現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 映画【アオラレ】恐怖のあおり運転がノンストップで描かれる、ラッセル・クロウ主演のサスペンススリラー

ここから本文です

映画【アオラレ】恐怖のあおり運転がノンストップで描かれる、ラッセル・クロウ主演のサスペンススリラー

掲載 更新 7
映画【アオラレ】恐怖のあおり運転がノンストップで描かれる、ラッセル・クロウ主演のサスペンススリラー

久しぶりに「クルマ」に関連した映画が公開されたので、Webモーターマガジンとしても紹介しないわけにはいかない。そんな最新作、あおり運転を題材にしたラッセル・クロウ主演の「アオラレ」を、映画批評家の永田よしのり氏に解説してもらおう。

あおった男が悪いのか? あおられた女が悪いのか?
「アオラレ」
●監督:デリック・ボルテ
●出演:ラッセル・クロウ、カレン・ピストリアス、ガブリエル・ベイトマンほか
●全国にて公開中
●配給:KADOKAWA
©2021 SOLSTICE STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

日本でも「あおり運転」がここ数年社会問題となってきて、2020年6月に「妨害運転罪」の改正道路交通法適用がなされた。その内容は一般自動車道と高速道路では違うが、最高で5年以下の懲役、100万円以下の罰金が罰則として課されるようになった。

あおり運転は割り込み運転や幅寄せ、パッシング、急ブレーキ、不用意なクラクションなどがその範疇で、映画ではまさにクラクションがきっかけで執拗に追い回されることになる、恐怖の時間がノンストップで描かれるサスペンス・スリラーだ。

アメリカ本国での原題は「Unhinged(アンヒンジド)」。意味は、ヒンジ(蝶番)が外れた/精神的に不安定な/錯乱した、といった意味の形容詞で、ラッセル・クロウ演じる狂気の男の精神状態を現したもの。日本公開に合わせ邦題として日本の社会問題にもなっているあおり運転の「あおられ」をカタカナ表記したタイトルは実に分かりやすい。

男(ラッセル・クロウ)が運転する先行車(フォード F250スーパーデューティ)は、青信号になっても発進しない。この行動に苛立ってクラクションを鳴らしたレイチェル(カレン・ピストリアス/ボルボ 960エステート)。それをきっかけに口論となり、レイチェルのクルマをどこまでも追いかけてくる男のクルマ。その行為はどんどんエスカレートし、幅寄せ、追突に始まり他車を巻き込んでの大クラッシュ、あげくは殺人行為にまで及ぶ。

それは男が、自分の人生において鬱屈しており、それを社会への復讐だと考えていることに繋がる。たまたまその対象になったのが自分にクラクションを鳴らしたレイチェルだったというだけのことなのだ。

そもそもレイチェルという女性も性格が雑であり(寝坊して仕事を失ったり、クルマの運転においてもかなり違反を繰り返している)、ある意味トラブルを呼び込んでしまう自業自得的な見方もできてしまう女性。つまり煽る男も煽られた女も、現代社会にうまく適合できていない。そうした2人が事件の渦中にいることで、観客にとってはどちらも応援しづらいキャラクターという側面がある。そこが、この映画が勧善懲悪的な爽快感がないゆえんでもある。

映画に詳しい読者なら、こうしたクルマによる嫌がらせの続く映画では、スティーヴン・スピルバーグの「激突!」(1971年)や、SF映画「ブレードランナー」(1982年)で一躍有名になったルトガー・ハウアー主演の「ヒッチャー」(1986年)を思い出すだろう。

アカデミー俳優ラッセル・クロウが演じる名前のない男はたぶん、「激突!」や「ヒッチャー」のような異常者ではない。日々の暮らしの中で追い詰められた精神状態の時に、たまたまレイチェルがその箍(たが)を外してしまったゆえに自暴自棄の暴走を止められなくなってしまった男。そういう意味では、レイチェルもこの暴走に加担した確率は少なからずある、と考えてもいいのかもしれない。

じつは筆者も若い頃、夜中にノロノロ運転しているクルマにパッシングを繰り返したところ、赤信号で止まった時に先行車から木刀を持った男が降りて来たので慌てて逃げたことがある。幸い事件性には発展しなかったが、目撃者の少ない深夜帯、もしも逃げ切れなかったら? 「あおり運転」はする側、される側、どちらに非があるのか?

