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コロナ禍で戦う香港人レーサーに聞く「ここが好きだぜ日本」

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コロナ禍で戦う香港人レーサーに聞く「ここが好きだぜ日本」

 コロナ禍によって昨年(2020年)3月からずっと帰国できず、日本を拠点に活躍している香港人レーサーがいる。エヴァンゲリオンレーシングで活躍する25歳のショウン・トン(Shaun Thong)選手だ。2018年から本格開始した日本でのレース活動からふだんの生活、これまでのレース活動など、色々話を聞かせていただいた。

文/加藤久美子 写真/KC Thong、加藤博人

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■ショウン・トン選手とは?

 ショウン・トン選手は1995年香港生まれのレーシングドライバーである。2021シーズンはエヴァンゲリオンレーシングのドライバーとしてエヴァRT初号機 Audi R8 LMS GT4でスーパー耐久ST-Zクラスに参戦している。2021年5月21-23日に開催されたスーパー耐久シリーズ2021 第3戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レースでは、給油系のトラブルに長時間見舞われながらも完走を果たした。

富士山をバックに疾走するエヴァレーシングチームのアウディR8。富士スピードウェイには初号機カラーがよく似合う

 ショウン選手はレース好きの父親の影響で幼い頃からクルマに興味を持ち、レーサーになる夢をずっと持ち続ける一方で、「サメの生物学者」になりたいという夢もあったそうだ。

 13 歳からレーシングカートを始め、16 歳で最初のフォーミュラ ルノー レースに参加するようになると、すぐに表彰台を獲得。2013年イギリスの超名門大学「リバプール大学」に入学してからは学業優先で経営学と経済学を学びつつ、イギリスでのフォーミュラ・ルノー・シリーズへ参戦を開始した。

2016年7月、リバプール大学での卒業式の記念写真。レーシングドライバーには頭脳明晰な方が多いが、ショウン選手はそのなかでも飛び抜けているひとり

 大学在学中の2015年にはアウディ・スポーツ・アジアが、アジア初のヤング・ドライバー・デベロップメント・ドライバーとして彼を迎え入れアウディのレースに参戦するようになる。

 2018年からは日本でのレース活動も本格化し、スーパー耐久、スーパーGT300への参戦をスタート。2019年のスーパー耐久第6戦もてぎ5時間においてAudi R8 GT3で参戦し日本における初めての優勝を果たす。

2014年にF3オープン・ウィンター・シリーズに参加した際の写真。フランスのポール・リカールサーキットで開催されたF308のレースでルーキーながら優勝

 2020年はアジアンルマンの「2019-2020 パーソン・オブ・ザ・イヤー」に輝いた。

 また、2020年はチーム「HIRIX GOOD DAY RACING」(Mercedes-AMG GT3 Evo)で参戦したスーパー耐久において急なドライバー交代や出火トラブルなどを乗り越え、富士24時間で優勝。同じく菅生3時間で2位、もてぎ5時間で優勝を果たし、2020年の総合優勝に輝いた。

 輝かしい戦績でこれからの活躍が期待されるショウン・トン選手に日本での生活やレース活動についてインタビューに答えてもらった。

■好きな車は?日本ではどんな生活をしている?

――日本での生活はいかがですか?

「私は昨年(2020年)3月にスーパーGTのテストで日本に入ってから、そのまま香港に戻ることなく、7月以降のスーパーGTやスーパー耐久に参戦し、ずっと日本にいます。おかげで日本をたくさん楽しみ、多くの素晴らしい人々に出会うこともできました。日本は私にとって第二の故郷のようなものです。
 もちろん、香港を恋しく思うこともあります。会いたい友達もたくさんいますし、何より香港にいる家族と会いたいですね。

 日本での生活やレース活動はすべてがうまくいっています。一番難しいのは言葉の問題だと思いますが、どんどん日本語を覚えていっています。」

2013年10月、大学の休みを利用して中国の珠海で開催されたアジアン・ル・マンのLMP2カテゴリーに、フランスのオーク・レーシングから参戦し、優勝を果たした

――日本の食べ物は問題ないですか?

「はい! 日本食はとてもおいしいですね。食事は外食が多くて好きな食べ物はお寿司です!

 レストランを経営している友人を何人か知っており、彼らは素晴らしい料理を作ってくれます。」

――日本で日常的に乗っているクルマはありますか?

「日本では2013年モデルの『ミニクーパーJCW GP』を所有しています。カタログモデルのミニクーパーJCWをベースに専用チューニングが施されたもので世界2000台限定での販売でした。日本には200台が割り当てられたと聞いています。

 リアシートが取り外され補強パーツを装備しているので乗車定員は2名です。さらに100kgの軽量化が図られておりパフォーマンスが素晴らしい!ずっとあこがれのクルマだったので、今、日本で運転できているのが夢のようです。
 近年運転した日本車の中では、スバルインプレッサSTI Spec C RA-Rが一番好きですね。

 スポンサーさんの中に「おもしろレンタカー」という会社があり、日本や欧州のスポーツカーなどいろいろなクルマに乗ることができます。とっても楽しいです」

■日本でのレース活動について

――日本ではいつから、どのようなレースに参戦してきましたか?

