入が現実的なドライバーズカー
ー FFベースのAMGとRS
ー 元祖スーパーカーよりパワフル
ー いつでも0-97km/hは4秒以下
ー 4気筒と5気筒の決定的な差
ー 公道でもサーキットでも高い実力
ー 毎日の相棒か、週末の友か

新車よりはるかに安い 遊べる「掘りだしもの」ホットハッチ9選

購入が現実的なドライバーズカー

訳あって、今年の英国ベスト・アフォーダブル・ドライバーズカー選手権は、前回とは趣向を変えて実施しなければならなかった。編集部内で、無差別級のドライバーズカー選手権に対して「ジュニア・ハンドリング・デー」とドッグショーのような名前で呼びならわされているそれは、過去数年の間、上限価格を決めて最新のドライバーズカーを集めて競わせる方式を主にとってきた。

このテストの使命は常に、値付けが法外ではない、新車購入できるドライバーズカーの中から最も楽しめるものを見つけ出すこと。これまで設定してきた価格リミットは£25,000(377万円)~30,000(453万円)で、トヨタ86やフォード・フィエスタST200、マツダ・ロードスターなどが勝者に輝いてきた。


しかし今年は、取り上げるべき新型車の価格帯が、とても無視できないほど上がってしまった。そこで、車輛価格は二の次にして、月々の支払いが可能かどうか、残価設定ローンの典型例をもとに考えることにした。また、ホンダ・シビック・タイプRやアウディRS3スポーツバックの登場や、後輪駆動のめぼしい新車の不在、できれば価格は£50,000(754万円)以下に抑えたい意向なども考慮すると、購入が難しくないパフォーマンスカーはおのずとカテゴリーが絞られた。そう、ホットハッチである。


これまでより高価なクルマも含まれるが、購入時に下取りがきかないようなブランドや、ローンの支払い額が週あたりにして£100(1万5000円)に達するようなものは選ばないよう心掛けた。これから紹介するクルマのほとんどが、その基準よりかなり低いコストで手に入る。その中には、今年の新型車と、この数年以内に登場した、手頃な価格の素晴らしいドライバーズカーが混在する。それらの実力を、公道とサーキットで試そうというのが今回の趣旨だ。

ここに集めたクルマたちの楽しさが読者諸兄に伝わり、いずれかのモデルを手に入れたいと思っていただけるような記事になっていれば幸いだ。では、本題に入ろう。

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FFベースのAMGとRS

個人的に思うのだが、この2台は切っても切れない関係ではないだろうか。たとえるなら、グラウンドでいつも罵り合っているライバル選手同士が、実はひそかに思いを寄せ合っているものの、敢えてそれを認めようとしない、みたいな。


メルセデス-AMGが初めて投入したエンジン横置きFFベースのモデルは、当初はA45 AMGと呼ばれた。2.0ℓの排気量ながら360psを絞り出す4気筒は、いかにもAMGらしくスペシャルなパッケージに盛り込まれている。その結果、非常に速く、わずかながらFF的で、このセグメントのドイツ車らしいものができあがった。

そこにはすでに、速い4WDで、いかにもドイツ車らしいライバルが存在していた。それだけに、そのライバルであるアウディRS3が新型に更新された際には、AMGは危機感を覚えただろう。ネッカーズルムの5気筒は、アファルターバッハの強力な4気筒を7ps上回っていたからだ。

そこでAMGは、当然ながらパワーアップを図る。そうして登場した改良版A45は、381psを発揮するに至った。

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元祖スーパーカーよりパワフル

この2台の比較テストを冒頭に持ってきた理由はもちろん、さらなる進展があったからだ。ご存じのようにアウディはRS3の改良版をリリースし、AMGの奮闘をあざ笑うかのように400psを叩き出してみせたのである。そう、いまやホットハッチは、ランボルギーニ・カウンタックLP400を凌ぐパワーを得て、さらに上へ向かうことが求められるまでになったのだ。


そのRS3に乗り込むと、いつもながら上質なアウディらしいインテリアに感心する。ソリッドで簡素ながら機能的なA3のそれをもとに追加されているのは、ホットハッチの定番ともいえるコスメ。アルミの加飾パネルやアルカンターラ巻きでフラットボトム形状のステアリングホイール、ホールド性を高めたスポーツシートといった、おなじみのアイテムだ。メーカーは、その手の品々の見落としがないか、忘れ物リストを用意しているに違いない。

そう思わせるのは、AMGも似たようなドレスアップが施されているからだ。ただし、こちらの方が着座姿勢はアップライトで、ステアリングホイールのアルカンターラ部分が多い。金属調プラスティックが多用されたシフトセレクターは背が低く、マニュアル変速は自然とシフトパドルに頼ることになる。


