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ホンダ初の本格スペシャリティ! プレリュード 試乗 【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

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ホンダ初の本格スペシャリティ! プレリュード 試乗 【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

 徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回はホンダ プレリュードを取り上げます。
 ホンダが145クーペ以来となるクーペとして誕生させたのがプレリュードでした。注目はスイッチひとつで開閉できる電動式のサンルーフ、スピードメーターとタコメーターを同軸上にレイアウトした集中ターゲットメーター、オプションながら日本車初となるコノリーレザーシートなど、当時としては高価で特別な装備が数多く採用されていました。
 それらを、果たして徳さんはどう見定めたか? 『ベストカーガイド』1979年2月号の記事からリバイバル。
文:徳大寺有恒
ベストカー2017年2月26日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です


■落ち着き、引き締まったスタイリング

83年当時、異次元の低燃費 34km/L ダイハツ シャレード DE-TX 試乗 【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

 シャープなラインで構成された2プラス2クーペ。ホンダ/プレリュードの最初の印象はなかなかのものであった。

当時FRが当然だったクーペにあってFFで勝負したのがこのプレリュード。オーソドックスなノッチバックスタイルですっきりした印象だ

 全体のフォルムは確かにメルツェデス・ベンツ450SLCによく似ている。特にサイドビューのリアクォーターウインドウのあたりはメルツェデスを思わせる。口の悪い業界雀はこのクルマが出る前から“越ベンツ”と呼んでいたことを思いだした*。しかし、これもいたしかたあるまい。メルツェデスに似ているのは何もこのクルマだけではない。マスタングだってそっくりなのだから。
*川越のとなり、狭山工場でプレリュードは生産されていたため

後席はプラス2というもの。シートはファブリックだが、コノリーレザーがオプション設定された

 私がこのプレリュードのスタイルに関して意見があるとすれば、あまりにも全高を低くしたいために、ウインドウの面積が相対的に小さくなり、やや窮屈そうに見えることなのである。ロングノーズ、ショートデッキのバランスも平均的で、その全体から醸し出すこのクルマの印象は平凡である。

 全長4090×全幅1635×全高1290mm、ホイールベース2320mmという数字だが、実際に見た感じはこのディメンションよりも小さく見える。これはけっして悪いことではない。なにも実寸よりも大きく見えることは重要ではなく、むしろ、この種のスペシャルティカーとしてムダのない、そして引き締まったスタイルこそ望まれるのだから。

■スペシャルティカーへのホンダの意気込み

 プレリュードはいうまでもなくスペシャルティカーである。そして、そのベースとなったのはアコードであるはずなのだが、実はフロアパネルはアコードと共通ではない。2320mmというホイールベースの新しいフロアパネルを新設計したのである。このあたりが、いかにもホンダらしいやり方であり、トヨタ、日産の可能なかぎり(例えそれが少々妥当性を欠いたとしても)部品を共通とするのと趣を異にしている。

 グレードは4つ。XTが一番安く、XEが一番高いが、その差は単にアクセサリーの大小でないことが面白い。プレリュードの大きな売りである電動サンルーフは一番安いXTで標準なのに、その上のEは車速応動タイプパワーステアリングが装備されるが、電動サンルーフはないといったあんばいだ。

日本車初の電動式サンルーフが廉価グレードE以外に標準装備となっていた

 またXRは175/70SR13というファットなタイヤをはき、スタビライザーを備えたスポーティなバージョンであるという具合に、それぞれスペシャルティカーを買う以上、上下はなく、あるのは使用途別によるものという主張は賛成だ。

■ややパンチに欠ける1.8Lエンジン

 プレリュードの走りは、そのパワーユニットが、基本的にアコードと共通のものであり、ウエイトもアコードの4ドアの935kgに対して915(XE)とわずかな差でしかなく、そう変わるものでもない。

エンジンはアコードと同じ1.8L SOHCのCVCC8バルブを採用。5MTは90馬力、ホンダマチック2ATは85馬力だった

 谷田部テストコースにおける加速データは0~400m加速18.90秒、0~100km/h加速12.56秒というところ。これは1.8Lのスポーティカーとしては普通といえる。加速テスト中やロードインプレッション中に感じたことは2000rpmあたりまでの中速のトルクが増し、よりスムーズに回ったことである。これはトップギア1000rpmで32km/hという高いギアリングを持つクルマとしては大事なことだ。

 反対に相変わらずというべきか、高速の伸び、パンチは今ひとつで各ギアともレッドゾーン(5800rpm)の始まる前で回転の上昇が鈍る。これが主たる原因でトップスピードはメーカー公表値(推定)の170km/hを大きく下回る152.22km/hにとどまった。タコメーターは4900rpmを指し、スピードメーターは170km/hを指していた。

スピードメーターとタコメーターを同軸上にレイアウトした、集中ターゲットメーターを採用したコックピットは新鮮だった

 CVCCエンジンにモアパワーの要求を出したが、ハンドリングに関しては文句なく合格である。ホンダはこのプレリュードを作るにあたって、サスペンションを新しくやり直した。形式はアコードやシビックと同じ4輪ストラットタイプだが、前後にコンプライアンスを充分に与え、ジオメトリーも変えている。

 この新しいストラット式サスペンションとラック&ピニオンのスティアリングのコンビネーションはきわめてスポーティだ。パワーステアリング付きのXEとパワステがなくファットタイヤのXRの両方に乗ったが、このクルマに関するかぎりノンパワステのXRを採る。シャープで応答性のいいスティアリングと思った通りのラインをクリアさせることができるサスペンション、特に感心したのはリアホイールのすばらしい追従性であった。プレリュードはこのハンドリングのおかげで紛れもなくスポーティカーの仲間入りをした。

 ハンドリングは乗り心地と両立して初めて高い評価を得られるが、この点でもプレリュードは合格点だ。しっかりとしたサスペンションはスピードを上げるにつれてフラットになり、この分野ではいつもお手本になるヨーロッパ車並みの水準を持つ。これはやはり4輪ストラットというメカニズムのポテンシャルをフルに生かしているからだろう。少々硬めのしっかりしたシートもこの乗り心地に大いに貢献しているのはいうまでもない。

サブフレーム一体式のモノコックボディを採用し、フロントピラーが2重になるなど、剛性にこだわった走りは評価が高かった

 今回約350kmをプレリュードに乗ったが、すばらしいハンドリングにすっかり惚れ込んでしまったのだ。唯一サンルーフ車の天井の低さは、うっとうしい。もちろん開いた時の開放感はすばらしく、12月だというのに終始一貫スライディングルーフを開けたまま走ったのだった。

◎プレリュードXE 主要諸元
全長:4090mm
全幅:1635mm
全高:1290mm
ホイールベース:2320mm
エンジン:直4 SOHC
排気量:1750cc
最高出力:90ps/5300rpm
最大トルク:13.5kgm/3000rpm
トランスミッション:5MT
60km/h定地燃費:21.0km/L
車重:915kg
価格:140万円
※グロス表記

本誌テストデータ
0~400m加速:18.90秒
0~100km/h加速:12.56秒
最高速度:152.22km/h

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