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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第1回】2024年は想像以上にいいスタート、今季初入賞「結果は自然とついてくる」

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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第1回】2024年は想像以上にいいスタート、今季初入賞「結果は自然とついてくる」

 2024年シーズンで9年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。1月にチーム代表就任を発表して以降、新車発表にプレシーズンテスト、そしてシーズン開幕と怒涛の2カ月を過ごしてきた小松代表だが、チーム内はポジティブな雰囲気で想像以上にいいスタートを切れたという。

「想像以上にいいスタート」というのは、組織の話だけではない。開幕戦バーレーンGPではニコ・ヒュルケンベルグの予選Q3進出、そして第2戦サウジアラビアGPではケビン・マグヌッセンがチームプレーに徹したことでヒュルケンベルグが今季初入賞と、コース上でも結果が出始めている。一方で、ひとりがたくさんの仕事をこなさなければならないハースには大きなミスもあり、早急な再発防止策も求められた。そんな新車発表から第2戦サウジアラビGPまでの事情を小松代表が振り返ります。

チームワークで入賞したハース「ケビンの後退を受けて戦略を決定。皆で完璧な仕事を目指した」と小松代表/F1第2戦

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2024年F1第1戦バーレーンGP
#20 ケビン・マグヌッセン 予選15番手/決勝12位
#27 ニコ・ヒュルケンベルグ 予選10番手/決勝16位

2024年F1第2戦サウジアラビアGP
#20 ケビン・マグヌッセン 予選13番手/決勝12位
#27 ニコ・ヒュルケンベルグ 予選15番手/決勝10位

 チーム代表になり立場が変わった今シーズンですが、こうしてコラムを続けられることを嬉しく思います。新たな立場で書く以上、これまでのようにレース結果のみに触れるのでなく、もう少し大きなチーム全体のことや、さらにはF1全体のことにも触れていきたいと思っています。今年は2026年のレギュレーション変更に向けた準備や、新たなコンコルド協定の締結もあります。これにはチームそれぞれの思惑があり、裏でコース上と同じく、もしくはそれ以上の違う戦いがあります。みなさんにF1というスポーツ自体をもっと知ってもらい、より近くに感じていただけるようなコラムにしたいと思います。今シーズンもよろしくお願いします!

 さて、第2戦サウジアラビアGPでは今年の初ポイントを獲得できました。セーフティカー(SC)導入時に2台の戦略をわけて走らせたことがこのような結果に繋がりましたが、反省点もあったので、まずは当時の状況を振り返っていこうと思います。

 僕たちは予選でケビンが13番手、ニコが15番手という結果だったので、もしレース序盤にSCが出た場合は前を走っているクルマをピットに入れて、もう1台をステイアウトさせることを事前に決めていました。というのも、もし2台ともトップ10を走っていれば前のクルマと同じようにピットインしても入賞できますが、そうでなかった場合後ろのクルマはそこでポイントを獲れるチャンスがなくなってしまいます。だから7周目にSCが導入された際にケビンはピットイン、ニコはステイアウトというのは難しい判断ではありませんでした。

 SCラン終了後、ケビンはアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)との接触の件で10秒ペナルティを科され、その後角田裕毅(RB)をオーバーテイクしました。僕たちが反省しなければならなかったのは、ケビンが角田を抜いた際にコースオフしていたことをあの瞬間に把握していなかったことです。僕自身はちょうどニコのレースを見ていて、GPS上でケビンが角田を抜いたことは把握していましたが、コースオフの事実は把握していませんでした。

 そんなレベルなのか、と言われるかもしれませんが、残念ながらうちのチームは手薄で一人二役どころか三役こなさないといけないのが現状です。もしケビンがコースオフして抜いていたことを把握できていたら、すぐにケビンにはポジションを戻させて、もう一度抜き直せばすむことでした。これを見落してしまうチーム状況は改善しなければいけませんし、批判されても仕方ないです。

 この時、見かけ上はケビンは角田と10番手を争っていましたが、角田に対してペナルティ分の10秒差(この時点ですでにアルボンとの接触によるペナルティが出ていました)を築いて勝てるとは考えにくかったので、チームとして入賞の可能性はニコに絞られました。そうなれば戦略は明らかです。ケビンにはそのために必要なラップタイムを設定して後続を抑えるように指示を出しました。

 この後続を抑え切ったケビンの走り自体は素晴らしいものだったと評価しています。VF-24はストレートスピードが速いし、トラクションのかかりがいいという長所もあるので、それも活かして設定タイムで本当によく走ってくれました。ペナルティを2回受けた点は見逃せませんが、ニコのピットイン後にペースを元に戻して走れるようになってからは、すぐに1分32秒台で走っていましたしね。ニコより15周以上古いタイヤでも同じようなペースで走れるということを示せたのもよかったです。

