10月1日、WRC世界ラリー選手権第11戦『ラリー・チリ・ビオビオ』のSS13~16が行われ、トップで競技最終日を迎えたMスポーツ・フォードWRTのオット・タナク/マルティン・ヤルヴェオヤ組(フォード・プーマ・ラリー1)が総合優勝。大会2連覇で2023年シーズン2勝目を飾った。日本人ラリードライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は総合5位でフィニッシュしている。
2019年にWRCイベントとして初開催されたラリー・チリ。4年ぶりにシリーズのカレンダーに復帰を果たした今大会は、ラリーの拠点となるサービスパークの所在地こそビオビオ州の州都コンセプシオンから変わらないものの、開催時期や最終日の2本のステージを含め複数のステージが新たに設定されるなど、多くの新しい要素を盛り込んだイベントとなった。
【順位結果】2023年WRC第11戦ラリー・チリ・ビオビオ SS16後
そんな2023年のWRCチリではタナクが初日から速さを見せ、デイ1をトップ通過する。前回大会のウイナーである2019年王者は、タイヤへの攻撃性が高いステージが続いたデイ2でもタイヤチョイスを的確に行い首位を快走すると、前日終了時点で4.2秒だった2番手テーム・スニネン(ヒョンデi20 Nラリー1)とのタイムギャップを58.3秒にまで拡げてみせる。
曇り空の下での実施された最終日は、デイ2で稼いだ大量の“貯金”を有効に使いながらシーズン2勝目へと近づいていく。午後の最終パワーステージを確実に走りきったエストニア人ペアは最終的に、2位に42.1秒差をつける快勝で2月に行われた第2戦ラリー・スウェーデン以来の今季2勝目をマークした。
タナクと並んで今大会において目立つ活躍を見せていたスニネンは、トップとのタイム差が大きく開いたため、最終日は13.9秒差の総合3番手につける僚友ティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)を気にしながらのラリーに。両者のバトルは今朝のオープニングから白熱し、SS13とSS14の両方でヌービル、スニネンの順でワン・ツーを記録。“エース”がじわじわと差を詰めプレッシャーをかけるなか、最高峰カテゴリー復帰3戦目の“後輩”も粘りを見せる。
しかしミッドデイサービスを経て迎えたSS15で事件が起きる。総合3番手のヌービルと6.7秒差の2番手につけていたスニネンが、ステージ中盤7km地点でステージ右側に隠れていた障害物にヒットし足回りを損傷。コントロールを失い道路左側の崖に転落してしまったのだ。幸いクルーは無事だったもののi20 Nラリー1のコース復帰は叶わず、残り1.5SS距離にして残り約20kmというところで無念のリタイアを喫することとなった。
スニネンは事故後SNSを更新し次のように綴っている。「残念ながら僕たちのラリー・チリはゲームオーバーとなってしまった。チームの皆に対して申し訳なく思っている。もちろん、これは大きな失望だ」
■Mスポーツ、ヒョンデ、トヨタが表彰台を分け合う
このアクシデントによりヌービルが2番手に浮上し、デイ2でのタイヤトラブルによって順位を下げていたエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)が表彰台圏内にカムバックした。
両名はそのまま2位、3位表彰台を獲得。総合4位には1日(日)に23歳のバースデーを迎えた現王者カッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が続き、総合6番手で競技最終日に入った勝田も順位をひとつ上げ、トップ5フィニッシュを果たした。
なお、最終パワーステージでロバンペラとエバンスがワン・ツーを記録したTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)は、マニュファクチャラーズランキングで2位につけるヒョンデ・シェル・モビスWRTに106ポイントを差をつけたため、シーズン最終盤の2戦を残してメーカータイトルを確定させている。トヨタのマニュファクチャラーズチャンピオン獲得は3年連続だ。
総合6位はWRC2クラス優勝を達成したオリバー・ソルベルグ(シュコダ・ファビアRSラリー2)で、ガス・グリーンスミス(シュコダ・ファビアRSラリー2)が25.8秒差の総合7位/クラス2位に。クラス3位にはサミ・パヤリ(シュコダ・ファビアRSラリー2)が入った。
このWRCチリが“ラリー1デビュー戦”となった2名のドライバー、グレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマ・ラリー1)と地元チリ出身のアルベルト・ヘラー(フォード・プーマ・ラリー1)はともにラリーを完走。ミュンスターが総合13位、ヘラーは総合15位で母国ラリーを走破している。
WRCの次戦第12戦『セントラル・ヨーロピアン・ラリー』は、10月25日(水)から29日(日)にかけて実施される。ドイツ、オーストリア、チェコの3カ国を跨いで行われる同イベントはWRC初開催のターマック(舗装路)イベントだ。
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