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1970年代を代表するラリーカーとは 市販車ベースだからこそ手が届きそうな憧れがある

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1970年代を代表するラリーカーとは 市販車ベースだからこそ手が届きそうな憧れがある

戦いざまの美しさ 2スタイルのラリー車たち

 60年代から70年代にかけて、世界戦のフィールドで勝負にかけた走りを見せ、観衆たちに閃光を放っていた美しいラリーカーがあります。この時代のラリーカーは、大別するとスポーツカー・ルックな2ドアクーペと、ボクシーな4ドアセダンのふたつに分けられます。当時の世界ラリーの競技規則で、参戦できるマシンは市販のロードゴーイングカーをベースにしたグループ2(Gr.2)やGr.4だから当然と言えば当然なのですが、スタイルの明らかに異なる両者が同じ土俵の公道で戦っているのは、閃光ほとばしる戦いそのもの、ラリーの大きな魅力となっていたことは紛れもない事実でしょう。あなたの一押しはどのクルマですか?

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【Renault Alpine A110】

軽量なエアロボディでラリーで大活躍 

 ルノーをチューニングしてレースに出ていたジャン・レデールが興したアルピーヌは、モータースポーツに挑戦しながらメーカーとして成長、勢力を拡大してきました。リリースされた多くのスポーツモデルので最大のヒットとなったのがルノー8のコンポーネントを流用したA110でした。最初の市販モデルだったA106(ルノー4CVベース)はミッレ・ミリアなどのレースで活躍していました。

 これに対してA110は、ツール・ド・フランスなどのラリーを主戦場としていました。小排気量エンジンながら軽量なエアロボディを利して60年代から70年代のラリーで大活躍。世界ラリー選手権(WRC)が制定された73年にはジャン-クロード・アンドリューやジャン-リュック・テリエらのドライブにより全13戦中6勝を挙げ、栄えある初代チャンピオンに輝いています。

 外観の特徴は、2灯のドライビングランプを丸型2灯式ヘッドライトの内側=ボンネット先端に埋め込んだフロントビューです。これは68年モデルから採用されていますが、いかにもラリーカー的な雰囲気を醸し出しています。

 後継モデルのA310もラリーに投入されましたが、より豪華なGTカーへとコンセプトを変更していて、それが原因なのか、A110ほどには結果が残っていません。ボンネットを黒く塗ったA110はおそらくサファリ仕様に仕上げた個体。全身ブルーのモデルは一般的なラリー仕様と思われますが詳細は不明。ともに2015年のレトロ・モビルで撮影。後継モデルのA310はフランスのマノワール自動車博物館で撮影したロードゴーイングです。

【FIAT 131 Abarth Rally】

2ドア・オープンのスポーツカーから4ドアセダンに移行

 フランスにはルノーがあるが、フィアットにはイタリアがある!と形容されたイタリアの大コングロマリットとしても知られるトップメーカーのフィアットも、古くからラリーで活躍していました。

 WRCが始まった当時は2ドア・オープンの124 アバルト・ラリーが主戦マシンで、第7戦のポーランドではアキム・ウォルンボルトが優勝しています。

 ただし124 アバルト・ラリーがワークスチームの主戦を務める期間は意外に短く76年には後継の131アバルト・ラリーにその座を譲っています。

 ベースモデルの131は、何の変哲もない4ドアと2ドアのセダンでしたが、アバルトが手掛けたことで美しいラリーマシンに大変身していました。初期の活動では濃紺のボディにルーフとフェンダーラインから下をイエローに塗ったOLIOFIATカラーで参戦していて、それも存在感と迫力は充分でしたが、アリタリア航空のスポンサーカラーに塗られるとより美しさが増してきました。

 そして美しいマシンは速い、を実証。76年にデビューし1000湖ではマルク・アレンのドライブで初優勝を飾ると翌77年にはマニュファクチャラーチャンピオンに輝き78年には連覇。80年には3度目のワールドタイトルを獲得するとともに78年にはマルク・アレンが、80年にはワルター・ロールがドライバーチャンピオンに輝いています。ただし78年のタイトルはFIAカップで、アレンは後に引退するまでワールドタイトルとは無縁でした。

