新型ステップワゴンの最大の特徴は、現在のミニバンの主流である押し出し感の強いフロントマスク、いわゆる「オラオラ顔」を避けた点である。その理由について、開発責任者を務めるLPLシニアチーフエンジニアの蟻坂篤史氏にお話を伺った。
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【酔いにくさ追求とは?】新型ステップワゴン、初公開! 大胆すぎるほどシンプル…「AIR」と「SPADA」の2本立て
■今回、オラオラ顔をやらなかったのはホンダのポリシーですか?
いえ、私が(オラオラ顔が)とにかく嫌いだったんです(笑)。そういった“線”ではなく、“面”でデザインするようなクルマにしたかった。ですので、ああいったものはやらないと言って。すっきりとした顔立ちの「エアー」はやらなくても、「スパーダ」では(オラオラ顔を)やるんじゃないかという話もあるんですけれども、とにかく嫌だったんですよ。ああいった顔にしてしまった瞬間に、何か“ゴテゴテ勝負”になっていくような感じがして、それは違うよねって思いました。
オラオラ顔だとクルマが主張しすぎるというところがあります。新型ステップワゴンの狙いは、クルマが主役ではなくて、乗っている方々を主役にしたかったのです。ですので、そんなにワル目立ちするようなデザインには一切したくなかった。どこでもなじむデザインにしたかったんですね。山に行っても、海に行っても、冠婚葬祭などでホテルに行っても、どこに行っても景色に溶け込むような、まったく違和感がない、そういうデザインを。それが一番きれいかなと思います。
新型ステップワゴンはパッと見て普通にきれいに見えるデザインを意識しました。そもそもミニバンというのは、移動できる“箱”なんですよ。それもきれいで、どこでも似合うような箱を目指しました。最初にデザイナーには、「東京の表参道で、外国車に挟まれて縦列駐車していても恥ずかしくないクルマ。そういうクルマにしてほしい」と言ったんですね。都内だと、外国車ばかりという地域もあります。そういうところで、ワル目出ちすると逆に負けてしまいます。外国車、特にヨーロッパ車は面でデザインしていますから、だからこそ面で勝負できるようなクルマにしてほしいとデザイナーにはお願いしました。
■無駄こそが贅沢
あとは私がよく言うのは、いわゆる上に向いている面は“無駄”。その無駄こそが贅沢なんだといって、このクルマは窓の下の面をできるだけ上に向けるような感じにしてほしいということを(デザイナーに)言ったんですよ。あと、小さい面はごちゃごちゃしてくるので、絶対に作らないでほしいと。ですので、広い面、大きい面で構成してほしいと要望はしました。その結果、例えば、アウターハンドルが先代ですと窓下の面にあるんですが、その面に付いてしまうと“面が忙しく”なってしまう。なので、新型では下側に移動させたんですね。そういうところはいろいろと考えました。
■ずいぶん細かい点まで指示を出されたのですね?
基本的にデザイン好きなんです(笑)。じつは私、2005年以降、タイの研究所でずっと開発をやっていた(2011年からはアジア専用機種AMAZE、MOBILIO、BR-Vの開発責任者を歴任)のですが、タイは日本と違って、ほとんど自分たちで完結するんですよ。向こうのデザインはほとんど私が最終的に「これで行こう」と決めていたんですね。それを一応、日本に対しては報告するような形で。もちろん途中で、評価はやっていますが。というわけで、そもそもデザインが好きなんです。
だから、どうしたらきれいに見えるのかというのをずっと考えていました。新型ステップワゴンは、この形になるまでにかなり時間がかかりました。完成まで変な形になったりしたのですが、最後、やっと来たかという感じだったんですね。シンプルだからこそ、難しいんですよ。だから、ちょっとでもプロポーションがおかしくなった瞬間に、本当に変になってしまう。それをずっと、ここ変じゃないかとか、チェックし続けて(笑)。それでやっとここまで来た感じですね。
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いわば開発責任者の熱き思いが、新型ステップワゴンを至極シンプルな形に。それは昨今のホンダデザインの潮流ともズレていないのだった。
〈文=ドライバーWeb編集部〉
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みんなのコメント
そういう思考回路の人たちには到底受け入れられないだろうね
車のデザインは本来こうあるべきだと思うが