あるときはビジネス用のバンとして、あるときはアウトドアやキャンプのお供として、またあるときはカスタムのベース車両としてマルチに活躍するハイエースは、昔もいまもキング・オブ・ワンボックスに君臨する存在。それだけに、圧倒的な存在感を放つハイエースさえいなければスター街道まっしぐら、だったかもしれないクルマも数知れず……というワケで、ここではハイエースに負けず劣らずの名車でありながら、その陰に隠れたワンボックスカー4台を紹介。果たして、横綱のハイエースに土がつく日は訪れるのか?
文/FK、写真/ダイハツ、トヨタ、日産、三菱自動車
公道高速最速車!? 顧客への納期厳守のプロボックスが一部改良で、働くクルマとして輝く理由
キャラバンはマイナーチェンジでハイエースとの差が縮まった!?
ガソリン車は、車名が「NV350キャラバン」から「キャラバン」へとに。フロントグリルとフロントバンパーを刷新し、よりダイナミックで力強く、存在感のあるデザインとなった
ハイエースのライバルとして誰もが認める存在のキャラバン。ハイエース一強の牙城を崩すべく、昨年10月にガソリン車のマイナーチェンジを行って大きな進化を遂げていることをご存じだろうか?
今回のマイナーチェンジではフロントグリル&バンパーの刷新をはじめ、ボディカラーの追加、黒を基調にした落ち着いた雰囲気を演出する内装、メーター周りの刷新、新形状のD型ステアリングの採用といった多岐に渡る仕様変更を実施。
また、全車セーフティ・サポートカーS(ワイド)の対象となり、安全性能が大幅に強化されたことも大きなトピックとなっている。
走りの面でも動力性能と燃費性能を両立する多段化した7速ワイドレンジのトランスミッションによって高速走行時の静粛性が向上し、新設定されたマニュアルシフトモードもストレスフリーのドライビングを提供。
さらに、プライベートユースを意識した専用の内外装を採用した最上級グレードのGRANDプレミアム GXを新設定するなど日産の力の入れようは相当なもので、先に開催された東京オートサロン2022でも山で遊び尽くすための基地として活用できる“CARAVAN MOUNTAIN BASE CONCEPT”を参考出品。いま、乗りに乗っている日産の逆襲なるか? 今後に期待したい。
アウトドアブームに乗じてプチブレイク中のタウンエース バン
2020年のマイナーチェンジでは、新開発1.5リッターエンジンを搭載し、トルクでパワフルな走りを実現。走行性能も強化された
同じトヨタのハイエースによる共食いだけでなく、使い勝手の良い軽商用車にも食われ気味なのが2008年2月にデビューした4代目の現行タウンエース バン。
スタイリッシュかつコンパクトなボディに一新したうえで十分な積載能力と容易な取り回し性を兼備して登場したタウンエース バンはスクエアなボディ形状で積載能力と作業効率を向上させただけでなく、乗降性や視認性を高めることで商用車本来の機能を維持しつつ乗員の使用性にも配慮したつくりが大きな特徴だ。
軽量化と高効率を追求した1.5リッターガソリンエンジンも平成17年排出ガス規制に対応することで環境に配慮するとともに、クラストップレベルの衝突安全性能を確保するなど安全性能も進化を遂げている。
2020年6月のマイナーチェンジでは安全・安心装備のさらなる充実を図りつつ、燃焼効率の向上とフリクションの低減によって優れた低燃費性能と低排出ガス性能を両立した新開発の1.5リッター 2NR-VEガソリンエンジンを搭載。
そのデビュー以来、ハイエースほどの存在感を示せていない4代目ではあるが、軽商用車ほど小さすぎずハイエースほど大きすぎない絶妙なサイズ設定が奏功し、最近はアウトドアや車中泊のためのカスタムベース車両としてプチブレイクを果たしている。
陰が薄い存在とはいえ、実はいまデリカ D:5が売れている?
2019年に登場した新型。前モデルとは外観が大きく変化。ヘッドライト部分を大幅に変更することで、押し出しの強いフロントマスクに。ワイド感、上質感も大幅にアップした
2007年1月に登場した5代目デリカのD:5。ビジネスカーの側面ももつハイエースとは使用目的が異なるため単純比較はできないものの、デリカD:5もまたハイエースの陰に隠れた1台ではないだろうか。
5代目デリカはワンボックスタイプのミニバンでありながら、三菱のオール・ホイール・コントロール思想のもとに採用された電子制御4WDやASCなどで従来モデルから走行性能が向上。
また、環状骨格構造のリブボーンフレームや三菱初の運転席SRSニーエアバッグの採用で乗員の安心・安全もしっかり確保。このようにミニバンの優しさとSUVの力強さを融合したデリカD:5は、販売開始後1カ月で月間販売目標の3倍を超える7500台を受注するスマッシュヒットを記録した。
2018年11月には新型を発表。三菱のフロントデザインコンセプトであるダイナミックシールドの採用でエクステリアを一新するとともに、クリーンディーゼルエンジンと8速スポーツモードATの組み合わせがパワフルかつ静かで滑らかな走りを実現。
一般社団法人 日本自動車販売協会連合会発表の2021年1~12月乗用車ブランド通称名別順位では三菱車で最上位の36位(1万4790台、前年比132.6%)に食い込み、陰が薄い存在ながらキラリと光る健闘を見せている。
FMCで魅力を増したハイゼットカーゴの快進撃はここからが本番!
2021年12月にフルモデルチェンジを行ってハイゼットカーゴ。658ccの直列3気筒KF型エンジン搭載車の他にターボモデルも設定されている
全国軽自動車協会連合会が発表した2021年の軽四輪通称名別新車販売台数において、キャブオーバーバンNo.1の7万3026台を記録したハイゼットカーゴ。
数多ある軽乗用車を含めても全体の7位に相当する販売台数を誇るハイゼットカーゴなだけにハイエースの陰に隠れた存在ではない、というのが正直なところだが、そんなハイゼットカーゴが昨年12月のフルモデルチェンジで11代目が登場したのは周知のとおり。
近年の軽商用車を取り巻く環境変化に対応するべく、今回のフルモデルチェンジでは商用車初の“DNGA”(Daihatsu New Global Architecture)を展開してプラットフォームを一新するとともにFR用CVTを軽商用車として初めて採用し、燃費・静粛性・発進性といった基本性能を向上。
最新の予防安全機能であるスマートアシストを採用して安全・安心への高まるニーズにしっかり対応しているところも特筆すべきポイントだ。
また、より多くの荷物を効率的に積めるよう、車体形状のスクエア化などによってクラス最大の積載スペースも実現。荷室の側面や床面のフラット化など荷物を傷付けることなく、効率的に使用できる使い勝手の良さも魅力なだけに……軽四輪キャブオーバーバンNo.1に一切の死角なし。
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