765LTが見せつけた軽量化へのこだわり
マクラーレン オートモーティブは2020年3月に新型車「765LT」を披露し、その圧倒的な軽量化施策で驚きを呼んだ。765台のみが限定生産される765LTは現在オーダーを受付中で、日本での価格は4450万円と発表されている。
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マクラーレン オートモーティブのマイク・フルーウィットCEOは、車両の「軽さ」に重点を置いた開発戦略をさらに推し進めていくと明言している。今後登場予定の新世代ハイブリッド スーパーカーでも同様の挑戦を行っていく。
2025年導入予定のハイブリッドも「軽さ」を追求
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により延期になった自動車産業界のイベント「2020年オートモーティブ ニュース世界会議」で発表予定だった内容を、フルーウィットCEOはこの度自社リリースとして発信。“軽量化競争”で勝ち抜いていく決意を語った。
「マクラーレンの次世代スーパーカーを開発するにあたり、戦略の中心に据えているのが車両の軽量化です。いまもクラストップレベルの軽さを自負していますが、2025年に導入予定のハイブリッドモデルもパフォーマンスと効率を最大限に高めるべく、さらなる軽量化を推進して参ります」
「コンベンショナルな内燃機関を搭載していたとしても、電気自動車であっても、質量がパフォーマンスの敵であることに変わりはありません。ゆえに、軽量化競争に勝ち抜くことは我々にとって絶対的な優先事項なのです。マクラーレン オートモーティブが我々のカーボン素材の研究施設であるマクラーレン・コンポジット・テクノロジー・センターに多大な投資を行っているのもそれが理由です」
マクラーレン F1 GTR“ロングテール”が原点
765台のみ限定生産される765LTは、軽く高性能なハードコアモデルにのみ冠される称号「LT」を与えられた特別なモデル。栄光のロングテールの物語を受け継ぐ第4章といえる存在だ。ルーツはもちろん1990年代後半にサーキットで活躍したレースカー、マクラーレン F1 GTRのロングテール仕様車である。
最軽量仕様の乾燥重量1229kgは、720Sクーペ比で80kgも軽い。カーボンファイバー製のセンターモノコック「モノケージII」をベースに可能な限りの軽量化を果たした。2017年のデビュー時にスーパーカーの重量基準に革新をもたらした720Sをベースに、“ロングテール”の名に相応しい直線、コーナリング、及びブレーキング性能を与えるべく開発されたという。
カーボンファイバー素材を惜しみなく投入
1981年、マクラーレンはF1マシンにカーボンファイバー製シャシーを初めて導入。その道のパイオニアとして邁進してきた。765LTはフロントスプリッターやフロントバンパー、フロントフロア、サイドスカート、リヤバンパー、リヤウイング、リヤディフューザーはもとより、ライセンスプレートのホルダーにさえカーボンファイバーを使用。ボンネットやフロントフェンダー、ドア、リヤフェンダーは軽量なアルミニウム製だが、さらなる軽量化を望む顧客にはオプションでカーボンファイバーを選択することもできる。
アクティブリヤウイング、リヤバンパー、ワンピース型のフロントのフロアセクションは英国ヨークシャーにあるマクラーレン・コンポジット・テクノロジー・センター(MCTC)で設計・開発及び生産される。マクラーレンのロードカーとしては初めてMCTC製のカーボンファイバー製ボディコンポーネントを採用することになる。
ウインドウの厚みやバッテリーも「減量対象」
さらに、サイドウインドウ及びフロントウインドウの厚みも削減。透明パネルを備えたCピラーとリヤスクリーンには軽量なポリカーボネートを使用している。トランスミッションのファイナルドライブにはF1で使用されるニッケルクロム鋼、20NiChを使用。リチウムイオンバッテリーにも720S比で3kg軽いものを採用している。
100%チタン製のエキゾーストシステムの重量も10.9kgと、スチール製システムに比べると40%軽い。720Sのエキゾーストシステムに比べても3.8kg重量を削減した。
乾燥重量1299kgのボディを765ps&800Nmで推進
心臓部に搭載するのは720Sに搭載する4.0リッターV8ツインターボ(M840T)の改良型で、最高出力はプラス45psの765ps、最大トルクがプラス30Nmの800Nmを発揮。最軽量仕様の乾燥重量1229kgで算出すると、パワーウェイトレシオはクラストップレベルの622ps/トンを実現している。結果、0-200km/h加速7.2秒、最高速度330km/hというパフォーマンスを手に入れた。
サーキット走行も念頭に置いた765LTは、サスペンション周りも軽量化を徹底。モータースポーツ由来のヘルパースプリングも採用した。ウルトラライトウェイト鍛造アルミホイールにはチタン製ボルトと専用設計のピレリPゼロ トロフェオ Rタイヤを組み合わせ、720Sの標準装備のホイール&タイヤと比較して22kgの軽量化を果たしている。
オーディオやエアコンも非搭載
センタートンネルのカーボンパーツはわずか0.8mmの薄さを実現している。さらに、ウインドウの開閉スイッチやアクティブ・ダイナミクス・パネル(ADP)周辺にもカーボン素材を取り入れることでグラム単位での軽量化を追求する徹底ぶりだ。
コクピットの広い範囲で使われているアルカンターラも軽量仕様であり、平らなフロア部分にはカーペットも敷かれない。ステアリングのチルト&テレスコピック調整もマニュアル式となる。軽量化施策の一環としてエアコンとオーディオシステムも標準では非搭載とし、追加コスト無しでオプション装着することが可能である。
“ロングテール”シリーズのDNAを繋ぐ765LT。今後のマクラーレンの次世代製品へと梯子を渡す最新のパフォーマンスマシンとして、現時点で多くのオーダーを集めているという。
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