マシンを一新して望んだ斎藤久史選手が初優勝
3月最終週の週末となる3月23日~24日の2日間、栃木県日光サーキットを舞台に、2シーズン目となる「ドリフトキングダム」が開幕。「ドリフトキングダム」は、2011年から7年間開催されてきた「ドリフトマッスル」が生まれ変わってスタートしたドリフト競技イベント。ドリキンこと元レーシングドライバー・土屋圭市さんが「世界でわかりやすいネーミング」ということで名付け親となって誕生した。今シーズンの初戦を制したのは斎藤久史選手。昨年の開幕戦4位が最高位で昨年ランキング16位から一気にジャンプアップしてきた。
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競技は審査員によるポイント制。ドリキン土屋圭市審判員長と、現役スーパーGTドライバーである松田次生選手が審査員と加入していた。2年目の今シーズンは、さらに今村陽一審査員が合流。D1グランプリ初年度から参戦をしており、過去に4度の優勝経験を持つ。ドリフト界では知らない人はいないという有名人だ。第1戦は土屋圭市審判員長とのツインで審査となる。ちなみに、松田次生審査員はドイツ・ニュルブルクリンクでの走行があり欠席となっている。
審査のポイントは「かっこいいドリフトを評価する」がベースとなる。ドリフトキングダムでは「クラブマンクラス」と「プロクラス」という名称の2クラス制となるが、今シーズンは、レギュレーションでプロクラスではFHR(頭頚部保護)システムの装着が義務付けられた。いわゆるHANS(ハンス=Head and Neck Supportの略。事故などで頭が前方向に伸びるのを規制し首を保護するデバイス)類だ。
これに対して土屋審判員長は「厳しい予算の中でキングダムに出場している選手たちにとって突然10万円もするハンスをつけないと出場できないっていうのはちょっと酷だと思うよ。それに、ドリフト競技って横とか後ろを見ながら走る競技だからその(首を回す)動きを制限するデバイスってのもどうかと思う。JAFやFIAは、もっとその競技の中身を見て判断をしてほしいと思うよ。『お金はないけど腕一本でやっていくぜ』って若者たちにこのレギュレーションを出したことを心苦しく思っている」と2つの点について疑問を投げかける。
今シーズンの開幕となる日光戦は、寒さの厳しい中での戦いとなった。土曜日は小雪が舞うような状況だったが、日曜日は、冷え込みは厳しく朝から風が強いものの、快晴の一日となった。同じ週末に東京・お台場ではD1GPのキックオフイベントと開催が被ってしまったため、出走台数はプロクラスが11台、クラブマンクラスが22台という、近年まれにみる出走台数の少ない開幕となってしまった。
3月23日(土)に開催となったクラブマンクラスは、単走予選トップ通過の柳下浩一選手(#39 QS・3UPスカイライン・VL)と、花渕大樹選手(#6 AmbitiousマークII)の決勝戦となった。この勝負を制したのは、柳下選手。開幕戦での優勝を獲得した。3位には谷岡昭夫選手(#12Mon To Blan)が入った。
そして24日(日)のプロクラス。ドリフトキングダム初代チャンピオンの平岡英郎選手や昨年開幕2連勝を挙げた箕輪慎治選手らが不在という状況であったものの、春休みということもあって会場には大勢の観戦者と子どもたちも来場。非常に多くのドリフトファンが集まった。
開幕戦の舞台である日光サーキットは、全長1.1km、12個のコーナーを持つミニ・サーキット。ドリフトキングダムでは、バックストレートをスタート地点とし、10コーナーを経て、11コーナーからドリフトを開始しホームストレートで進入速度を計測。4コーナーを抜けるまでが審査区間となる。審査員席は1コーナーの外側に設けられるが、死角となる最終コーナー側にはカメラも設置し、審査区間のすべての様子がチェックされる。
2本の練習走行セッションを経てスタートした予選単走。通常は予選単走の結果で上位16台が決勝追走に進出するわけだが、今回はエントリー台数が16台に満たないということで、イレギュラーな方式となった。予選上位5台は1回戦不戦勝となる。
