この記事をまとめると
■NAの5リッターV8を搭載するレクサスIS500 Fスポーツ・パフォーマンスが発売された
最新車だって20年経てば立派な旧車! 将来「名車として価値が出そう」なクルマ3選+α
■そのローンチを記念した限定モデル「First Edition」に中谷明彦さんが試乗
■下山テストコースで躾けられた足まわりのセッティングが絶妙でバランスがいい
ISが手に入れたのは481馬力のNAエンジン
レクサスのスポーツセダンとして人気の高いISに、トップパフォーマーとしてのスーパースポーツセダンとなるIS500が、いよいよ国内にも登場する運びとなった。レクサスはそれに先駆けてIS500 F スポーツ・パフォーマンスに「First Edition(ファーストエディション)」と銘打った500台の限定モデルを設定し、抽選予約を行った。おそらくすでに限定枠をはるかに超える予約が殺到していると思われるが、その貴重な1台に試乗することができた。
IS500は、すでに北米で先行販売されていて人気が高く、日本国内への導入を希望する声も多かったという。基本的にはIS350のシャシーを補強し、5リッターV8エンジン(2UR-GSE)を搭載。最高出力は481馬力を7100回転で発揮し、最大トルクも535Nmを4800回転で発生させている。481馬力と言うのはいまやこのクラスとしては目立った数値とはいえないが、5リッターという大排気量と自然吸気・ナチュラルアスピレーションエンジンで発生しているのが興味深い。
とはいいつつ、このエンジンはトヨタが得意とするD4-S、つまり筒内直接噴射とポート噴射を回転により使い分ける高効率エンジン吸気方式を採用しており、その噴き上がりレスポンスの良さをたびたび報告している。D4-SはIS350のV6エンジンに初搭載され、また現在はトヨタのGR86水平対向エンジンにも採用されていて定評がある。その最大の特徴は、低速域のトルクを筒内直接噴射で稼ぎだし、高速でのパワーはポート噴射によって導き出すということにある。これによりターボ過給を伴わなくても481馬力と535Nmという高出力を可能としているのだ。
V8エンジンをターボ過給するとすればツインターボ化が必要となり、それに伴いインタークーラーや補機類などの追加設置により重量が増え、スペース効率も悪化する。自然吸気としたことでISの比較的コンパクトなエンジンルームに5リッターの大型V8ユニットを搭載することが可能となったといえる。また、エンジンが縦置きである特性を生かし、エンジンルーム左右にはサスペンションダンパーユニットを支える大きな砲筒がスペースを占めている。
サスペンション形式はフロント・ダブルウイッシュボーンで、これもエンジンを縦置きにすることによって上下の長いサスペンションアーム配置が可能となったものだ。ワイドフェンダー化でホイールハウスが大きく取られ、前輪の転舵角が大きく取れ、最小回転半径は5.2mと小さくすることが可能となっている。
この大きなハンドルの切れ角は、たとえばドリフト走行でカウンターステアを当てる際に、より深いドリフトアングルが可能となり、このクルマがそうした走行場面においても、優れた特性であることを垣間見せている。サスペンションアームは上下ともアルミで構成されており、バネ下重量低減と高剛性化、そして振動の収れん性の良さなど、乗り心地や操縦安定性で寄与させているのである。
リヤアクスルにはトルセンLSDが装備され、マルチリンクのリヤサスペンションで支えている。タイヤはフロントに235/40R19、 リヤは265/35R19で、前後異サイズとしてハンドリング性能とパワーのバランスを高める狙いが受け取れる。とはいえ最近ではホンダ・シビックタイプRがFF・2リッター300馬力仕様でありながら、前後に265サイズのタイヤを装着していることを考えると、IS500ほどのパワーのあるクルマであれば、さらに幅広いタイヤを装着しても良いだろう。
ファーストエディションには、マットブラックにペイントされた特殊な専用デザインのBBS社製ホイールが装着されている。そして、そのホイールの中はフロントには356mmの大径鋳鉄製ディスクブレーキとブラックに塗装されてレクサスの文字が浮かび上がる専用ブレーキキャリパーを覗き見ることができる。
リヤブレーキは片持ちスライド式のディスクであるが、それでもディスク型は323mmと大径化されていることも見逃せない。試乗は一般道で行ったため、ドリフト走行するような限界域でのテストは行えないが、こうした性能の一端を垣間見ることができると思う。
室内に乗り込むと、ファーストエディションのオーナメントパッチが配置されたセンターコンソールが目に入る。見慣れたISのダッシュボードデザインながら、ところどころにスウェード皮革があしらわれたりステッチが縫い込まれたりして、特別な雰囲気を醸し出している。
メーターは8インチでLFAで採用されたようなギミックのある液晶表示だ。ドライブモードを選択することによってその表示パターンが切り替わる。また、ステアリングスポークの右側のスイッチで操作すると、メーターの中の表示アイテムを切り替えることも可能だ。
エンジンを始動すると、まずメーターの中にスタートアップの表示がアニメーションで展開され、少し間をおいてV8エンジンが始動する。エンジン音自体は決して派手なものではなく、かといってV6のような 軽々しいものでもない。
アクセルをブリッピングすれば素早く自然吸気らしい反応を見せるが、それでもパワーを予感させるようなサウンドが吐き出されるわけでもないのが意外だ。ドライブモードはエコ、スポーツ、スポーツ+と3モードが用意されており、停止状態でこれを切り替えてもエンジンサウンドが変化するようなことは起きなかった。
下山テストコースで熟成された足まわりが光る
