カレンダーお馴染みのロードコース、ソノマ・レースウェイで開催された2024年NASCARカップシリーズ第16戦『トヨタ/セーブ・マート350』は、序盤の2ステージで8回のコーションが飛んだ波乱の展開を乗り越え、終盤トップ10圏内からの大逆転を決めたカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が今季3勝目をマーク。スタンディングで最上位に進出したばかりか、シーズン終盤のチャンピオンシップ進出権の“特例免除”も受け、タイトル戦線への完全復帰を果たしている。
約2週間前に世界3大レース『インディアナポリス500』との“ダブル”に初挑戦したラーソンは、シャーロット・モーター・スピードウェイで同日開催される『コカ・コーラ600』に向けヘリでの移動を済ませたが、双方ともにレース自体が悪天候によるディレイに見舞われたことで、ヘンドリックが準備していたシボレー・カマロZL1の5号車をドライブすることなく週末を終えていた。
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このカップシリーズ1戦欠場により、年間最後のチャンピオンシップ出場資格を維持するための“免除”が必要となったラーソンに対し、NASCARの運営側はチームからの要請も受け規約の書き換えを判断。先週末のワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイ(WWTR)出場時点では、最終的な判断が持ち越された“宙ぶらりん”な状態で戦ったラーソンだったが、晴れて出場ステータスを回復することとなった。
「免除にはあまり注意を払っていなかったが、自分としては間違いなくホッとしている」と、直前までに獲得したプレーオフポイント17が剥奪されたままだったラーソン。
「NASCAR側では多くのことが絡み、多くの議論があり、彼らはただ正しいことを言いたかっただけだと思う。そして、できればこの記者会見の後には免除について2度と話さなくて済むといいな」と、自身の素直な心境を明かす。
「みんなが想像するよりは、あまりストレスを感じていなかった。個人的にはNASCARと連絡を取っていなかったが、ジェフ・ゴードン、リック・ヘンドリックらは絶えず連絡を取り合っていたことも知っている。チームからのサポートに感謝し、彼らに任せていたんだ。何か言えることがあったかどうか本当にわからなかったし、僕は言葉が下手なこともあるから、もし連絡を取っていたら少しばかり墓穴を掘っていたかもしれないね」
■コーション続出の決勝。残り30周でラーソンが主役に
こうして始まったソノマの週末は、金曜フリー走行では王者ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)とタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が、続く土曜予選ではジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)とタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)が最上位に並び、フォードとトヨタが先行する展開となる。
迎えた決勝では、オープニング直後にこのトラックを“鬼門”とするデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)のエンジンから白煙が上がり、いきなりのコーションが発生。直近5戦でトップ5を続けてきた好調さをもってしても歯が立たず、ソノマでのリタイア記録を更新することに。
リスタート後も16周をリードしたポールウイナーのロガーノは、右フロントを破損しウォールの餌食となったギブスを起因としたコーションで早めのピットストップを選択。しかしこれが裏目に出て、19周目のマルチカーインシデントに巻き込まれダメージを負うことに。
同じくこれがカップのデビュー戦となったRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップのスター選手、キャメロン・ウォーターズ(RFKレーシング/フォード・マスタング)も、レディックが制したステージ1を経て、続く35周目のターン11にてインサイドから“ミサイル”に陥ったジョシュ・ベリー(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)に撃墜され、5台以上が絡んだ多重クラッシュの一員となる。
その後も前戦勝者オースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)とノア・グラグソン(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)、さらにマイケル・マクドウェル(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)らが絡むクラッシュを経て、ステージ2はクリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)の手に渡る。
こうして都合8回のイエローを経たレースは、この最終ステージで打って変わったかのように“ノーコーション”の展開となり、残り30周を切って周囲とは異なるタイミングのピット戦略を採用したラーソンが主役へと躍り出ることに。
残り10周で前方に立ち塞がったのは、ステージ2覇者のブッシャーと序盤でバトルの余波からコースオフを強いられていたマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)の2台に。
■上位勢が力尽きたことでマクドウェルが望外の2位
熾烈なサイド・バイ・サイドを展開し続けた首位争いを冷静に観察したラーソンは、続くラップで2台立て続けのオーバーテイクに成功。この決定的な動きで都合19周をリードした男が、カップ通算26勝目、ソノマでの2回目のトップチェッカーを受けた。
「僕らは戦略をすべて研究しているが、それは宿題をしているようなものなんだ。いつだって全力でラップを追うしかない」と語った勝者ラーソン。
「僕自身は『まぁ、彼らはたぶんもう1回ピットインしないといけないだろう』と踏んでいたが、追い抜かなければならないとわかって少し緊張した。タイヤ温度が上がりすぎるほど速いペースだったからね。充分なグリップがあったことに感謝しているし、クリーンな走りでスペースをくれたマーティン(・トゥルーエクスJr.)にも感謝している」
そのトゥルーエクスJr.と戦ったブッシャーは、最終ラップでタイヤのスローパンクチャーから失速も3位を死守。しかし当のトゥルーエクスJr.は、ホワイトフラッグでまさかの燃料切れに見舞われ、フィニッシュライン目前で力尽きると、ここで同じくレース中にコースオフを経験していたマクドウェルが望外の2位フィニッシュを記録する劇的な結末となった。
併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第14戦『ジップ・バイ・ナウ・ペイ・レター250』は、先週のポートランドでシリーズ初優勝を飾ったRSC“3冠”のシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)が、残り11周からのリスタートを制してトップを奪い、初優勝からの2週連続勝利を達成することに。
「なんてレースだったんだ。最後のリスタートでは全力を尽くし、1日中アップダウンの連続だった」と喜びを爆発させた“SVG”が、同郷の後輩たちがカップ戦に挑んだ週末に、面目躍如のドライビングを披露している。
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