昭和は遠くなりにけり・・・か。以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「トヨタ マークII HTグランデ ツインカム24」だ。
トヨタ マークII HTグランデ ツインカム24(GX71型):昭和59年(1984年)8月発売
1980年代に入ってジワジワと広がりを見せ始めた日本のアッパーミドルサルーン人気は、1984年(昭和59年)8月にGX71系マークIIが登場して完全に火がついた。ホリデーオート誌がこれを「ハイソカー」と名づけ、日本中がハイソカーブームの波に飲み込まれていく。中心はマークII HTだったが、チェイサー/クレスタや、クラウン、ソアラも巻き込んだ一大ムーブメントとなり、道路や駐車場を白いハイソカーが埋め尽くす現象が各地で目にされる事態となった。
【くるま問答】アイドリングストップ機能はよいことばかりではない。OFFスイッチはいつ使う?
マークII HTグランデ系の人気の源は、4ドアHTのエレガントなスタイリング、余裕のある快適なキャビン、そして見劣りしない動力性能の3つを併せ持っていたことにある。
外観では、大型フォグランプ一体式ヘッドランプを備える、面一でスラントしたフロントマスクや、リアクオーターに配した艶やかなクリスタルピラー(アクリル製ガーニッシュ)で個性を表現し、前後スポイラーをグランデ ツインカム24にオプション設定してスポーティ感を演出するなど、エレガントだけにとどまらない存在感を主張したのが当時の若者の琴線に触れた。
内装は入念な手作り感を表現するとともに、豪華さと機能性をミックスしたルーズクッションタイプ・ボタン引きのスーパーラグジュアリーシートを採用。コンソールボックスリッドをファブリック張りにするこだわりも見せた。空調も、温度とともに吹き出しモードも自動コントロールするワンタッチフルオートエアコンで理想的な状態を作り出す。さらにグランデ ツインカム24にはエレクトロニックディスプレイメーター車を設定して先進性もアピールするなど、まさに至れり尽くせり。シートに座った瞬間から大きな満足が得られる演出はトヨタの真骨頂と言えた。
動力性能ではM-TEU型を積むグランデターボのほうが上だが、マークIIオーナーの多くは絶対速度にこだわらなかった。そのためターボよりも下からトルクがあり、7600rpmのレッドゾーンまで一気に吹け上がる1G-GEU型の洗練度が評価された。1G-GEU型自体は先代(GX61系)からのキャリーオーバーだが、吸気制御機構のT-VIS(トヨタ・バリアブル・インダクション・システム)やエンジン総合制御システムのT.C.C.S.(トヨタ・コンピュータ・コントロールド・システム)を搭載した先進エンジンとして1982年度の日本機会学界賞・技術賞を受賞した名機だから、基本性能の高さは折り紙つき。GX71ではEFIを吸入空気量を圧力センサーで精密に測定するEFI-Dに換えて効率アップを図っている。
グランデ ツインカム24のサスペンションには、悪路での乗り心地とコーナーでの軽快なフットワークを両立させるためダンパー減衰力を低・中・高に変化させる新TEMS(トヨタ・エレクトロニック・モデュレーテッド・サスペンション)が組み込まれている。モードはノーマル/スポーツと、それぞれにオートがあり、とくにノーマル・オートでは80km/hに達すると減衰力が「中」になり、60km/hに落ちると減衰力が「低」に戻る車速感応機能が話題となっている。さらにスポーツモードでの切れの良い走りを支援する4輪ベンチレーテッドディスクブレーキ+リアスタビライザーを標準装備。オプションで電子制御4輪ESC(AT車)、LSD、205/60R15ラジアルタイヤを用意して、スポーティサルーンとしても高い実力を発揮した。
GX71型マークIIは生産終了までに66万台以上を販売し、1988年8月にGX80型にバトンタッチしていく。
トヨタ マークII HTグランデ ツインカム24 主要諸元
●全長×全幅×全高:4690×1690×1385mm
●ホイールベース:2660mm
●重量:1300kg
●エンジン型式・種類:1G-GEU型・直6 DOHC
●排気量:1988cc
●最高出力:160ps/6400rpm
●最大トルク:18.5kgm/5200rpm
●トランスミッション:4速AT
●タイヤサイズ:195/70SR14
●価格:261万2000円(デジタルメーター車)
[ アルバム : マークII HTグランデ ツインカム24 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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