アバルトと言えばフィアットのチューニングメーカーのイメージだが
もともとはイタリアのレーシング・マニュファクチュアだった「アバルト」は、フィアットのクルマに独自のチューニングを施したクルマを開発してきたことで、アバルトと言えばフィアットというイメージが確立している。しかし過去にはフィアット以外の自動車メーカーから販売されたアバルトが存在していた。今回はその中から、3台の歴史的なクルマたちをご紹介しよう。
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フィアット以外のメーカーとの「Wネーム」が存在していた
イタリアのレースカーコンストラクターやチューナーの大多数がそうであったように、アバルトもフィアットの小型車のチューニングからスタートし、とくに1958年に正式な協定を結んだのちは、お互いに「ベストパートナー」とも言うべき存在となった。でもそんなアバルトにも、フィアット以外の自動車メーカーと協業関係を結んだ「Wネーム」の事例が、かの「アバルト・シムカ」だけではなくいくつか実現していたようだ。
アルファなのにアバルト:アルファ ロメオ・アバルト1000GT(1958)
1958年のトリノ・ショーの「ベルトーネ」社ブースにて初公開された、「アバルト1000GTクーペ」の名でも知られるこのプロトティーポ(試作車)。アルファ ロメオに所属していた若手エンジニア、マリオ・コルッチ技師が得意とする軽量かつ高剛性の立体的な鋼管スペースフレームに空力的なボディを組みあわせた、本格的なレーシングGTマシンである。
小さいながらもグラマラスなボディは、すでにアルファ ロメオとのコラボのもと「ジュリエッタ スプリント」で大きな成功を収めていたベルトーネに委ねられ、デザインワークは同社とコンサルタント契約を結び、ジュリエッタ スプリントの創造主でもあるフランコ・スカリオーネが担当した。
パワーユニットは、ジュリエッタ用1.3L直列4気筒DOHCエンジンを、ボアはそのままストロークを短縮することで1290ccから998ccまで縮小。この排気量としたのは、FIAスポーツカー選手権のGTカテゴリーでアバルトの独壇場となるはずだった1000cc以下のクラスに参入することを期していたから……、とも言われているが、アルファ ロメオはそのための武器の開発のため、最大のライバルと手を結んだことになる。そしてアバルトのチューニングもあって、後輪を駆動する1Lの4気筒エンジンは88psを発生するとされた。
この試作車は3台が製作されたうち、2台は独アヴスで行われたテスト中のアクシデントにより廃車。生産化プロジェクトもろとも、キャンセルに終わってしまう。しかしのちにそのスクラップの1台は、かの鬼才デザイナー、ルイジ・コラーニが破天荒な曲面デザインのコンセプトカーへと変身させることになった。
ところで、このアルファ ロメオ・アバルトのプロジェクトを主導し、最大の新機軸であるチューブラーフレームを設計したマリオ・コルッチ技師だが、その能力はカルロ・アバルトの目に留まり、紆余曲折を経てアバルト&C.社へとヘッドハント。そののち、1980年代までアバルトの技術陣を率いることになる。
いっぽう、鋼管スペースフレームのアイデアは、エド・マッツォーニたちアルファ ロメオの技術陣にも引き継がれ、さらにカルロ・キティとカロッツェリア・ザガートの協力を得て、名作「ジュリアTZ」として昇華されることになったのである。
ポルシェなのにアバルト:ポルシェ356B 1600GS カレラGTLアバルト(1960)
アバルトと別ブランドのWネームのなかでも、もっとも有名なものと言えば、やはり1960年に製作されたポルシェ356B-1600GSカレラGTLアバルト、いわゆる「カレラ・アバルト」の名が挙げられることだろう。
ポルシェ356の第三世代として1959年に登場した「356B」は、レースを目的として高出力の4カムシャフトエンジンを搭載した「1600カレラGS」であっても、いささか重くなってしまうことが危惧されていた。
そこで、第二次大戦の前後からポルシェ設計事務所とは関係の深かったカルロ・アバルトに、アルミ合金による軽量かつ空力的なボディを持つレーシングGTの開発を依頼した。車名のGTLの「L」は、ドイツ語で軽量を意味する「Leicht」の頭文字とされる。