興味深いのは、ダッシュボードに張られたテクニカル・グレインという素材で、これはカーボンを用いたファブリックのようなマテリアルだ。それ以外は、近年のホットハッチの文法通りといった仕上がりだ。

next page:いつでも0-97km/hは4秒以下

いつでも0-97km/hは4秒以下

ここまでは、まあ予想通りといったところだが、では試乗車そのものの仕様はどうか。RS3の方は、アダプティブ・サスペンションも設定されているが、今回乗った個体には装備されていない。気にはなるところだが、個人的にはそれも悪くないと思う。出来のいいパッシブ・ダンパーは、なかなか得がたい逸品だ。


それは、2.5ℓ直5エンジンにも言えること。みんな、もっとこの手のエンジンに乗るべきだ。なくなってから後悔しても遅い。そうこうしている間に、アウディは400psをマークしながら、驚くほど無理なく使えるエンジンを仕立て上げた。もちろんターボユニットで、ピークパワー発生点は7000rpmと高いが、48.9kg-mの最大トルクは1700~5850rpmの広い回転域で発生する。

明らかに、そのトルクを駆使しての加速に優れるのは3速より2速だが、そのときにタイヤが受け止めなくてはならない駆動力は大きい。


それはすなわち、このクルマが速いということでもある。今でも思い出すのは、フェラーリでの0-97km/h加速で初めて4秒以下を出したテストだが、タイヤは温めつつ、クラッチは熱を入れすぎないよう気を使い、テスト後は技術者がラップトップをつないでデータを取り、クラッチの摩耗具合をチェックしていたものだ。

しかし今日では、テスターのソーンダースがローンチ・コントロールをオンにし、ブレーキペダルから足を離すと、RS3はいつでも3.9秒で97km/hに達する。われわれの目前にあるのが、とんでもなく速いロードカーであるのは、疑うべくもない。A45より速いのも確実だ、といえるだろう。

next page:4気筒と5気筒の決定的な差

4気筒と5気筒の決定的な差

スペック上の違いは大きくない。A45は、381psの最高出力を6000rpmで発生し、最大トルクの48.4kg-mには2250rpmで到達する。RS3にやや見劣りするが、それでも野獣のような本性の持ち主だ。


とはいえ、エンジンは2.0ℓ直4だから、5気筒のライバルに匹敵する数字を叩き出すには鞭を入れる必要があり、それゆえドライバーはよりせわしないドライビングを要求される。

しかし、A45に全く分がないわけではない。アウディは改良時にエンジンをアルミブロック化して26kgの重量削減に成功したが、それでも4気筒を積むAMGの鼻先の方が軽いのだ。それは、十分に体感できるほどである。

それは「速いアウディってこんな感じだよね」といった具合の方向性だが、それが嫌だといっているわけではない。RS最小モデルのダイナミズムには、明らかに進化の跡が見られる。

まだクワトロと名乗っていたアウディ・スポーツが初代RS3を投入した頃、彼らは4WDシステムがコーナー進入時にどのようなかたちで後輪へトルクを送ればいいかを話し合っていた。そのため、コーナー脱出はより統制の利いた、アンダーステアの抑制に主眼を置いたものだった。

ノーズの軽量化はそのスタンスを大幅に進歩させ、サーキットでのRS3は強烈なグリップレベルと、ほとんどの場合でエンジン出力に勝るトラクションを発揮する。もしも湿り気を帯びた路面では、正しく運転していても、舵角はほとんどニュートラルなままでも、ややアンダーステア気味にスライドする。それでも、十分すぎるほど速い。

next page:公道でもサーキットでも高い実力

公道でもサーキットでも高い実力

公道上でもその傾向は変わらないが、限界まで性能を引き出すことはできない。それは、とにかくリミットが高いからだ。しかしパッシブ・ダンパーは、速いアウディのシャシーはゴツゴツしているという毎度の感想を塗り替えるものではなかった。乗り心地は、路面がよければ良好だが、不整路面を走るには硬すぎる。それでも、キャビンで感じる洗練性は並外れているのだが。


A45の方は、公道上でより良い挙動を見せる。サスペンションはよりイージーに生気に満ちた動きを見せ、操舵にもより鋭く反応する。数字的に見ると、車輛重量は軽くないが、俊敏さや積極的な走りはRS3以上だ。エンジンのサウンドもこちらが上だが、全体的な洗練度では劣る。


公道では申し分のないAMGをサーキットに持ち込むと、これがアウディ以上のアジャスト性を発揮する。とはいえ、どちらもフォード・フォーカスRSほど生き生きしているわけではないのだが。

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毎日の相棒か、週末の友か


数字的にはアウディの方が速いクルマであることが示されたが、よりドライビングに熱中できるのはAMGだ。そして、公道上でもより楽しめるクルマであり、スペシャルさもわずかばかり上だ。

そうしたことが、メルセデス寄りのリザルトを導き出した。もし、今回のテーマが毎日乗りたいクルマ選びであれば、アウディのキャビンのソリッドさや雰囲気、洗練性が好材料となるだろう。

しかし、今回選ぶべきはより良いドライバーズカーだ。となれば、ウィークデーの足に選びたいRS3より、日曜日の朝にキーへ手が伸びるA45こそが、勝者にふさわしい。

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