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なぜヴェルファイアに「クラウン」名称採用? ミニバン・SUVに王冠装着の理由 中国でも憧れの存在か

掲載 更新 35
なぜヴェルファイアに「クラウン」名称採用? ミニバン・SUVに王冠装着の理由 中国でも憧れの存在か

■中国におけるクラウンの輸入は1964年から

 2021年4月23日に一般公開が始まった上海モーターショーで、ミニバンのトヨタ「ヴェルファイア」とSUVのトヨタ「クルーガー」の2台にそれぞれ「クラウン(中国名:皇冠)」の車名が冠されたニューモデルが登場しました。
 
 日本では、「クラウン=セダン」というイメージが強いですが、なぜ中国ではSUVやミニバンにクラウンを冠することになったのでしょうか。そして、中国の人々はどのような印象を持ったのでしょうか。

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 1955年から生産が始まったクラウンは、同一の車名で生産され続ける乗用車として長い歴史を持つ日本車です。

 中国におけるクラウン販売の歴史は意外と長く、最初のクラウン(左ハンドルの2代目40型)が輸入されたのは1964年です。

 なお、同じ年にフィンランドなどヨーロッパのいくつかの国もクラウンの輸入を開始しています。

 当初、中国ではおもにVIPや政府機関向けのクルマとして販売がおこなわれてきましたが、7代目となる120型クラウン以降、1980年代から1990年にかけて国内の公用車やタクシーに用いられて人気を博しました。

 香港においても同様で、一般用のみならず香港を象徴する存在でもある「香港タクシー(香港的士)」として長きにわたり採用され続けた代表的な日本車として認識されています。

 一時期、中国では輸入販売を停止していましたが、2003年からは第一汽車とトヨタの合弁会社である「一汽トヨタ」が中国国内で生産を始め、再び中国本土に王冠のエンブレムが舞い戻ることになりました。

 とくに人気を博した12代目クラウン(180系・日本では通称:ゼロクラ)は中型・大型高級車の代表的なクルマとなり、中国市場のアウディ「A6L」、メルセデス・ベンツ「Eシリーズ」、BMW「5シリーズ」と並ぶ高級車として熱烈な支持を得ていました。

 しかし、2020年4月におよそ17年間にわたる生産・販売の歴史は終了。日本と同様、高級セダンの需要が「アルファード」などのミニバンにとって代わられたことや、レクサスの圧倒的人気に押されて高級車としてのイメージが後退していったことも一因とされています。

 中国で自動車販売を仕事とするA氏は、クラウンのイメージをこう語ります。

「個人的にクラウンに対してのイメージは『トヨタの昔の高級車?』って感じですね。

 レクサスが中国で販売されるようになってから、クラウンの存在感がどんどん薄くなってきて、今では中途半端な感じもあります。

 パトカーやタクシー、会社役員車というイメージが強く、おじいちゃん専用車というイメージもあります。ただ、40歳代以上の人には今も人気があると思いますよ」

※ ※ ※

 では、なぜミニバンのヴェルファイアとSUVのクルーガーでクラウンブランドが復活することになったのでしょうか。

 上海モーターショー2021で、一汽トヨタは次のように述べています。

「クラウンは、1964年の広東交易会でのデビュー以来『国賓車』として広東交易会の一部となっており、改革開放がおこなわれた1980年代にはクラウンは中国の人々が望む高級車となりました。

 当時、クラウン富裕層の象徴であり、多くの人が憧れていました。

 今回、クラウンブランドを復活することで、一汽トヨタの『ブランドアップ』を図ります。

 単体モデルからクラウンブランドのシリーズに変わり、これまでのクラウンで培われたクラフトマンシップや品質と静かな快適性を継承する一方で、新しいSUVやMPV(ミニバン)の導入により、際立ったイメージを与えました

 これにより、一汽トヨタのハイエンド・フラッグシップ・ブランドであるクラウンは、一汽トヨタのブランドイメージに新たな高みをもたらし、ブランド力を向上させることになります。