ボディデザインは、この時代ベルトーネとのコンサルタント契約が満了し、完全なフリーランスとなっていたフランコ・スカリオーネが受託。試作車および最初の数台は、1940~50年代のイタリアでは有名だったボディ架装職人、ロッコ・モットの工房で製作されたといわれている。
試作車と生産型を合わせて21台が製作されたといわれるカレラ・アバルトは、120kgの軽量化に成功していたものの、のちにFIA-GTカテゴリーの区分けが変わったことによって1.6Lの排気量では中途半端となり、ポルシェは自ら2L 4カムエンジンにコンバートした進化版をワークスチーム用のみに製作することとした。
蛇足ながら、生産型のボディは小規模カロッツェリア「ヴィアレンゴ&フィリッピーニ」が製作作業を請け負った、というのが旧来の定説だったようだが、世界的な自動車史家のエルヴィオ・デガネッロ氏が、かつてカルロ・アバルトの秘書を永らく勤めた女性、エヴァンジェリーナ・イザンドーロの書き残した古いメモ書きを見つけ出して究明した結果、じつは「フィアット・アバルト・モノミッレ」などを手がけた「ベッカリス」社であったことが、21世紀になって判明したそうである。
シムカなのにアバルト:シムカ・アバルト1150(1963~64)
古いイタリア製スポーツカーがお好きな方ならば「アバルト・シムカ」という車名を聞けば、自動的にフィアット・アバルト1000ビアルベロの後継車である美しいレーシングGTを思い出されるかもしれない。でも「シムカ・アバルト」という言葉を聞いたことのある方は、決して多くはないものと想像される。
もともとは第二次大戦直前にフィアット500トポリーノのフランス国内生産を行ったことに始まり、戦後も独自デザインながらフィアットとの関連の深い小型車を量産していたシムカは、1961年のパリ・サロンにて、フィアット600に大きな影響を受けつつも、まったく異なる3BOXボディを持つ「シムカ1000」をデビューさせていた。
そしてこのモデルのポテンシャルに目をつけたアバルトが、1963年夏に発表したのが「シムカ・アバルト1150」であった。
水冷の直列4気筒OHVエンジンは、シムカ1000の944ccユニットを1137ccまで排気量アップするとともに、吸排気系をアバルト流にチューンしたもの。55psを発揮する基本モデルの「1150」のほか、58psの「1150S」、65psの「1150SS」が用意された。さらにレース専用モデルの「1150SSコルサ」になると85psをマーク。オプションで「アバルト・シムカGT」と同じレース用6速トランスミッションも組みあわせることができた。
ボディは基本的にシムカ1000と共通ながら、フロントエンドには「SIMCA ABARTH 1150」の車名を記した赤いパネルが取り付けられたほか、1150S以上のモデルではフロントにラジエターとそのためのグリルが備えつけられた。
また、シムカ1000はもとよりフィアット600と共通部品が多く、ホイールハブも共用とされていたことから「フィアット・アバルト1000TCベルリーナ」と同じ、楕円形の通風孔を設けたスチールホイールを標準装備としていた。
くわえて、ベースとなったシムカ1000は4輪ともドラムブレーキだったが、アバルト版の1150と1150Sではフロントをディスクブレーキに変更。さらに1150SSでは向上したパフォーマンスに適応すべく、後輪にもディスクブレーキを採用した。
いずれのシムカ・アバルト1150もなかなかのポテンシャルを発揮し、キット/コンプリートカーともに販売実績も悪くなかったという。ところが1963年に、敵対的TOBとも受けとられかねないかたちでシムカを買収したクライスラー・グループの意向もあり、それまでの大株主であるフィアットとの関連をうかがわせるアバルトとの提携関係も、いささか強引にシャットダウン。1964年にはシムカ・アバルト1150の販売も終了となってしまう。
しかし、その後シムカは「1000ラリー2」「1000ラリー3」などの高性能モデルを1000に用意するのだが、同モデルの開発にはアバルトのノウハウが生かされたとする説も語られているようだ。
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