■日本人がクルマ選びでこだわる意外なポイントとは?
クルマを選ぶとき、ユーザーはどんな点を気にしているのでしょうか。
【画像】個性的! いろんな色の「キックス」「タフト」をチェック(24枚)
日産がオンラインでおこなった新型「キックス」の報道陣向けプレゼンテーションのなかで、興味深いデータを目にしました。それは、ボディカラーについてです。
プレゼンの冒頭、日産から次のような質問がありました。
「以下の市場調査は、お客さまがコンパクトSUVを購入するとき重視するポイントのトップ5です。二番目はどれでしょう」
トップ5として、外観、ボディカラー、運転のしやすさ、価格、快適な乗り心地(順番は不特定)があげられていましたが、もっとも重視するポイントは外観で、二番目はボディカラーだというのです。
報道陣の回答でもっとも多かったのが、運転のしやすさが48%でしたが、ボディカラーと予想した人は10%にとどまりました。
一番目は、外観であると予想した報道陣は多かったようですが、ボディカラーの重要性について認識している人は少なかったのです。
見方を変えると、質問者である日産は、こうしたアンケート結果になることを十分予測し、あえて「二番目は?」と聞いてきたのだと思います。
その後、プレゼンのなかでマーケティング本部が示したグラフによると、コンパクトSUV購入重視点(複数回答可)は、1位の外観と2位のボディカラーがともに90%以上で、3位の運転のしやすさ、4位の価格、5位の快適な乗り心地を引き離しています。
さらに驚いたことに、SUV市場全体でみると、購入重視点では外観を抜き、ボディカラーが1位になっているのです。
また、キックスは2016年から南米を皮切りに、中国、中東、北米などで販売されていますが、各市場での購入重視点は価格や燃費が上位にきている一方、ボディカラーを重視するのは日本市場の特長だといいます。
こうした市場調査に基づき、キックスの日本仕様では、訴求色である「プレミアムホライズンオレンジ」を筆頭としたツートン4色とモノトーン9色の合計13色を取り揃えました。
デザイン担当者によると、「サンライトイエロー」については当初導入の予定はなかったのですが、市場調査を踏まえて熟慮した結果、導入を決めたといいます。
■日本人は色に敏感!? 無難な白よりカラフルな色が人気
「クルマの色は白が無難」という常識が、日本では長年まかり通ってきた印象があります。
いまでも、クルマの買取業者の査定基準では、モデルによって白系がほかの色より買取価格が有利になる傾向がみられます。
また、新車を購入する際に「白だと下取り価格が数万円高い」と説明するディーラーの営業マンがいて、実際、筆者(桃田健史)も新車を購入したときにそういう話を担当者から聞きました。
このような背景があるにもかかわらず、SUVを選ぶユーザーは、メーカーが設定するカラフルな新色を好む傾向があるのです。キックスについてボディカラーを重視するとは、そういう意味です。
ボディカラー重視の傾向は、軽クロスーバーSUVのダイハツ「タフト」でも共通です。
ダイハツによると、発売1か月での販売実績は月販目標台数の4.5倍に相当する約1万8000台。人気のボディカラーは、新色として導入した「レイクブルーメタリック」、「フォレストカーキメタリック」、「サンドベージュメタリック」の3色だといいます。
では、なぜ日本人はSUVのボディカラーにこだわるのでしょうか。その背景には大きくふたつの要素があると考えます。
ひとつは、そもそも日本人は色に対する感性が鋭いという点です。
アメリカで以前、日系メーカー各社のデザインスタジオを取材した際、「同じ色を見ていても、人によって色の見え方が違う」という話を各社のデザイナーから聞きました。
医学的な根拠については定かではありませんが、デザイナーたちの日常業務のなかで、デザイナーやユーザーの出身国などによって、色に対する感性というより、色そのものの見え方が違うように感じるというのです。
また、クルマのデザインで重要な、光がつくる影による濃淡についても、見え方に差があるようです。
そのうえで、あくまでも数人の日本人デザイナーの意見ですが、「(少なくともクルマについて)日本人は色についての感性が高いのではないか」と指摘します。
もうひとつは、SUVのギア感という商品性です。
ギアとは、生活必需品という感覚を少し超えた、アウトドアなどアクティブなレジャーを目的、またはイメージする商品を指します。
クルマ以外で、ギアっぽいイメージがある衣料や雑貨では、カラフルな色味の商品が市場に数多く出回っています。そうした影響が、SUVに及んでいるのではないでしょうか。
トヨタに続き、日産でも本格化してきたSUV新車攻勢。そうしたなかで、日本人ユーザーのクルマのボディカラーに対する要求は、ますます強まっていくのかもしれません。
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