かつては売れていたのに今はファンに見放されたモデルも……
優れたパワートレインや燃費性能、個性的なデザインといった特徴がありつつも、残念ながら販売台数につながらないクルマも存在する。そんな販売台数だけで評価してはいけない魅力的なモデルを、モータージャーナリストの渡辺陽一郎さんが紹介する!
【月販数十台のクルマも】売れない車種を販売し続ける理由とは?
1)日産スカイライン
カルロス・ゴーン元会長の疑惑に包まれる日産は、かつてクルマ好きから高い支持を得ていた。その中核にあった人気車がスカイラインだ。とくに1972年に発売された4代目(通称ケンメリ)は、1973年に月販平均1万3133台に達した。今の小型/普通車でトップ水準のノートが月販平均1万台少々だから、ものすごい売れ行きであった。
この4代目に比べると現行型は超絶的に不人気だ(2017年の登録台数は1973年に比べると60分の1)。インフィニティブランドに属する海外向けの車種になり、ボディが大幅に拡大されて往年の機敏な印象は薄れた。
しかし、Lサイズセダンでは悪くない商品だ。基本的な味付けが北米向けとあって、操舵感には過敏に反応する玩具的な子どもっぽさを伴うが、走行安定性は阻害されにくい。持ち味の範囲にとどめた。後席を含めて居住性も満足できて、走行性能や装備を考えると価格は少し割安だ。日本向けではないが、スポーツセダンの楽しさを分かりやすく表現している。
2)日産フェアレディZ
スカイラインと並んで日産の走りを象徴するスポーツカーだ。1969年に発売された初代モデルは、日本と北米の両市場でヒット作になった。この後、後席を備えた2by2も加わってスポーツカーらしさが希薄になったが、2002年に発売された5代目の先代型では、2シーター専用車に戻している。純粋なスポーツカーに回帰した。
現行型の6代目ではホイールベース(前輪と後輪の間隔)が100mm短くなり、全幅は1800mmを超えてワイドだが、今の日本車では運転が楽しい部類に入る。外観は好みが分かれるが、スポーツカーらしさは濃厚だ。400~500万円の価格も、V型6気筒3.7リッターエンジンを搭載するスポーツカーでは割安な部類に入る。
3)ホンダ・アコード
アコードの初代モデルは、コンパクトなシビックに続くミドルサイズカーとして1976年に発売された。
1985年登場の3代目は、電動で開閉するリトラクタブルヘッドライトを備え、端正な外観と広く快適な居住空間が特徴だった。今のクルマと違って視界も良いから、5ナンバーサイズと相まって運転しやすい。3ドアハッチバックのエアロデッキも注目された。
ところが1993年に発売された5代目は、自動車税制の改訂を受けて3ナンバー車になり、北米向けのボディを国内市場に流用したから人気を下げた。
1997年には6代目のセダンを5ナンバーサイズに戻したが、もはや人気は回復せず、7代目は再び3ナンバー車になる。しかも国内版アコードはアキュラTSXとボディを共通化したから、スポーティな代わりに後席が狭い。8代目も同じ路線だが、現行型になる2013年登場の9代目は、海外のアコードと共通化されて再び居住空間を広げた。そしてハイブリッド専用車になっている。まさに行き当たりバッタリの紆余曲折だ。現行型はボディが大柄で日本向けではないが、前後席ともに広く、国産セダンではトップ水準の居住性を備える。
しかもスポーツハイブリッドi-MMDは、高速巡航時を除くと駆動をモーターが受け持つ。加速が滑らかで余裕があり、ハイブリッドLXのJC08モード燃費は31.6km/Lに達する。効率がきわめて高い。
4)スバル・レガシィ
1989年に発売された初代レガシィは、独自の水平対向エンジンと4WDシステムによってヒット作になった。ボディタイプはツーリングワゴン、セダン(3代目以降の名称はB4)、2代目以降はSUV風のアウトバック(国内ではグランドワゴンとかランカスターと呼ばれた時期もある)をそろえた。
6代目の現行型ではボディが大幅に拡大。ツーリングワゴンは廃止となり、実質的に後継のレヴォーグへ切り替わった。それでもアウトバックとB4は、前後席ともに居住性がとても快適だ。質感も満足できて、アウトバックは荷室も広い。
水平対向4気筒2.5リッターエンジンの性能は平凡だが、運転がしやすく、4WDの併用で走行安定性も優れている。価格は割安で、頻繁に長距離を移動するユーザーには選ぶ価値が高い。
5)マツダ・ロードスター
初代モデルは、1989年に1.6リッターエンジンを積んだ後輪駆動のコンパクトなスポーツカーとして発売されて大ヒットした。この後、1998年発売の2代目では1.8リッターエンジンを加え、2005年の3代目では2リッターを搭載する3ナンバー車になった。
しかし2015年発売の4代目になると、ソフトトップの排気量を1.5リッターに抑えて、機敏な運転感覚を取り戻した。ドライバーと車両が一体になった走る楽しさを満喫できる。
また電動開閉式のハードトップを備えたRFは2リッターエンジンを搭載しており、ソフトトップとは異なるオシャレで上質な運転感覚が魅力だ。全長が4mを下まわる後輪駆動のスポーツカーは、世界的に見ても貴重な存在になっている。
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