「日本でのレースは2015年10月9~10日に富士スピードウェイで開催された『第10戦アウディR8 LMSカップ』 (プロクラス3位)が最初のエントリーになります。2016年7月1~3日に岡山国際サーキットで開催された『第6戦2016 GTアジアシリーズ』ではAudi R8 GT3で初勝利しました。

 2018年もブランパンGTアジアシリーズで富士と鈴鹿に参戦しています。また、2018年からはスーパー耐久への参戦も始めました。2019年はスーパー耐久に加えて、SUPER GT300にX Works Racingから日産エヴァンゲリオンカラーのNISMO GT3で参戦しています。」

――海外レース参戦の経験も豊富でいらっしゃいますが、日本のチームと海外のチームは何が違いますか?

「モータースポーツ界では、ほとんどの人が英語を話します。些細な違いだとは思いますが、それぞれの国で、それぞれのチームでレース車両のセッティングやレースに対する考え方が違います。私は現在、日本でレースをしているので、私の活動やチームの活動がうまくいくように、可能な限り最高の結果を得られるように最善を尽くしています。」

――数多くの日本のサーキットを走っていると思いますがどこが一番好きですか?

「スポーツランド菅生ですね。高低差があるところが好きです。 ひとつ間違えると壁に突っ込んでしまいそうな危険を感じるサーキットでもあります。 一般的に、ランオフがほとんどない高速サーキットが好きです。」

――今後の日本での目標は?

「日本での目標は、オートポリスと菅生で優勝することです。」

(※ショウン選手はすでに岡山(2016年GTアジア)、鈴鹿(2017年ブランパンGTアジア)、もてぎ(2019/2020S耐)、富士(2020年S耐総合優勝)で優勝しており、オートポリスと菅生ではまだ優勝経験がないから、ぜひそれを達成したい、という意味か)

2020年の富士スピードウェイ24時間耐久レースでの優勝写真。ショウン選手は右から2番目

■レーサーを目指すようになったのはいつから? お父様にも聞いてみた!

 アジアの若きドライバーとして世界で活躍するショウン選手。実はレースを始めたのはお父様の影響が大きかったそうだ。ということで、香港に住むショウン選手のお父様KC Thongさんにも話を聞いてみた。

――子どもの頃のショウン選手はどんな感じでしたか?

「私自身、若い頃からクルマやレースがとても好きでしたが、私の両親はとても保守的で、カートに乗ることも、道路で速く走ることも許してくれませんでした。若い頃にレースに出る機会はありませんでしたが、大学を卒業して香港に移り住み、仕事をするようになってからも、速い車やレースへの情熱は持ち続けていました。

 ショウンがまだ小さい頃からスポーツカーの集まりに連れて行った影響で、彼もクルマに興味を持つようになりました。12歳くらいのときには、気軽にカートに乗せたり、カークラブのサーキット走行会にも連れて行ったりするようになりました。」

――レーサーとしての才能には気づいていましたか?

「14-15歳でカートを始める一方で、いくつかのカーレース(フルシリーズではない)にも参加し、すぐに表彰台を獲得しました。この時、彼には運転の才能があることに気づいたのですが、この頃はまだ本人はプロのドライバーになるつもりはなかったようで、レースは趣味やスポーツとして楽しむ程度のものでした。私たちはこの頃から、彼が良いレーサーになれると思っていましたよ。

 その後、リバプール大学に4年間通いながらレースを続けるうちに、彼にもレーサーとしての成功に対して野心が芽生えてきたのでしょう。私たちはとてもリベラルな両親で、彼の野心を常にサポートしています。彼はクルマやモータースポーツに情熱を持っていますから、まだ若くて競争力があるうちはレースを続けるでしょうが、ある時にモータースポーツやクルマの業界でビジネスを見つけるかもしれません。」

10歳のショウン選手 幼い頃からレース好きのパパに連れられてサーキットへ足を運んでいた

――日本のモータースポーツをどう思われますか?

「日本にはアジアで最も確立されたモータースポーツ文化があり、モータースポーツを観戦する人々はとても温かく、これはとてもユニークなことです。日本のモータースポーツ環境はとてもプロフェッショナルです。2018年に初めて日本に行ってレースをしたときには、日本でレースをすることは長期的な計画ではありませんでしたが、2019年、2020年になってもチャンスをいただき、2020年のスーパー耐久では優勝することもできましたので、日本を拠点にしてオフシーズンには海外でレースをすることになりました。

 パンデミック(COVID-19)の影響で彼の計画は少し変わりましたが、2021年においても日本において信頼できるスポンサーと一緒にレースができることを喜んでいます。」

★     ★     ★

 2021年はEVAレーシングでスーパー耐久ST-Zクラスに参戦しているショウン選手。コロナが落ち着けば、「2021年後半には他のメーカーの中国レースやマカオグランプリにも参加できるかもしれません。」とのこと。活躍が楽しみだ!

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みんなのコメント

2件
  • この大変な時期を日本で過ごされて大変だと思います。日本のチーム関係者の方、SFLやFRJでチャンスを与えてあげてほしい。
  • 韓国や中国の話は要らん。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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