安定の速さを見せる川井謙太郎選手(#109 AUTO-TEC チェイサー/JZX100)は、2本ともに好成績を残したものの、区間タイムをダントツに速い斎藤久史選手(#134 mature with 宮精密)が2本目にしっかりまとめて川井選手の点数を上回りトップ通過。予選単走3番手は兼森啓太朗選手(#223 オートテックチェイサー/JZX100)、そして石塚進一選手(#11 オートガレージS R33/R33)がこれに続き、昨年のチャンピオンである益山 航選手(#530 3代目マスビア/S14)までがトップ5入り、この不戦勝の権利を獲得。
午後2時20分から11台による決勝追走はスタートとなった。まずはベスト8進出に向けた3つの追走からスタート。ほぼ順当にベスト8が決まり、引き続いてベスト4を決める2回戦。ここでは、今季ボディカラーをVITOURカラーに変更して参戦する前田 翼選手(#74 VITOURオディエイティー/RPS13)が予選2番手通過の川井選手と当たる。一昨年のドリフトマッスルでチャンピオンを獲得し昨シーズンランキング5位の前田選手と昨年ランキング3位の川井選手の追走は、この日唯一のサドンデスとなった。が、それでも勝負がつかず、結果的に川井選手が2回戦を勝ち残った。
結果ベスト4に残ったのは、予選上位通過した斎藤、益山、川井の各選手と、予選でわずかに及ばず1回戦から勝ち上がってきた長瀬幸治選手(#54 HIRANO TIRE/JZX100)という4名となった。
この日、明らかに乗れている斎藤選手は準決勝で、昨年ランキング2位の益山選手を先行・後追いともに見事な追走でこれを破る。そして4ドア対決となった長瀬・川井の準決勝では、審判員席前で「パキッ」と角度をつけて魅せる長瀬と、進入速度が最も速いスピードの川井というスタイルの違う2人の走りでの追走だったが、詰めきることができなかった川井選手が敗退し、結果斎藤久史選手と長瀬幸治選手という、ともに初決勝戦進出の2名による対決となった。
最後の追走でも波に乗っている斎藤選手は、1本目の先行ではしっかり単走の走りを見せたのに対し、長瀬選手はスピードに乗り切れず、ドリフトも小さくなってしまう。そして入れ替えての2本目は先行する長瀬選手に斎藤がしっかり張り付いて走りきる。斎藤選手が初優勝で開幕戦を制することとなった。3位決定戦では、益山・川井選手当たり、益山選手がきれいな追走を見せ3位に入った。
優勝した斎藤久史選手は、一昨年当時のマッスルクラス(現クラブマンクラス)からプロクラスへステップアップした選手。昨年の開幕戦4位が最高位で昨年ランキング16位。「どうしても追走が苦手だったので、練習を真剣にやってきました。マシンもエンジンを変えレスポンスの良い乗りやすいクルマに仕上がっていたので、勢いで優勝することができました」とコメント。
2位に入った長瀬幸治選手は、今シーズン、「チームイトウオート」から「HIRANO TIRE」へと移籍してキングダム継続参戦することとなった(昨年のランキングは14位)。「180度環境が変わりました。自分のことだけでなくまわりのことも配慮しなければならない大会となって大変ではあります。ただ契約していただいた2年のうちで優勝します、と宣言していますから、シリーズ前半にいいところにつけていられればモチベーション高くやっていくことができると思うので、今日は良かったと思います」とコメントしてくれた。
この日、パドックでは来場者を対象としたイベントも盛り沢山で、チェリオの「ライフガード無料サンプリング」、「優勝者当てコンテスト」、さらには来場した子どもたちを対象とした「コースde宝さがし」といった催しも行われた。
土屋審判員長は「今日の斎藤選手はまとまってた。冷静だったし、いい走りだった」とコメント。今回キングダム初審査となった今村審判員も「初めてじっくり見させていただきました。個性のあるドライバーがたくさんいましたし、他のドリフト競技でも通用するドライバーもいて今後が楽しみなシリーズだと実感しました」とコメントしてくれた。ドリフトキングダム、続く第2戦は、5月11日(土)~12日(日)の2日間、新潟県にある日本海間瀬サーキットで開催となる。
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