 もちろんそれだけクルマが改善されているということの表れですし、セットアップもレースに向けてよくなっています。しかしケビンのコースオフを見逃したように、うちにはまだたくさんのことをこなせる能力はありません。追い求めるものを少なくしないと何もできなくなってしまうので、優先順位をつけて物事を進めています。それをみんなに浸透するように伝えていけば、何に集中しなければいけないのかわかるようになっていくはずです。それと並行して組織も徐々に補強してより多くのことに対応できるようにしていかなければいけませんね。

■「チームの能力をうまくまとめれば、自ずと結果はついてくる」

 1月10日にチーム代表就任を発表して以降、チームのみんなの反応がこれ以上ないほどポジティブで感謝しています。これからどうしていくかという方向性も基本的にはみんな合っていました。どんな役職の人と話してもフラストレーションの根本的な部分も似たようなもので、なんでこんなことが起こるのか、なんでこうしないのか、という「なんで?」が同じなので、僕が「これからはこうしよう」と言うとみんなが同意してくれてとても前向きにやれています。

 それはイタリアのファクトリーの人たちも同じでした。責めるつもりはありませんでしたが、僕は現場からクルマの悪い部分を指摘してきたので、僕のことをよく思っていない人もたくさんいるだろうと思っていましたが、実際にイタリアに行ってみるとみんな同じ方向を向いていて、いい驚きでしたね。イタリアのスタッフからは、これまで僕らがクルマの問題点を指摘しても自分たちのところまで伝わってこなかったので、なんの問題を解決したらいいのか正確にわからなかったとも聞きました。

 組織の変更点としては、まずテクニカルディレクターに今までチーフデザイナーをやっていたアンドレア・デ・ゾルドに就いてもらいました。彼は技術面でとても優れていますし、熱心で人の意見もよく聞きます。新たなチーフデザイナーや副チーフデザイナーも優秀なスタッフがいたので内部昇格という形にできました。また新たにクルマの開発に専念するパフォーマンスディレクターという役職を作り、空力の部署と現場を繋げるようにして、とにかくイギリスとイタリアの意思疎通を改善することに重点をおきました。このような変更をコース上での結果に反映するには時間がかかりますが、本当の意味でのチームになるための最初の一歩を踏み出せたかなという感じです。

 話は遡りますが、2カ月前のインタビューでも話したように、僕はプレシーズンテストの段階でまだうちのクルマは最下位だろうと考えていました。それは昨年のアメリカGPでアップデートを行うためにVF-24の開発が遅れたことなどが理由です。そのような厳しい想定のなかでもみんな前向きに仕事をしてきました。クルマの組み立ても上手くいき、シェイクダウンの日は予定通り朝9時に走り出せました。

 プレシーズンテストも3日間を通してほとんどクルマも壊れず、441周を走りました。1、2日目はタイム的には下位にいましたが、テストで何をやるかははっきりしていたので誰も気にしていません。これでもかというくらい目標を明確にして、昨年の弱点を克服するために、ガソリンを積んだ状態でタイヤがどうなるのかという部分に集中して取り組みました。その結果、ロングランだけをしていた段階ですでに他の2、3チームと戦えるのではないかという手応えを感じることもできました。

 実はテスト2日目が終わった段階で、3日目の終わりまでにできればいいと考えていた目標を達成できたんです。これもやるべきことに集中して、目的をはっきりとさせてぶれずにやれた結果ですね。あとは開幕戦に向けてクルマの信頼性が心配だったので、テスト3日目はプログラムを変えてレースシミュレーションを行い、とにかく距離を稼いで信頼性の確保に取り組みました。この3日間のテストを充実したものにすることができたので新チームとしての手応えはそれなりにありました。

 ただ僕のなかではまだまだ先は長いし、レースをやっている以上目指すところはもっと上です。今年の選手権の目標を聞かれて8位と答えましたが、8位というのはもちろん相手があってのこと。うちが昨年よりコンマ5秒速くなっても、他がコンマ6秒速くなっていたら最下位のままです。しかし、このチームの能力をうまくまとめれば、自ずと結果はついてくると考えていて、自分としてはそこには執着しないつもりです。第2戦を終えた段階では選手権6位と開幕前の想定を大きく上回る位置で戦えていますが、中団争いはこれからの開発競争でさらに拮抗していきます。うちはまだまだ小さいチームなので大変ですが、それでもこのチーム規模で出し得る最大の結果はまだ出せていないので、伸び代はあります。チームの規模自体についてもチームオーナーのジーン・ハースとも話をしています。今はとにかく、仕事の環境も非常に前向きで、勢いがありチームの雰囲気もいいのでこれを大事に前に進んでいきます。

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みんなのコメント

2件
  • ham********
    この人
    こんな平気で嘘を付く人なのね
    もっと残念に思う

    小松ハースは応援しない
    角田君頑張って
    必ずハースを倒して欲しい
  • mmc********
    角田ファンの戯言は気にしないで頑張って下さい
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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