M600を少量生産してきたノーブル
英国のノーブルは活気づくだろうか。グレートブリテン島の中部、レスターシャー州に拠点を置く小さなスーパーカー・メーカーは、これまで一度もその息を止めたことはない。
【画像】シンプルでアナログ ノーブルM500 先代のM600 競合のミドシップ・モデルと比較 全122枚
たくさんの話題を集め、少なくない購入希望者が出現したものの、生産工場の扉は閉ざされたまま量産車が現れないTVRとは違う。こちらの動向も気がかりではあるが。
一方のノーブルは、M600という名のミドシップ・スーパーカーを、2010年から少量生産し続けてきた。希望すれば、ガレージへ迎え入れることは可能だった。話題にのぼりにくいのは、単に購入を考える人が少なかったというだけだろう。
M600は素晴らしいドライビング体験を与えてくれるモデルなだけに、筆者は少々残念な事実だと思う。当初からヤマハとボルボ、ジャッドが共同開発した4.4L V8ツインターボエンジンを搭載し、659psというハイパワーを誇っていたのだ。
ただし、トランスミッションは乗り手を選ぶ6速マニュアル。乗りやすくするアンチロックブレーキも搭載されておらず、少々時代遅れ感がなかったわけではない。それでも、魅力を欠いていたわけではなかった。
フォードの3.5L V6から513ps+6速MT
最新のフェラーリは素晴らしい。だが、エンジンは電子制御されるハイブリッドで、トランスミッションも電子制御のオートマティック。リミテッドスリップ・デフやトラクションコントロールなども、見えないところでクルマを操っている。
ロータス・エキシージの生産が終了し、嘆いているのは一部のシリアスなドライバーだけかもしれないが、市場が消滅したわけではない。比較的シンプルな新しいエミーラの好調な売れ行きが、それを証明している。
ノーブルが発表した新しいM500の属する市場は、従来どおり大きなものではないだろう。だが、今まで以上に門戸は広い。M600より最高出力は劣るものの、能力は引き出しやすい。
今回ノーブルが選んだパワーユニットは、フォードのエコブースト。3.5L V型6気筒から513psを引き出すのは、難しい仕事ではないらしい。V8エンジンを輸入し、多くのチューニングを加える必要がないため、製造コストも落とせる。
組み合わされるトランスミッションは、イタリアのグラツィアーノ社が供給する6速マニュアル。アウディR8も搭載していたものだという。
もちろんミドシップのリアドライブで、試乗車にはオープンデフが組まれていた。希望すれば、機械式のリミテッドスリップ・デフを搭載できる。
アンチロック機構はM500にも採用されなかったが、恐ろしく重かったM600よりブレーキペダルは軽くなり、アシスト量も大きい。パワーステアリングとトラクションコントロールは付く。
目立った装備はこの程度。残りは操るドライバーへ任される。
スチール製スペースフレームで目標1200kg台
M500の骨格をなすのは、M600に似たスチール製スペースフレーム。同社の責任者によれば70%はM600と共通しているらしいが、乗降性を良くするためサイドシルの位置は低められ、安定性を高めるためトレッドは広げられている。
ボディパネルはカーボンファイバーではなく、重量が増えるものの安価なグラスファイバーが選ばれた。フロントのボンネットを開くと、意外と大きい荷室が用意されている。
コクピットのシートは2脚。メーターはモニター式で、エアコンとバックカメラも備わる。これだけあれば充分だろう。
筆者が運転できたM500はプロトタイプで、金型の仕上がりが完璧ではなく、ボディは量産版より重いらしい。それでも、パネルのフィット感や表面の仕上がりに気になる点はなかった。
ノーブルの技術者は開発を進めている途中で、車重は確定していないという。試乗車は約1400kgあるということだったが、1200kg台に留めたいと考えているそうだ。
ちなみに4.4L V8エンジンを積んだM600は、AUTOCARで計測したところ、ガソリンを満タンにしても1305kgしかなかった。恐らく実現は可能だろう。
インテリアはアルカンターラで隅々まで覆われている。包まれるように落ち着いた空間が好ましい。
小ぶりなステアリングホイールは、ドライバーの正面で真円。3枚のペダルは若干左側に寄っているが、丁度良い間隔で並んでいる。サーボが強化され、M600より軽いといっても、ブレーキペダルはまだ重い。
この続きは後編にて。
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