走り始めてみると、やや着座姿勢に違和感があることが感じられた。足もとのペダルはフットレストとブレーキ、オルガン式のアクセルペダルといずれもアルミのカバーが装着されていてしっかりとした作りである。また、シート自体もスウェード調のスポーティな見栄えであしらわれ、身体のホールド性にも優れているものだ。ステアリングはテレスコピックとチルトを電動でアジャストでき、理想的なドライビングポジションを得るのに十分な機能を備えている。しかし、ポジションに若干の違和感を覚えるのは、ペダルが全体的にやや右方向にオフセットしているためだ。
ステアリングセンターも意識してみるといくぶん右側にオフセットしていることがわかった。これはシートの設置位置が車体中央に寄っていることが原因と考えられ、その要因のひとつには、北米での側面衝突時の乗員保護性能を高めるために、シートを車体中央寄りに配置したためではないかと推測する。
また、運動性能中心で見れば、Z軸まわりの旋回モーメントは乗員を車体中央に寄せることでより小さくすることも理論的にはあり得る。人によって印象は異なるだろうが、筆者自身のポジションから見るとやや極端に中央に寄りすぎているような感覚である。シフトレバーは、センターコンソールのドライバー寄りに配置され、前後にレバーを動かす通常のATのセレクトレバーである。そのトランスミッションはトルコン式ATの8速SPDSだが、全段でクラッチのロックアップ機能を備える非常にスポーティな設計要件を満たしているものだ。
アクセルを踏み込んで走り出すと、通常の舗装路では普通の乗用車としてなんら違和感なく、扱いにくさもなく走り始めることができる。これはすべてのドライブモードに共通していて、低速域でのドライバビリティは一般道を走っていてまったく問題を感じさせない。高速道路の流入などでアクセル全開加速を試す。
マニュアルシフトでは7000回転までエンジンが吹き上がれば1速は65km/h、2速にシフトアップすると7000回転手前で素手に時速100km/hに到達してしまう。一般道を走るうえでは2速までしか必要のないようなギヤ設定であるが、巡航燃費等を向上させるために場面場面で8速がフルに変速されているのがわかる。
変速のポジションはメーターに表示することができて、Dレンジにおいてもどのギヤポジションで走っているのかをドライバーは知ることができる。また、マニュアルモードにおいては、自らがその8速を使い分けることで効率の良いドライブが可能となっている。
ワインディングロードを走ると足まわりが非常によくしつけられていることがわかる。トヨタ自慢のパフォーマンスダンパーを前後に備え、またダンパーチューニングも相まって非常にしなやかでストローク感のあるサスペンションに仕上げられている。また、スポーツやスポーツ+を選択してもAVSによるダンパーの減衰力は若干硬さを増すものの、決してハードな足まわりという印象を受けるほどの硬い足ではない。この辺はライバルと目されるようなメルセデスAMC C 63やBMW M3、M5といったライバル車よりもソフトで快適だ。
コーナーにおいてもチューニングの良さは発揮され、とくにEPS(電動パワーステアリング)の味付けが絶妙で、路面コンディションやハンドル切れ角、タイヤのグリップレベルなどをドライバーが感じ易く設定されている。けして軽くもなく重すぎないステアフィールがこのクルマの素性の良さを物語っているといえるだろう。
こうしたシャシーやサスペンション、ステアリングまわりの味付けやチューニングは、愛知県の下山にあるトヨタの新しい「下山テストコース」で鍛え上げられたといわれている。これまでトヨタは独・ニュルブルクリンクを聖地としてクルマを鍛え上げることを掲げていたが、近年は下山テストコースで鍛え上げることを「F SPORT」モデルの特徴としていい表している。
下山テストコースは、僕自身は訪れたことはないが、独・ニュルブルクリンクまで出向かなくても、自社工場の近くでニュルへ行くのと同等の走り込みテストができる施設が作られたのだと伝え聞く。実際に、ニュルでテストするとなれば、テスト車両や物資、人材の輸送や現地での改良作業など膨大な準備が必要で、アジア圏諸国の自動車メーカーにとってニュル詣は簡単なことではない。
それだけに工場の近くに開発テストコースがあることは、開発部門にとっては極めて効率がよく実効性が高まる。そうした取り組みの成果がIS500に乗ると実感できるのである。
これまでニュルを聖地として開発されたモデルと比べても、サスペンションの動きがよく快適性に優れバランスよく仕上がっている。
さて、問題としては、こうした高性能車の性能を実際にどこで引き出すのか、ということだ。今回試せなかったドリフト走行でのカーコントロール性や最高速、最大加速やストッピングパワーの限界域を試すには、富士スピードウェイのような高速の専用サーキットで走らせるしかない。
IS500の動力性能なら富士スピードウェイのような高速サーキットでもスピードリミッターの解除が必要となるだろう。それが可能なアプリケーションを備えているか不明だが、それなしではサーキット走行でもストレスを感じながらドライブしなければならなくなってしまう。
日本全国各地において、IS500の性能を解き放つことができるようなコースの整備、スクールや走行会イベントの開催なども重要だ。GR86やGRスープラ、GRヤリスなど、高性能スポーツカーをラインアップするトヨタのGR/レクサスブランドにとって、今後そうした取り組みをさらに充実させていくことが課題となってくるだろう。
限定500台の抽選で幸運にもくじを引き当てたユーザーには、全国のサーキットを巡礼し、IS500の全性能を解き放ち、自らのドライビングスキル高めつつ一般道では模範ドライバーとなり、周囲の誰からも一目を置かれるクルマとドライバーになってもらいたいと思う。
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納期の遅さはそのうち解消できるのだろうか。