2022年7月、先代までのフォーマルなセダンから一変、クロスオーバーになって登場した新型クラウン。
そのデザイン、ボディ色、搭載されるパワートレーン、FFベースの4WDになったこと、今後追加される予定のセダンやSUVといった販売計画などすべてひっくるめて、見る者すべてを驚かせた一台だ。
「クラウンらしいかと言われると……」 新時代のクラウンは評論家たちの厳しい目に耐えられるのか? 新型をプロ3人が斬る
そんな話題に事欠かない新型クラウンを片岡英明氏、松田秀士氏、岡本幸一郎氏の3名はどう見るか!? システム出力=234psを誇る2.5L直4ハイブリッド搭載モデルをズバリ斬る!
※本稿は2022年10月のものです
文/片岡英明、松田秀士、岡本幸一郎、写真/TOYOTA、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年11月26日号
■「いくつか改善点はあるものの…」(片岡英明)
フロントには堂々と、クラウンのシンボルである王冠の立体エンブレムが備わる。「らしさ」がにじみ出る
太陽の下で見た新型クラウンは、グッドルッキングだった。
泥棒顔のツートーンはクセがあるが、モノトーンは街の景色に違和感なく溶け込む。ブランニューの「クロスオーバー」は乗り降りしやすいのが好印象だ。
ボンネットからの視界がよく、見切りもいい。後席も頭上、膝元ともに余裕を増し、居心地がよくなった。
インパネは乗り続けているクラウンユーザーにおもねったのか、冒険を避けた手堅いデザインだ。
メーターなどは文字が小さく、情報を読み取りにくい。
もうひとつ残念だったのは、インテリアの質感が「クラウン基準」に達していなかったこと。欧米のライバルたちは、もう少し見栄え、触感ともに上を行っているよね。
試乗したのは2.5Lの直列4気筒エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド車だ。
先代よりモーターの存在感が増し、アクセルを踏み込むとクルマがグッと前に出ていく。
DRSの効果も相まって走りは軽快だ
EV走行できる領域も広がっている。4気筒エンジンだが、車格にふさわしい静粛性を実現している点も高く評価したい。
19インチタイヤだったこともあり、燃費は20km/Lを超えた。プラットフォームは発展型のGA-Kだ。
トランクを独立させて剛性を高めているなど、シャシー性能が動力性能に優っている。
高速走行でも安定した走りを見せたが、フワッとした乗り味はクラウンらしいと感じさせた。路面からの影響を受けやすいのは要改良だが、乗り心地は合格点だ。
驚かされたのは、後輪操舵のDRSが上手に黒子に徹していること。レーンチェンジで軽やかな身のこなしを見せ、駐車もラクだった。次の一手が楽しみになるクラウンの登場である。
●片岡英明の採点表
・ハンドリング:8点
・加速性能:8点
・静粛性:9点
・内外装の質感:6点
・乗り心地:8点
・コストパフォーマンス:8点
(TEXT/片岡英明)
■「リアのマルチリンクサスのおかげで高い安定感を誇る!」(松田秀士)
シフトレバーには電動で制御するエレクトロシフトマチックを採用。小気味よくシフトできるとともに握った時のフィット感もいい
クロスオーバーモデルとしてデビューした新型クラウンの試乗会。時系列順に初試乗でのボクの評価を記そう。
まず起点のホテルを出発。20km/h前後の速度でエントランスから一般道に抜ける。この時、室内の静粛性、路面をなぞるような乗り心地。
確かにこれはクラウンだ! 静かで心地よい。速度は40km/h前後だがなかなかいい。
そのまま首都高に入る。ゲートを通過して本線に合流。突然、粗いサーフェース路面で室内がゴー、ザーというロードノイズに包まれる。
耳障りではないがこのクルマがクラウンだと思うとちょっとキツイ。同時に継ぎ目を通過する時の突き上げが少し気になる。
どうやら速度域によってロードノイズも乗り心地も評価が変わるようだ。
ホテルを出発した時から感じていたことだが、アクアなどにも採用されたバイポーラ式バッテリーと2.5Lハイブリッドのコラボレーションは非常によく、発進時から低速時、さらに高速でも力強い加速感だ。
帰路、首都高のちょっと速度を上げた曲がりくねった道。リアマルチリンクの性能がよろしく、落ち着いたなかにもコーナリングをコントロールするのが楽しい自分に気づく。
ボディ色はモノトーンなら違和感なく風景に溶け込む
結論、60km/h以下の総合評価は高い。
