2021年F1第10戦イギリスGPの決勝レースは、マックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンの接触により開始早々に赤旗中断に。再開後はシャルル・ルクレールが隊列を率いたが、エンジントラブルを抱えての走行となった。イギリスGP決勝の様子を無線とともに振り返る。
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【F1第10戦無線レビュー(1)】接触後、レッドブル代表がレースディレクターへ猛抗議「適切な判断をしてくれるよね」
再スタートで首位をキープしたシャルル・ルクレール(フェラーリ)だったが、数周後にトラブルに見舞われる。
ルクレール:エンジンカットだ。エンジンが止まった。どうなっているんだ?
マルコス・パドロス:大丈夫だ。そのまま行け
チーム側は当初、大したトラブルではないと思っていたようだ。
ルクレール:どうしたらいい?
パドロス:デフォルトにして、アルファ5、6をオンにしろ。それで元に戻る
フェラーリの無線を聞いたメルセデスのピーター・ボニントンが、ルイス・ハミルトンにルクレールとの差を詰めろと指示を出した。
ボノ:ルクレールがエンジンカットと言っている。差を詰めるんだ
ハミルトン:メニューだ。メニューを言ってくれ!
ボノ:メニューダッシュ、ポジション5だ
ペース上げたハミルトンがルクレールに迫る。しかしトラブルは、一向に改善されない。
ルクレール:おい! まただ。またエンジンカットだ!
パドロス:今、解決している。直るはずだ
その1周後。
パドロス:問題解決だ。ハミルトンにはブリスターが出始めている
確かにハミルトンは左フロントタイヤにブリスターが出ていたが、17周目には1秒以内まで差を縮めた。
パドロス:ハミルトンがDRSに入った。タイヤはまだ行ける。プランBだ
ルクレール:わかった
ハミルトンよりピットインを遅らせ、首位を死守する作戦だった。
20周目を過ぎたところで、7番手を走っていたランス・ストロール(アストンマーティン)が突然コントロールを失いかけた。
ストロール:何かが起きている。チェックしてくれ!
ブラッド・ジョイス:タイヤはまったく問題ない
ストロール:ヘリコプターが低く飛びすぎてる! そのせいなんじゃないか?
ヘリコプターの巻き起こす乱流で挙動を乱したと言いたかったのだろう。実際、このタイミングでマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)を乗せたヘリコプターが、50km北西のコベントリー大学病院に向かって飛び立ったところだった。
一方、ルクレールのエンジントラブルは、まだ完全には直っていなかった。
パドロス:チャールズ、エンジンカットが起きたら、ギアを上げるな
ハードタイヤでピットからスタートしたセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)を除く全ドライバーが、スタート時にミディアムタイヤを選択。18周目のジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)、キミ・ライコネン(アルファロメオ)らを皮切りに、続々とピットイン。ハードタイヤに履き替えていった。しかしイギリスらしからぬ快晴と猛暑で、路面温度は依然として50度を切ることはなく、多くのドライバーがタイヤ性能の劣化に苦しみ出した。
34周目。4番手を走るランド・ノリス(マクラーレン)に、担当エンジニアのウィル・ジョゼフが情報を伝えた。
ジョゼフ:ボッタスは左フロントに大きなブリスターができている。終盤にもう1回入るかもしれない
2番手を走るボッタスにはまもなく、ハミルトンに順位を譲れという指示が出た。
リカルド・ムスコーニ:チームオーダーだ。ルイスとレースするな
その直後、17番手を走るセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)にピットインの指示が出て、40周目にピットへ向かった。
クリス・クローニン:問題が出た。リタイアだ
一方、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)を抑えて11番手を走っていたライコネンは、燃費がギリギリだった。
シモン・ショータン(→ライコネン):角田とバトルしてるのはわかっているが、燃費が厳しい。これ以上は何もできない
それでもライコネンは11番手を死守していたが、終盤47周目に角田をかわして12番手に上がったペレスに抜かれる際に接触、16番手まで後退してしまった。
すでにボッタスにはチームオーダーが出ていたが、ハミルトンはボッタス以上にブリスターに苦しみ、なかなか抜き切れない。
ハミルトン:バルテリについてくのは大変だ
ムスコーニ(→ボッタス):この周回のターン15で順位を入れ替える
40周目、ボッタスに譲られて2番手に浮上したハミルトンは、さっきまでの悲観的な言葉がウソのように、ファステストラップを連発してルクレールを猛追した。ルクレールも必死に逃げる。
パドロス:レースモードだ。最後までフルプッシュで行け
メルセデス陣営としては、ボッタスもハミルトンに続いて、1-2フィニッシュを成し遂げたいところだ。
ムスコーニ:ルイスはレース終了前にルクレールに追いつく。あとに続くんだ
40周目、42周目、そして44、45周目と立て続けにファステストラップを出し続けるハミルトン。
ボノ:またファステストだ
ハミルトン:捕まえられるかな
ボノ:できるとも
そしてチェッカー2周前の50周目、フェルスタッペンと接触事故を起こした同じターン9で、ルクレールを抜き去っていった。一方レッドブル陣営は、10番手まで上がっていたペレスにピットインの指示を出した。ハミルトンからファステストラップの1ポイントを奪うためだった。
ペレスは見事に最速タイムを叩き出したが、16位でチェッカー。彼自身はファステストポイントは得られず、ノーポイントに終わった。イギリスGPでレッドブル・ホンダが獲得したポイントは、スプリント予選でフェルスタッペンが獲得した3ポイントのみだった。
クリスチャン・ホーナー:このファステストは、タイトル争いにすごく重要だった。厳しいレースだったけど、このファステストには感謝しているよ、セルジオ
ペレス:本当に、なんて1日だったんだ。次の週末は、もっと強くなって戻ってこよう
タイトル争いにおいてフェルスタッペンはハミルトンに8ポイント差まで迫られ、レッドブルとメルセデスの差もわずか4ポイントに縮まった。
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