 今回、一汽トヨタのハイエンド・フラッグシップMPVとハイエンド・フラッグシップSUVがクラウンブランドによって『デュアル・フラッグシップ』のラインナップを構築。

 これにより、30万人以上のハイエンド市場をカバーし、多くの消費者に対応していきます」

※ ※ ※

 このように、かつて中国の人々が憧れたクラウンブランドを復活させ、消費者が多いミニバンやSUVといったモデルにクラウンを冠することで、新たな消費者を獲得していくことが狙いのようです。

■中国で登場! クラウンを冠する「ヴェルファイア」と「クルーガー」とは

 今回、クラウンの車名が冠された2台は、「クラウン・ヴェルファイア」と「クラウン・クルーガー」です。

 クラウン・ヴェルファイアは、2019年の上海モーターショーにて中国市場への投入が発表されたヴェルファイアのマイナーチェンジモデルです。

 トヨタと広州汽車の現地合弁である「広汽トヨタ」が10年前から中国国内で販売をおこなう姉妹車のアルファード同様、完全に日本国内での生産となるため、中国市場では輸入車の扱いとなります。

 高い関税(15%)や輸入に関する手数料が課せられており、中国での新車価格(定価)は81万9000人民元(邦貨換算:1364万2000円)からに設定されています。

 しかし、「新古車」として実際に販売される価格はさらに高額で定価+500万円、2000万円前後で取引されている実情があり、それほど人気が高いクルマだということがわかります。

 クラウン・ヴェルファイアの発表時に、一汽トヨタは次のように説明しています。

「クラウンは、中国で高い評価を得ており、高級フラッグシップセダンの手本です。そのため、中国の消費者にとって高級イメージの代表となっています。

 今回、クラウンブランドがヴェルファイアと手を組んだことで、中国市場におけるハイエンドMPVモデルのベンチマークとなり、ハイエンドユーザーをさらに満足させることができるようになりました」

 また、クラウンのイメージについて、北京で自動車販売店を経営するB氏は、次のように説明しています。

「クラウン・ヴェルファイアはクラウンのエンブレムをつけることで定価が2万元(約30万円)上がっています。

 中国では『クラウン=伝統的な高級セダン』というイメージですから、クラウンエンブレムを付けたヴェルファイアは高級なイメージをさらに強くするでしょう。

 ヴェルファイアはアルファード同様、かなり人気のミニバンではありますが、中国市場に投入されてまだ2年ということと、中国市場で10年以上の歴史を持ち、絶対王者的人気を持つアルファードの前では少々キャラが薄い印象があります。

 ヴェルファイアと同じタイミングで中国での販売を発表したレクサス初のミニバン「LM」はこれまた超人気車種で、実際には3000万円以上で取引されています。

 今回、ヴェルファイアにクラウンのエンブレムをつけることでヴェルファイアもクラウン並みの高級ミニバンであるというイメージを与え、キャラクターを際立たせる狙いがあると思われます」

 一方のクラウン・クルーガーは、これは北米市場などで販売されている「ハイランダー」のXSEグレードをベースとしている車両です。

 ハイランダー自体は、広汽トヨタがすでに生産・販売をおこなってきており、今回のクラウン・クルーガーはそれに対する姉妹車という立ち位置になります。

 上海モーターショーでクラウン・クルーガーを取材した中国メディアの記者は印象を語ります。

「中国は左ハンドルのクラウンをもっとも長く生産した国ということもあり、クラウンに愛着を持つ人もたくさんいます。とくに40-50代以上の層ですね。

 クラウン・クルーガーは一汽トヨタ版ハイランダーという立ち位置で、クラウン・ヴェルファイアよりは、『便宜的にクラウンマークを付けた』感が強い印象です」

※ ※ ※

 日本では、いまだに「クラウン=セダン」という印象が強いものの、クラウンブランドを継承した新たなモデルは中国の人々では、受け入れられているといえそうです。

 今後、一汽トヨタで販売される車種にはほかにもクラウンを冠するモデルが登場する可能性があるかもしれません。

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みんなのコメント

35件
  • トヨタは中国みてるって事かなぁ。
    でも、安易に他の車種にクラウンのネーミングつけるのは違和感ありまくり。
  • かの国は貧富の差が凄いんだね・・・・クラウンの名前よりも、レクサスLMの3000万!よく買うよね・・・・アルファードのラウンジの顔を変えただけでしょ。対中政策で経団連が反対する訳だ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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