本格的シリーズ創設2年目を迎えた欧州域内最大のTCR規定ツーリングカー・シリーズ、TCRヨーロッパの開幕戦がハンガロリンクで開催され、レース1は強豪ターゲット・コンペティションのワン・ツーに加えてM Racingが3位に入り、ヒュンダイi30 N TCRが表彰台を独占。その結果に一矢報いるべく、レース2ではジュリアン・ブリシュが逆転での勝利を挙げ、プジョー308 TCRがウエット絡みの難コンディションで快心のレース運びを披露した。
FIAの世界格式となるWTCR世界ツーリングカー・カップに次ぐシリーズに位置付けられ、その登竜門としての機能も担うTCR EUシリーズは、4月最終週にWTCRとの併催イベントとしてハンガリーで開幕。WTCRからは撤退したプジョースポールの支援を受けるJSBコンペティション、DGスポート・コンペティションのプジョー308 TCR勢や、新興ブコビッチ・モータースポーツのルノー・メガーヌR.S. TCRなど、WTCRには参戦していないモデルの走りにも注目が集まった。
WTCR第2戦:ハンガリー戦でホンダ・シビック2連勝。レース3はヒュンダイ使うタルキーニが制す
年に1度の各国地域選手権代表が集うお祭り的イベントから一転、本格的シリーズに発展して2年目を迎えたチャンピオンシップには、全31台がシーズンエントリー。
なかでもタイトル候補として有力なのは、5台のヒュンダイを走らせるターゲット・コンペティションや、STCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権の古豪で、TCRインターナショナル参戦経験や昨季は初年度のTCR UKも戦った経歴を持つウエスト・コースト・レーシング(WCR)、さらにWTCRからスイッチしたホンダ系のブーツェン・ジニヨン・レーシングや現在もWTCRに参戦するチームWRTなど、複数のトップチームが顔をそろえた。
そんななか、今季最初の予選を制したのはターゲットの実力者マット・オモラ(ヒュンダイi30 N TCR)。決勝レース1ではフロントロウに並んだチームメイトのアンドレアス・バックマン(ヒュンダイi30 N TCR)を従え完璧なスタートを決め1コーナーへと飛び込んでいく。
しかし続くターン2ではそのバックマンがアウト側へ弾き出され16番手にまでドロップすると、首位オモラの背後には同じくチームメイトのジョシュ・ファイルズ(ヒュンダイi30 N TCR)が浮上してくる。
さらにその背後から2台のヒュンダイを追ったのは、JSBコンペティションのプジョー308 TCRをドライブするブリシュで、この3台は激しい首位争いを展開。
しかし、ブリシュの奮戦を打ち砕いたのは、M Racingのヒュンダイをドライブするネルソン・パンチャティッチで、ターゲットとのバトルで消耗していたブリシュのプジョーを8周目の最終コーナーでオーバーテイク。
レースはそのまま13周のフィニッシュラインを迎え、オモラ、ファイルズのターゲット勢と、パンチャティッチの表彰台となり、ヒュンダイ勢がポディウムを独占。さらに8周目にはアンドレアスの妹であるジェシカ・バックマンもBRCレーシングのルカ・フィリピとのヒュンダイ対決を制し10位入賞を果たすなど、ターゲットが4台をトップ10に送り込んだ。
続く14時30分からのレース2は、ウエットからドライへと路面コンディションが変化する難しい状況下での勝負となり、まずは3番手スタートだった地元ダニエル・ナジー(ヒュンダイi30 N TCR)がポールシッターのサンティアゴ・ウルティア(アウディRS3 LMS)を交わし、首位で1コーナーへ。
しかし、直後にブコビッチ・モータースポーツのジョン・フィリピ(ルノー・メガーヌR.S. TCR)がターン3でクラッシュし、最終コーナーでもアクシデントが発生した影響で早々のセーフティカー・ランに切り替わる。
12分後の4周目にリスタートを迎えると、トラックには小雨が落ち始めドライビングの難易度が高まるなか、"5台目のターゲット"ドゥサン・ボルコビッチ(ヒュンダイi30 N TCR)とプジョーのブリシュがウルティアのアウディをかわしてサイド・バイ・サイドのバトルを展開する。
この2台は2周以上にわたってドッグファイトを繰り広げると、7周目の1コーナーでブリシュがインを差して勝負あり。わずかなコンタクトでボルコビッチはアウト側に飛び出し、ブリシュのプジョーはドライビングスタンダードの警告を受けたものの、その後も勢いは衰えることなく首位ナジーの背後へ。
WTCRにワイルドカード参戦を果たし優勝経験も持つナジーは、ここハンガロリンクを知り尽くしているだけに攻略は難しいかと思われたが、ダンプ路面でのプジョー308の速さは群を抜いており、ブリシュは8周目のターン11でアウトサイドから豪快なパッシングを披露。
最終的に、2番手に浮上してきたComtoyou Racingのジル・マグナス(アウディRS3 LMS)に対し1.6秒の差をつけトップチェッカー。ナジーが3位を死守して最後のポディウムスポットを守った。
これでシリーズランキングは2ヒート続けて上位入賞を果たしたマグナスとパンチャティッチが57ポイントの同率首位に並び、5月26日の第2戦ドイツ・ホッケンハイムを迎えることになった。
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