もちろん、無条件に悪意のある相手から「あおり運転」を迫られることもあるだろうが、どこか自分にもあおり運転を誘発させることになる要因はないだろうか? 最低限の自己防衛・危機回避のためには何よりも周囲を確認しながら、心や時間にゆとりを持って安全運転を心掛けることは必要なことだろう。

余談だが、レイチェルはきっとこの事件をきっかけにマスコミなどで引っ張りだこになって人気者になることだろう。そういう皮肉な幸福も予想できる。アメリカは良いにつけ悪いにつけ「どんなことでも」チャンスになる国なのだ。映画を観終わると、そんなこともちょっと考えてしまった1本だった。(永田よしのり/映画批評家)

[ アルバム : 映画「アオラレ」 はオリジナルサイトでご覧ください ]

こんな記事も読まれています

ホンダ『シビック』デザインのTシャツ発売…歴代を着る
ホンダ『シビック』デザインのTシャツ発売…歴代を着る
レスポンス
【スズキ】2024 鈴鹿8耐の SUZUKI 応援応援グッズ付チケットが発売
【スズキ】2024 鈴鹿8耐の SUZUKI 応援応援グッズ付チケットが発売
バイクブロス
【暫定結果】2024年WEC第3戦スパ・フランコルシャン 決勝
【暫定結果】2024年WEC第3戦スパ・フランコルシャン 決勝
AUTOSPORT web
レクサス“新”「小さな高級車」登場! 斬新「2トーンカラー」採用&加速性能アップ!新型「UX」独で約732万円から
レクサス“新”「小さな高級車」登場! 斬新「2トーンカラー」採用&加速性能アップ!新型「UX」独で約732万円から
くるまのニュース
トヨタ カムリ 新型、『プリウス』顔に変身…米国で生産開始
トヨタ カムリ 新型、『プリウス』顔に変身…米国で生産開始
レスポンス
異例の“赤旗&延長”大波乱のWECスパでプライベーターが金星。ワークスポルシェを従え初優勝【後半レポート】
異例の“赤旗&延長”大波乱のWECスパでプライベーターが金星。ワークスポルシェを従え初優勝【後半レポート】
AUTOSPORT web
「出っ歯、竹ヤリ」暴走族の定番… 見た目スゴい過激カスタムなぜ誕生? ルーツはどこに
「出っ歯、竹ヤリ」暴走族の定番… 見た目スゴい過激カスタムなぜ誕生? ルーツはどこに
くるまのニュース
あの頃乗りたかった! 昭和世代(40年世代)が乗りたかったバイク5選
あの頃乗りたかった! 昭和世代(40年世代)が乗りたかったバイク5選
バイクのニュース
ピットでメンテナンスを受けることも可能! スーパーオートバックスのなかにヒョンデのショールームが誕生
ピットでメンテナンスを受けることも可能! スーパーオートバックスのなかにヒョンデのショールームが誕生
WEB CARTOP
往時の強さ取り戻したマルケス、13番手スタートから2位フィニッシュ。優勝争う前から「もうクタクタだったよ……」
往時の強さ取り戻したマルケス、13番手スタートから2位フィニッシュ。優勝争う前から「もうクタクタだったよ……」
motorsport.com 日本版
ポルシェなのに中身はアウディ? 開発テストをおこなう謎の『マカン』その正体は
ポルシェなのに中身はアウディ? 開発テストをおこなう謎の『マカン』その正体は
レスポンス
スズキから「万能型スポーツアドベンチャーツアラー」登場! 省燃費で扱いやすい新型「Vストローム250」は進化したエンジンに注目です
スズキから「万能型スポーツアドベンチャーツアラー」登場! 省燃費で扱いやすい新型「Vストローム250」は進化したエンジンに注目です
VAGUE
【最新技術】新型アコードに触れて実感。新世代ホンダe:HEVハイブリッドはトヨタを超えたかもしれない
【最新技術】新型アコードに触れて実感。新世代ホンダe:HEVハイブリッドはトヨタを超えたかもしれない
カー・アンド・ドライバー
ロバンペラと勝田が無念のデイリタイア。首位争いはオジエVSタナクの元王者対決に【WRCポルトガル三日目】
ロバンペラと勝田が無念のデイリタイア。首位争いはオジエVSタナクの元王者対決に【WRCポルトガル三日目】
AUTOSPORT web
ホンダ新型「最小&最安コンパクトカー」が今や”国民車”に!? 爆売れの“5速MT&全長4m以下”ボディ! 迫力顔の「ブリオ」が尼で大人気
ホンダ新型「最小&最安コンパクトカー」が今や”国民車”に!? 爆売れの“5速MT&全長4m以下”ボディ! 迫力顔の「ブリオ」が尼で大人気
くるまのニュース
女性競輪選手たちの挑戦「ガールズケイリン」に大注目!
女性競輪選手たちの挑戦「ガールズケイリン」に大注目!
バイクのニュース
日本でのライドシェア解禁で目立つ「否定的な声」! 犯罪はあってはならないがライドシェアなくして足が確保できない地域もある
日本でのライドシェア解禁で目立つ「否定的な声」! 犯罪はあってはならないがライドシェアなくして足が確保できない地域もある
WEB CARTOP
最新のランクルは最良? ランドクルーザー250に試乗 オフロードも最新技術で快適に
最新のランクルは最良? ランドクルーザー250に試乗 オフロードも最新技術で快適に
日刊自動車新聞

みんなのコメント

7件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村