 ボンネットの黒い124はイタリア北部のルイジ・ボンファンティ-フィマール自動車博物館で。アリタリアカラーとOLIOFIATカラーの131は、ベルギーはアントワープ近郊のアバルト・ワークス・ミュージアムで撮影。

【Lancia Stratos】

FFの2ドアからミッドシップカーへの大変身

 まだラリーの世界選手権(WRC)が制定される前の60年代から、ランチアはラリーで活躍していました。当時の主戦マシンはフルビア・クーペ。

 新世代3姉妹の末っ子として1963年に登場した4ドアセダンのフルビアをベースにランチア・オリジナルの2ドアクーペを架装したもので、当初は1.2リッターエンジンを搭載してましたが、後には1.3リッター、1.6リッターと排気量を拡大。68年には最終進化形ともいうべき1.6HFが登場しています。

 グループ4として公認された1.6HFは、WRCの前身として70年から始まったインターナショナル・ラリー・メーカー選手権にフル参戦。常に上位を争い、72年には見事タイトルを獲得しています。

 ただし、この頃になるとライバルの競争力も高まってきて苦戦を強いられるようになったために、次期戦闘機を投入することになりました。それがストラトスです。

 フルビアでは1.6リッターのFFでしたが、ストラトスはフェラーリ・ディノの2.4リッターV6エンジンを車体中央に搭載するMR(ミッドシップの後輪駆動)へと転換。そしてそれ以上にスタイルの面でも、まるで複葉プロペラ機からジェット戦闘機にコンバートしたほどの大変身となりました。

 ホモロゲーション獲得に時間がかかり、引継ぎに少し手間取った感もあったストラトスでしたが、74年からはいよいよ本領を発揮。アルピーヌからタイトルを奪い返すと76年までWRCを3連覇しています。クラシカルなフルビア・クーペと、スーパーカー然としたストラトス。趣向は全く違うけれど、美しさ、格好良さでは何れも甲乙つけ難いと、思うのですが、如何でしょう?

【Porsche 911】

頑ななまでにリアエンジンを貫いた孤高のスポーツカー

 100年を超える自動車史の中でも傑出したエンジニアとして知られるフェルディナント・ポルシェ博士は、フォルクスワーゲンのタイプ1、いわゆる“ビートル”の生みの親。その息子であるフェリー・ポルシェはタイプ1をベースにスポーツカーのポルシェ356を誕生させます。さらにその息子、ポルシェ博士にとっては孫になるフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェは356を発展させた911を生み出しています。

 3代に渡って生み出されてきたそのいずれもが、リアにエンジンをマウントする基本レイアウトを踏襲しています。スポーツカーとしては、今でも孤高のパッケージを貫いているのです。

 そのルックスは、もはやスポーツカーのアイコンにまでなっています。そんなポルシェはレースだけでなくラリーでも活躍しています。レースにも通じる、舗装路が舞台のターマック・ラリーはもちろん、氷雪のモンテカルロでも、灼熱のサファリでも上位に名を連ねてきました。

 さらには、AWD(四輪駆動)を手に入れた959はパリ~ダカールのようなラリーレイドでも活躍しています。どんな背景にも映える1台です。

【Ford Escort  MarkII RS 2000】

何の変哲もないセダンが速いからカッコイイ!

 イギリス・フォードが開発した小型の大衆車がエスコート。一見すると何の変哲もないセダン……だから2ドアクーペというよりも2ドアセダンと呼ぶ方がしっくりするのですが、これが意外なくらいに速い。

 ツーリングカーレースでも活躍していましたが、特にラリーでの速さと強さは印象的でした。1960年代の終わりから70年代前半に活躍した初代モデル=マーク1にはホットモデルとして、当時のF2にも使用されたコスワースBDAエンジンを搭載したRS1600があり、70年代後半から80年代に活躍した2代目モデル=マーク2にはやはり新しいF2用として2リッターまでスケールアップされたコスワースBDAエンジンをを搭載したRS2000がラインナップされていました。

 ラリーでは、この両車が使用されたのですが、初代フライングフィンとして知られるティモ・マキネンやハンヌ・ミッコラといった名手のドライブでいくつもの優勝を奪っています。フィアットやランチアでエースとして活躍したマルク・アレンも、それ以前にエスコートでも優勝を記録しています。

 いずれにしても、何の変哲もないセダンが速いということは“羊の皮をかぶった狼”的な格好良さが感じられます。

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