ル・マン24時間レース挑戦から1年、ふたたびレースの現場へ
ロードレースの世界では、長男・青木宣篤選手と三男・治親選手とともに伝説の兄弟ロードレーサーとして知られた青木三兄弟の次男である青木拓磨選手。1990年にロードレース・デビューし、1995年−1996年の全日本ロードレース選手権スーパーバイク・クラス連覇を果たす。翌1997年にはロードレース世界選手権(WGP)に出場し、非力なマシンを操りながらもランキング5位を獲得する。そしてマシンを一新し「今年こそチャンピオンを獲れるのではないか?」と期待が高まっていた1998年。そのシーズンを前にしたテスト中の事故で脊椎を損傷してしまう。
「M2 CSレーシング」ワンメイクレースが日本で開催決定! アジア初となるBMW公式の本格レースに注目
その事故後は車いす生活を余儀なくされてしまうが、それでもレース活動のフィールドを4輪に移し、車イス4輪レーサーとして「アジアクロスカントリーラリー」や「ダカールラリー」というラリーレイドや「GTアジア」などの国際格式レースに参戦。そして、2021年には「ル・マン24時間レース」への参戦も果たしている。
アジアで開催される最大級のツーリングカーレースが舞台
その青木拓磨選手が久しぶりにレースの現場に戻ってきた。それが、GTワールドチャレンジ・アジアの第3ラウンドを開催する富士スピードウェイだ。
この「ファナテック・GTワールドチャレンジ・アジア・パワード・バイ・AWS」は、SROモータースポーツ・グループが運営しているシリーズだ。ブランパンGTシリーズアジアに端を発するシリーズで、GT3、GT4の車両が参戦し、タイヤはピレリのワンメイクとなる。シリーズはマレーシアにあるセパンサーキットで5月に開幕。その後、鈴鹿・富士・SUGO・岡山と4連戦を日本国内で転戦し、最終戦は2022年10月21日~23日にインドネシアのマンダリカで開催するスケジュールとなっている。
2022年7月22~24日に静岡県の富士スピードウェイで開催された第3ラウンドは、富士の「ザ・ワンメイクレース祭り 2022のレース」のひとつとして行われた。今季のこの日本で行われるシリーズに「ジャパンカップ」という選手権を組み込んでおり、ここにプロ・アマチュアのペアで参戦するチームも多数存在する。
また、このGTアジアはGT3とGT4のレースとなるが、ここにGTC、GTXの参加も可能ということで、このGTX枠となるBMW M2 CS Racingが2台、今回の富士戦に参戦することになった。そのうちの一台が、ゼッケン101をつけるBMWリーガル・トップ・レーシングのM2 CS Racingで、青木拓磨選手は、このチーム・オーナーの高橋裕史選手と組んでこれに挑む。
ちなみにリーガルトップという司法書士事務所の代表を務めている高橋選手は、今シーズンからスタートしたこのM2 CS Racingを使用した「M2 CS Racing Series」(全10戦)にこの同じ車両を使用して現在参戦中である。
2ペダルのレーシングマシンに手動装置を架装し参戦
このGTアジアの富士ラウンドは2022年7月22日(金)の練習走行からスタートした。初めてこのマシンに乗る拓磨選手のマシンへの理解とともに、今回GTアジアに参戦のために新たに装着した手動装置をふたりが確認。お互いの操作に違和感のないよう、マシンのセットアップを行う。
さらに、セッション中に車両をピット内に入れることのない(ピットに入れた時点でリタイアとなる)このシリーズのルールに基づき、乗降補助の確認作業も同時に行われた。今回のマシンは左ハンドルでの操作ということもあって乗降の際にはピット側ではなくコース側から乗り込むことから乗降の練習と、そのタイムの計測など準備も進めていく。
7月23日(土)の午前中に行われた予選では、まず高橋選手、そして青木選手の順でセッションをこなしていく。ただ、ここで発生した燃料系トラブルがその後のレース1に影響を及ぼすことになる。グリッドは最後尾ながらスタートから数台をパスした101号車だったものの、加速が鈍る現象が発生し、徐々に順位を下げていくことになってしまう。
ピットウインドウが開いた時点でファーストドライバーの高橋選手をピットに戻し、青木選手に交代しながらマシンの確認を行い、応急措置を施してマシンをコースに送り出したものの、トラブル解消にはつながらず。101号車はピットに車両を入れてしまった。
前日のトラブルを対策し日曜のレース2に挑む
前日のリタイア後にチームスタッフによる本格的な原因追及と適切な処置により、日曜日に開催のレース2に備えてきた。この日のスタートドライバーは青木選手となる。
第2レースは24日(日)午後12時40分からスタート進行が始まり、フォーメーションラップののちにローリングスタート。スタート直後の1コーナーで前を行くマシンを1台パスし、さらに前を行くマシンを捉えかけ、プッシュ。しかし、1周目の最終コーナーでインタークーラーに問題が出てしまい、エンジンがセーブモードに入ってしまう。
第1レースでのリタイアを経て、何とか完走をという青木拓磨の思いもあり、まったく吹けなくなってからも、ピットウインドウが開くタイミングまで粘って粘って走り切り、ドライバー交替まで持ち込む。ピットではチームスタッフが懸命の処置を施し、無事に高橋選手へバトンをつなぐことに成功した。
応急措置を施しピットアウトした101号車はそれまでの、ストレートでは180km/hしか出ないセーフモードから一転。トラブル以前と同じく快調に走行ができる状態に。ただ、前半スティントで、後続車へ道を譲るためにラインを外して走行していたことで、タイヤに他車のタイヤカスがくっついてしまうピックアップの症状がひどく、淡々と走行を続けてレースは終了した。
* * *
とりあえず、今回はスポット参戦のみということで、現状ではこれ以後のGTアジアへの参戦はない。次に青木拓磨が目指すのは2022年11月に開催延期となっている「アジアクロスカントリーラリー(11月21−26日開催予定)」への挑戦だ。
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いいねお金があると
クルマ椅子すら買えないよ