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分析 FCA、なぜテスラに巨額を支払う 厳しさ増すEUのCO2排出規制

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分析 FCA、なぜテスラに巨額を支払う 厳しさ増すEUのCO2排出規制

もくじ

ー 実体のない物を売って巨額を得ているテスラ
ー 罰金を節約するために
ー モデル3の販売が増えればさらに影響は大
ー 多くの自動車メーカーが罰金を払うことに

FCA、テスラと提携 欧州の排ガス規制に対応 罰金の回避が目的 数億ユーロで

実体のない物を売って巨額を得ているテスラ

テスラのイーロン・マスクCEOは、電気自動車を売って儲けることが困難であると認めている。

しかし過去数年間、テスラは競合する自動車会社に驚くほど価値のある物に対価を支払わせ、数億円もの巨額を得てきた。その驚くほど価値のある物とは、実体がない。

米国のいくつかの州は、自動車会社に一定台数のゼロエミッション車の製造を義務づけている。しかし、実際にそれだけのゼロエミッション車を製造できない自動車会社は、他の自動車会社から「クレジット」を買うことができる。

テスラは電気自動車しか製造していないため、多くのクレジットを保有していることになる。昨年の四半期には、テスラはこのクレジットをライバルの自動車会社に売ることによって、1億9000万ドル(約213億円)以上を得た。これは同四半期における利益の2/3を超えるほどの額だ。

今回テスラはさらに欧州で、この実体がない物を利益に変える手段を見つけた。アルファ・ロメオ、フィアット、ジープ、マセラティを傘下に収めるFCAグループと新たな契約を結んだのだ。

この契約では、FCAはこの実体がない物に「数億ユーロ」を支払うことになる。テスラの電気自動車が排出する0g/kmのCO2を、自社の排出量に含めるためだ。

罰金を節約するために

EUは2021年までに、自動車会社が販売する全新車の平均CO2排出量を、現在の130g/kmから95g/km以下(メーカーごとに車両重量の平均とクレジットによって調整される)に引き下げる予定だ。これを満たすことができない場合、1台あたり95g/kmを超えるCO2排出量1gにつき95ユーロ(約1万2000円)の罰金が科せられる。

FCAとテスラは、両社が欧州で販売する車両を1つの「プール」としてまとめることで合意した。EUは新車の平均CO2排出量を、このプールごとに計算する。FCAはテスラから実質的にその権利を買うことで、平均CO2排出量を下げることができるというわけだ。

自動車業界アナリストのジェイトー・ダイナミックスによると、FCAは昨年、欧州で96万1000台の車両を販売し、その平均CO2排出量は125.3g/kmだった。この販売台数と平均CO2排出量の数字が変わらないと仮定すると、2021年にFCAの目標値は89.8g/kmとなり、28億ユーロ(約3500億円)の罰金を支払わなければならなくなる。

テスラが昨年、欧州で販売した車両は2万9000台に過ぎないが、これらのクルマは50g/km以下であるため、「スーパー・クレジット」が与えられる。昨年のFCAとテスラが欧州で販売した新車の平均CO2排出量をまとめると、121.6g/kmとなる。

2021年の目標値は91.6g/kmになり(車両重量の平均が増えるため)、支払う可能性のある罰金は22.5億ユーロ(約2816億円)に減る。つまり600億円以上も節約できるわけだ。

モデル3の販売が増えればさらに影響は大

ジェイトーの自動車業界アナリスト、フィリペ・ムニョスは、FCAがテスラにどれだけの金額を支払うかに注目しているという。

2018年の数字には、テスラがモデル3で欧州市場に与えた「大きな影響」が勘定されていない。「モデル3はの販売台数は今後さらに増えるでしょう。プールに占める影響はさらに大きくなるはずです」と彼は言う。

2021年までに、欧州におけるテスラの販売台数はさらに増加し、これによってFCAが節約できる金額はさらに大きくなるはずだ。

FCA自身もまた、電動化の計画を始めている。ジープとアルファ・ロメオにはプラグイン・ハイブリッド車が設定され、さらに来年は完全電気自動車となる次期型フィアット500が発表される予定だ。これらの電動化モデルを投入することで、CO2の平均排出量はさらに削減できるだろう。

多くの自動車メーカーが罰金を払うことに

厳しさを増すEUのCO2排出規制によって、罰金を支払う可能性があるメーカーはFCAだけではない。多くのメーカーが2021年の規制値をクリアする「準備ができていない」とムニョスは指摘する。ジェイトーによれば、PSAグループとフォルクスワーゲン・グループは特に多額の罰金を支払うリスクにさらされているという。一方で、トヨタとマツダは両社が販売する新車を1つのプールにまとめることで合意している。

ムニョスは次のように付け加えた。「EVが本当に内燃エンジン車の代替となる時を待っていたら遅すぎます。多くの自動車メーカーは、FCAとテスラのプールのような解決策を探さなければならなくなるでしょう」

ムニョスはこの提携によってFCAが「ライバルの自動車メーカーにとって、より強力な、大きな脅威になるでしょう」と指摘している。

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