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より成熟し“人間味”を増したアロンソがふたたび勝利を目指す/スペイン人ライターのF1便り

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より成熟し“人間味”を増したアロンソがふたたび勝利を目指す/スペイン人ライターのF1便り

 2021年シーズンから2年ぶりにF1復帰を果たしたフェルナンド・アロンソ(アルピーヌF1)。第5戦モナコGPまでは苦戦が続いていたが、第6戦アゼルバイジャンGPから6戦連続入賞を果たす好走を見せている。さらに第11戦ハンガリーGPではチームメイトのエステバン・オコンに対する見事なアシストで勝利に貢献した。かつて無慈悲な人物というイメージが持たれていたアロンソだが、F1復帰後どんな変化を見せているのだろうか。スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアが前半戦の戦いを振り返る。

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 2年間のブランクを経てF1に復帰し、F1前半戦を終えたフェルナンド・アロンソは、ふたたび勝者になっている。ある意味では、ということだ。アロンソ自身はレースで優勝したわけではないかもしれないが、彼は第11戦ハンガリーGPで技術および競技の観点からアルピーヌF1の勝利の基準を引き上げ、エステバン・オコンがアルピーヌによるF1初優勝を達成するのに尽力したのだ。それ以上に、アロンソはハンガリーではいつものように速く無慈悲であることを、さらなる経験によるスパイスを加味して示して見せた。

 アルピーヌはハンガリーGPで優勝したことで、いたるところでスポットライトを浴びていた。8年越しのアルピーヌの初優勝のおかげだと多くの人々が考えていたが、現実には記事のヘッドラインの少なくとも半分はオコンではなく、2度の世界チャンピオンであるアロンソが飾っていたのだ。アロンソはハンガロリンクの週末で見事なレースをした。実際には予選とレースでオコンよりペースが遅かったが、彼は様々な状況に対処していた。おそらくチームメイトのオコンができる以上のことをしていたのだ。

 最近のレースでは、アロンソはオコンよりかなり速く、オコンは予選とレースペースにおいてアロンソに肩を並べるどころか追いつけずにいた。そのためアルピーヌのCEOが公の場で、オコンは非常に優れたドライバーであるとフォローする事態にまでなったのだ。多くの人々が、こういった発言はオコンにプレッシャーを与えることになるのではと考えたが、その方法はうまくいったようだ。ハンガリーGPの予選でオコンは、アロンソよりひとつ上の8番手となった。2台のマシンがQ3に進出することはアルピーヌにとって素晴らしいことだが、もちろん日曜日のレースがどれだけワイルドになるか予想できた者はいなかった。

 第1コーナーでの予想外の多重クラッシュにより、メルセデス、レッドブル・ホンダ、マクラーレン、フェラーリの各1台がリタイアし、クラッシュから生き延びたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)も大きく順位を下げた。多重クラッシュのために導入された赤旗が終了した後のリスタートでは、ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)のスタートが思わしくなく、ルイス・ハミルトン(メルセデス)は戦略ミスをしたため、オコンの前には誰もライバルがおらず、彼はレースをリードしていた。

 実際アロンソは、正直に言えば最初の3コーナーでは、最新のハリウッドのモータースポーツ映画か、あなたのお気に入りのビデオゲームからまっすぐ抜け出してきたかのように見えたのだが、レースでそれほど良い順位につけていなかったのだ。どうしようもない混乱に見えたが、アロンソは正しい判断を続け、すべてのクラッシュを避けた。

 コース上での戦いについて言えば、ハンガロリンクは最も面白いサーキットというわけではない。なぜならペース上の大きなアドバンテージがなければオーバーテイクが難しいからだ。アロンソのマシンにアドバンテージはなく、順位をそれほどあげることができなかった。アロンソは表彰台まであとひとつの4番手から動けなかったのだ。さらに悪いことに、ハミルトンが先頭集団を捕らえて不可能に思える勝利を掴もうと後ろに迫っていた。このままいけばハミルトンは優勝することができたかもしれない。しかし、彼はフェルナンド・アロンソに出くわしてしまったのだ。

 まるで2008年シーズンのレースであるかのように、より速いマシンを駆るハミルトンがアロンソを追い抜こうとした。だがハミルトンにはできなかった。1回目、2回目、そして3回目でもだ。アロンソは第1コーナー、続く第2コーナー、そして第3コーナーで的確に防御したので追い抜きは不可能だった。そして次のラップまで順位を守る走りをした。現世界チャンピオンのハミルトンは、アルピーヌを抜くのに10周かかったため、首位のオコンに追いつくには遅すぎた。ハミルトンは3位でチェッカーを受けたが、その後、セバスチャン・ベッテルが技術規定違反により失格となったため、ハミルトンは2位となった。オコンはチームメイトであるアロンソの防御のおかげで勝者となったのだ。

 マシンを降りたオコンは、アロンソに対して感謝の言葉を述べた。オコンは「フェルナンドは難しいチームメイトだと聞いていた。彼は常に策士だし、チームメイトを公平に扱わないので、無慈悲な人物だということだった。でも僕は彼と素晴らしい時間を過ごしている。僕たちは情報を交換し、同じ目標のためにともにチームをプッシュしている。彼と仕事ができるのは特権だよ」とこれまでのアロンソのイメージを覆す発言だった。

 このことは私にあることを考えさせた。アロンソがF1を休止した2019年~2020年に、彼はインディ500のための準備の時間を過ごし、WEC世界耐久選手権およびIMSAの耐久レースに参戦した。そして最後にはダカールラリーにも参戦した。これらすべてのシリーズに共通することがひとつある。それは人間味だ。

 耐久戦で勝利するには、チームメイトと協力し、彼らをできるだけ助ける必要がある。なぜなら彼らも代わりに助けてくれるからだ。クロスカントリーカーについても同じことが言える。ナビゲーターと一心同体になるほどに、しっかり協力し合わねばならないのだ。インディでは違うかもしれないが、大きなチームのなかで、アロンソは自身の走行を最大限に高めるために、他のドライバーとうまくやっていかなければならなかった。

 こうした経験のすべてが、アロンソをより“人間味”があり、チームメイトを以前よりも喜んで助けるドライバーにしたのではないかと私は思う。それともオコンを助けることは彼自身を助けることになるのだろうか?どちらにしても、我々が目にしているのはさらに成熟したアロンソだ。すなわち彼はライバルたちにとっていっそう危険な存在になったということだ。タフでフェアで正確ということは、ベテランのアロンソが今も才能を示すことができるという良い兆候だ。

 オコンはレースで優勝したかもしれないが、アロンソは人々の心を勝ち取った。実際、彼は世界中で行われた投票から、F1の“ドライバー・オブ・ザ・デイ”に選ばれたのだ。そして私にとっては、すべてのことが同じ結論を指している。アロンソに勝てるマシンを与えれば、彼は今も優勝する力があると。ハンガリーGPのレースウイーク前日に40歳になったドライバーにしてみれば、本当に信じられないことだ。頼むからアルピーヌは、2022年に競争力のあるマシンを作って欲しい!


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