ヒョンデのFCEV(燃料電池自動車)である「NEXO(ネッソ)」に小川フミオが試乗した。未来を予感させる韓国発のSUVとは?
話題の1台
日本のラグジュアリー、日本の高級車──新型レクサスLC500h試乗記
濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』、ご覧になりましたか? 観たひとなら、最後のちょっと不思議な場所でのシーン、よくおぼていると思う。赤いサーブ「900ターボ」のとなりにあったクルマこそ、今回のヒョンデNEXO(ネッソ)だ。日本にまもなく上陸する。
ひと足先に、箱根で試乗できたネッソは、水素を燃料とした電気自動車。いわゆるFCEV(燃料電池自動車とも)だ。トヨタ「MIRAI(ミライ)」と同種の“エコカー”である。排ガスを出さずに1回の充填(ガソリンの満タンに相当)で820km走る。しかもそれだけでなく、ワインディングロードがじつにキモチいい。
日本では、2021年9月に代官山で開催された「ネッソ・テラリウム」の主役がこのSUVだった。そのときは、日本市場への参入がまだ発表されていなかった。今回ようやく詳細が発表された。2022年5月から専用プラットフォームを使ってオンラインによる受注を開始。7月からデリバリー予定というスケジュールも公にされたのである。
実は9月のイベント直後、GQ JAPAN編集部ではネッソを借り出し、試乗した。横浜周辺の首都高で、活発な走りを楽しませてくれたのが、私の印象に残っている。
電気自動車ならではの、ごく低速域からの力強い加速と、乗り心地のよさ、それにデジタル技術の数々……世界でトップクラスのセールスを達成しているヒョンデ・モーターカンパニー(現代自動車)のプロダクトだけある、感心させられたものだ。
2022年2月に、小田原から箱根へと走った印象は、さらにもうひとつ、ネッソのいいところを発見させてくれた。曲がりがキモチいいのだ。箱根のワインディング・ロードをすいすい軽快にこなすハンドリングのよさを持つ。
軽快なハンドリング
全長4670mmで全高は1640mm。重量は1870kgあるSUVではあるものの、ステアリング・ホイール操作に一瞬たりとも遅れることなく、ボディは敏感に反応してくれる。
ごく低速から395Nmの最大トルクを出すモーターによる俊敏な加速と、しっかりと効くブレーキが、ロールを抑えた足まわりとうまく調和しているので「こりゃいい!」と、走りながら、思わず破顔してしまう。
トータルで156.6リッターの水素を貯蔵するタンクは計3本。後席の下あたりに収納され、そこから水素はフロントのFCシステムへと送られる。燃料電池スタックを通ることで、エレクトロンが取り出され、それでモーターを動かして前輪を駆動する。
貯蔵タンクを保護するべく、衝突安全性向上のため高強度構造を採用しているものの、重さはほとんど感じない。ボディの重量は、乗り心地のよさに寄与、と、ポジティブな効果をもたらしている。
トヨタ・ミライは、2代目へのフルモデルチェンジによって後輪駆動化され、サーキットでもするどい走りを体験させてくれるクルマになった。ネッソもドライブの楽しさで負けていない。それが箱根でよくわかった。
ホイールベースは2790mmとまずまずの長さであるものの、エンジンを搭載しないため、パッケージはよい。10.25インチと12.3インチ、ふたつの液晶パネルと、メタリックな輝きのボタンが並ぶブリッジ型のセンターコンソールが、運転席の“コクピット感”を演出する。いっぽう、乗員のお腹あたりから上は、目立つものもなく、空間的な広々感がある(じっさいに後席も余裕ある)。
乗員の居心地のよさはデザインにとどまらない。
たとえば3段階の空気浄化システムや、カメラを使って車線変更時、後方視界の映像を液晶モニターに映し出すシステムなど、安全と快適が合体している。
居心地の良い室内
水素の充填ステーションは、従来のインフラを使う。1回の充填に必要な時間は約5分とのこと。
韓国のひとたちは新しもの好きで、ネッソのFCEV、あちらでのセールスはけっこう好調という。ただし充填ステーションの数は日本より少なく、30分以上の待ちはざらなんだそう。
その待ち時間は、室内でくつろげるように、と、家電も使えるコンセントもあるし、後席はリクライニング機能をそなえる。
ドライブが楽しいとはこれまで書いたとおりであるが、くわえて、リビングルーム的な居心地のよさも追求されているのだ。あたらしい価値観をもったクルマである。
価格は776万8300円。クリーンエネルギー自動車補助金と、環境対応車普及促進税制の対象なので、タイミングがあえば、これより低い価格で購入可能だ。
ヒョンデは、カーシェアリングにネッソを投入するなどし、あたらしいかたちの自動車とのつきあいかたを支援していくそうで、購買者以外も、乗る機会が増えそうだ。いちど乗ってみると、ずっと印象に残るクルマである。それを体験してみるといいと思う。
文・小川フミオ 写真・田村翔
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みんなのコメント
上っ面の試乗記なんて誰も求めてないから。
そして日本や日本人や日本車Disって悦に入ってろ。
本物の日本人である自分的には、全くもって理解不能だが。