本誌『ベストカー』にて、クルマにまつわる変わったもの、見慣れないものを取材する連載企画『これは珍なり(略して『これ珍』)』。数ある企画の中から、ボルボのデザインコンペで最優秀賞を獲得した充電ステーションの話題をご紹介!(本稿は「ベストカー」2013年10月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:ベストカー編集部
超斬新! 未来の「充電ステーション」のアーティスティックな造形にビックリ仰天!![復刻・2013年の話題]
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■未来の充電ステーションはこんなアーティスティックな造形になる!?
骨組みにはカーボンファイバーを採用し、高密度ポリエチレンと太陽光パネルによって覆われる
EVの普及とともに全国に広がってきている充電スタンド。最近では一般道だけでなく、高速道路のSAやPAでも充電スタンドが充実してきているのだが、まずは上の写真を見てほしい。
クルマを中央にまるで蝶が羽を広げたかのような巨大なオブジェが取り囲んでいるのだが、実はこれ、太陽光を利用してEVを充電するソーラーステーションなのだ。
この優雅な雰囲気を漂わしているソーラーステーション、その名も「Pure Tension」といい、米国ロサンゼルスを拠点とするデザイン会社、「Synthesis Design + Architecture」(SDA)が考案したもの。
今年(2013年)7月、ボルボ イタリアがボルボ初の市販PHV、V60プラグインハイブリッド(直5、2.4Lディーゼルターボ+モーター)をテーマに開催したデザインコンペの「Switch to Pure Volvo」で最優秀賞を獲得したコンセプトデザインなのだそうだ。
SDA社のコンセプトによれば、「テントのように軽く、蝶のように可憐な折りたたみ式充電器」ということで設計されたそうだが、まったく充電スタンドには見えないようなデザインを採用しているのが確かに印象的。
Pure Tensionのサイズは高さ3m、幅が7mと非常に巨大なものになっている。人間と比べるとその大きさがよくわかる
EV充電器というと日本国内ではどうしても四角い充電器のイメージが強いので、なんとも遊び心にあふれたPure Tensionのデザインの斬新さが強烈な印象を与えるのは確かだ。
このPure Tension、サイズは高さが3mで幅が7mと大きく、複数のカーボンファイバーの骨組みによって構成され、高密度なポリエチレンと太陽光パネルによって覆われている。
この形状によって効率よく太陽光を吸収することができ、約12時間でフル充電が可能とのことだ。
これだけ大きいと収納が大変に思えるのだが、コンパクトに折りたためるため、V60のトランク内に収納できるというからなかなかに実用面も考えられている。
さらに、SDA社によればボルボV60プラグインハイブリッド以外にも他メーカーのEVやプラグインハイブリッド車にも対応しているのだという。
コンセプトは「テントのように軽い折りたたみ式充電器」で、折りたためばトランクに収納できる
こちらは俯瞰図
SDA社によればまだ市販時期は決定していないそうだが、現地のイタリアではすでに実機が公開されているとのこと。
日本だと、これだけ大きな充電ステーションを設置するにはかなり広大なスペースを必要とするのだろうけど、ぜひとも導入してほしいもの。
では、このPure Tension、デザイン的にはどのような評価を得られるのだろうか。ということで、ベストカーでデザイン論といえばこの方、前澤義雄氏にご登場いただき、次のように詳しく分析してもらった。
* * *
見た感じでは、ユニークで美しく、太陽からの発電と車両への充電が機能的に組み合わされたアイデアがカタチになっているのは魅力的とも言える。
また、収納時に展開するとたぶんフレームに囲まれた真円となり、それもデザインのアイデアのひとつとなっているのはニクイ。
シカーシ、ちょっと理屈を言わせてもらう。
クルマを含めたプロダクトデザインとは、実用的なモノとしての、あるいは商品としての利用に関わるすべての要素が満たされている必要がある。例えば、適度なコスト/価格、使い勝手、耐久性、保守性、安全性など。
そこで、この充電器を見直してみると、耐久性とコスト/価格はこの際除外しても、使い勝手にいくつか懸念が湧く。
まず、いくら軽量でもこれだけのサイズの弾性ある物体を折りたたみ、あるいは組み開くには数人の人手とクルマ数台分の場所がいる。加えて雨や強風下では大変だ。
この提案者のようにカリフォルニアのような気候ならいいが、一般的には固定式ソーラー発電と同様の問題も加わる。ホコリからの汚れの除去も大変だ。
また、この機器からの電線がクルマへと同時にアースなのか予備バッテリーへの充電なのか地上へも伸びているが、こうした設定をしておくこと自体も大変だろう。これを将来的にも個人ユーザーを考慮するというのは、ウーン……ムリ、というか不可能だろうな。
たとえ前述の価格や耐久性の問題を解決したとしてもね。
だが外観自体の魅力は高いので、なにかのイべントのアトラクションのような設定であるならば大勢の興味を集め、感心されること請け合いだろうな。
EVカーレースのパドックでの充電用に使うとかね。
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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