60km/hを超えるとロードノイズなどの室内騒音と乗り心地に難がある。ただし、うねりのある古びた路面での高速コーナリングは頼もしく安定している。
リアマルチリンクサスの効果だろう。あと内装、特にディスプレイ含めダッシュボードデザインをエクステリア同様にポップなものに仕上げてほしかった。
●松田秀士の採点表
・ハンドリング:8点
・加速性能:8点
・静粛性:6点
・内外装の質感:7点
・乗り心地:7点
・コストパフォーマンス:7点
(TEXT/松田秀士)
■「走りの質感は上々。ただクラウンらしいかと言われると……」(岡本幸一郎)
「全席特等席」を目指した車内空間。リフトアップしたことで外の見晴らしもよくなっている
新型は伝統の縦置きFRではなくなったわけだけど、いざ走ってみると駆動方式が云々というのはあまり気にならない仕上がりだった。
強力なモーターを駆使して後輪を駆動していて、それが乗り味において大きな意味を持っている。
「効いてるな」と感じるのは、滑りやすい路面での発進だけではない。
ターンインでの応答遅れのない素直な回頭性、コーナリングでのニュートラルなステア特性、ハンドルを戻した時の収まりのよさ、ごく普通に走っている時のリアの落ち着きにも、すべてリアモーターが寄与している。
リアの左右輪にそれぞれ最適な駆動力を与えているのだが、そのさじ加減も絶妙で、自然でなんの違和感もない。
おそらくこうできる見込みもあったから、クラウンをFFベースにしても大丈夫と開発陣も判断したのだろう。
音については、静粛性はまずまず。
エンジン音も気にならないようにかなり対策されているものの、やはり横置きの4気筒というのは、人によっては物足りなく感じられるはず。
2.5L直4ハイブリッドTHS-IIを搭載。22.4km/Lと抜群の低燃費のほか、力強い加速感も味わえる優秀なパワートレーンだ
かすかにしか聞こえないとはいえ、そのかすかが高級車にとっては重要だったりするし、横置きと縦置きだと伝わってくるエンジンの鼓動感というか振動の質感がやっぱり違うのは否めず。
欧州プレミアムブランドにも実はFFベースという超高級車(※VW系の一連の車種のことです)も存在するけど、エンジンは縦置きにしてマルチシリンダーを用意しているもんね。
ただ、これまでの日本車にはない雰囲気を持ったクルマだとはいい意味で思うけど、今のところ筆者にはこのクルマがクラウンには全然見えないんだよね……。
●岡本幸一郎の採点表
・ハンドリング:9点
・加速性能:7点
・静粛性:8点
・内外装の質感:7点
・乗り心地:8点
・コストパフォーマンス:7点
(TEXT/岡本幸一郎)
●トヨタ クラウンクロスオーバー(Gアドバンスドレザーパッケージ)主要諸元
・全長:4930mm
・全幅:1840mm
・全高:1540mm
・ホイールベース:2850mm
・車重:1790kg
・エンジン:2.5L直4DOHC+モーター
・最高出力:186ps/6000rpm
・最大トルク:22.5kgm/3600~5200rpm
・モーター:(F)119.6ps/20.6kgm(R)54.4ps/12.3kgm
・WLTCモード燃費:22.4km/L
・価格:570万円
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
平均年収約458万円… 1800万円の「レクサスの最上級SUV」は買えないのでしょうか? 4人だけが乗れる「LX EXECUTIVE」を愛車するために必要な年収とは
「EVは“電欠”が怖いし…」 実はガス欠より対策ラクかも? 新ビジネスになりそうな“もしものサービス”とは?
左折するのに右にハンドルを切るのは道交法違反!?「右振り左折」は安全面・マナー面的にも悪癖なので改めましょう
お金持ちがこぞって買うのも納得! 新型レクサスLMに乗ったらライバルなんて存在しないことがわかった
“これ本当にEVなの!?”ヒョンデの本気[IONIQ5 N]がマジで楽しい!! シフトアップまでできる!? 650馬力で超速加速を見せる
みんなのコメント
これは、書かれてもいるし、誰もが何となく思うことなんだろうけど
「いいクルマ」なのは間違いない。
けど、「クラウンと聞いて想像する程のいい車」
というレベルには
残念ながら達していない
という事でしょう。
そりゃそうだ、アバロンだもの。
果たして2年後に出る、カムリベースでない、セダンクラウンが
出来がどうかにかかってるでしょう。