緩やかにカーブを描くシルエット
メルセデス・ベンツは、EQSよりひと回り小さいEQEで、純EV市場へ本気で参入する。スムーズなフォルムをまとう、ミドルクラスのエグゼクティブ・サルーンだ。
【画像】メルセデス・ベンツ EQEとEQS 欧州でライバルとなる純EVサルーンと比較 全97枚
EQEは、欧州では主に会社からの貸与車両や社用車として買われるはず。生産工場は、中国・北京とドイツ・ブレーメンの2拠点。エントリーグレードの英国価格は7万ポンド(約1169万円)を切り、ひと回り大きいEQSより販売台数を稼ぐだろう。
フロントからリアまで緩やかにカーブを描くシルエットや、滑らかに処理された細部まで、デザインはEQSの縮小版といった印象。リアクォーター・ガラス部分がもう少し短い方が、バランスは良いかもしれない。好き嫌いは、感じ方が分かれると思う。
メルセデス・ベンツといえば、高級車の創始者といえる1社。内燃エンジン車の時代から脱却するに当たり、実績と伝統のあるスタイリングを一掃してしまうことを、筆者はあまり好ましいとは感じない。
長めのボンネットに、バランスの取れたキャビン・プロポーション。どっしりと路面に構えるようなスタンスが、高級車として視覚的に望ましいのではないだろうか。電気エネルギーを効率的に利用するため、空気力学が優先されるとしても。
英国へ最初に導入されるグレードは、300と300+の2種と、ツインモーターで四輪駆動のAMG EQE 53。追って、出力の異なるグレードも加わる予定だという。市場によっては、EQE 500とAMG 43も売られるとのこと。
EQSの短縮版構造に90kWhのバッテリー
EQEは、EQSも採用するEVA2カー・アーキテクチャを、短縮して用いている。フロア部分には、実容量で90kWhの駆動用バッテリーを搭載できる。ホイールベースは、108kWhのバッテリーを搭載できるEQSより90mm短い。
サスペンションは、エントリーグレードでは一般的なスチールコイルが組まれる。上位グレードでは、メルセデス・ベンツがエアマティックと呼ぶエアサスが与えられる。
フォルムが似ているEQSとEQEだが、ボディ後部の処理は大きく異なる。EQSは、リアガラスも一体のテールゲートが付いたリフトバック。EQEでは、通常のサルーンのようにトランクリッドだけが開閉する。
荷室容量は大きいものの、弧を描くルーフラインのおかげで、後部座席の頭上空間は限定的。パノラミック・ガラスルーフが、さらに天井を低くしているようだ。身長が185cm以上ある人は、フロントシートに座った方が居心地は良いはず。
運転席の着座位置は、一般的なサルーンよりわずかに高め。Aピラーが傾斜し死角が小さくないが、それ以外の視認性は良好といえる。
今回筆者が試乗したのは、EQE 350+のアバンギャルドとAMGラインの2台。アバンギャルドの方がシートは快適で、明るめの内装が組み合わされ、筆者としては好印象なインテリアだった。
英国に限っていえば、後輪操舵システムとダッシュボード全面がモニターになるMBUXハイパースクリーンを選べるのは、当初はAMG EQE 53のみとなっている。遅れて投入予定のトップグレードに、目立つ装備は温存しておきたいのだろう。
ラグジュアリーな雰囲気に感心する
EQEのダッシュボードには、木目が活かされたウッドパネルがあしらわれ、中央には巨大なタッチモニターと、メーター用のモニターが据えられる。ヘッドアップ・ディスプレイも付く。ハイパースクリーンがなくても、雰囲気には優れる。
走り出してみると、EQEのラグジュアリーな質感に感心する。しなやかなエアサスが市街地の路面を滑らかに均し、とても静かで穏やかな移動空間を生んでいる。風切り音も、殆ど聞こえてこない。
コンフォート・モードを選んでいれば、路面電車の線路を超えたとしても気にならない。橋桁の継ぎ目も同様だ。
ステアリングホイールの感触はフィルターが掛かったようだが、直感的に操作できる。驚くほど扱いやすく、混雑した市街地にも簡単に馴染める。機敏な操縦性と引き締まった姿勢制御は、速度域が上がっても好感触なままだった。
駆動用モーターは、リア側に搭載される1基のみで、最高出力は292ps。ほとんどの場面で、即時的に不足ないパワーを発揮してくれる。航続距離に限りのある現状では、AMG級のパワーを必要だとも考えにくい。
EQE 350+の航続距離は、カタログ値で最長634kmがうたわれている。今回の試乗では、450kmから480km前後が現実的な範囲のようだった。
ナビゲーションが指定したルート沿いにある充電器の場所を、充電速度でグループ分けして表示してくれることには感心した。既に使用中のものは、省かれてもいた。
競争力の高い純EVサルーンだけれど
回生ブレーキには複数のモードが用意されているが、インテリジェント・モードが非常に安楽だった。クルーズコントロールを用いて高速道路を走っているような場面では、ペダル操作がほぼ不要に思えるほど。
EQEは周囲の交通状況に合わせて、自動的にスピードを調整してくれる。速度標識も自ら読み取り、赤信号にもしっかり反応してくれる。
もしドライバーが操作したければ、ステアリングホイール裏のパドルで、回生ブレーキの強さを変えられる。大きく変化する減速感を選ぶことも、それはそれで面白い。ブレーキペダルの感触は若干スポンジー。気になった点は、その程度だ。
現在のEクラス・オーナーがEQEへ乗り換えれば、その高級感や洗練度、運転のしやすさ、車載技術などに感心するはず。純EVへのシフトを決断し、従来より多めの予算を用意する必要があるとはいえ、航続距離や急速充電能力も優れる。
完璧ではないかもしれないが、EQEが競争力の高い純EVサルーンであることは間違いない。ただし、これを初めて見た人が伝統あるメルセデス・ベンツだと感じ、欲しいと心が動くかどうかは別でもある。
大胆なスタイリングではある。だが、本当に素晴らしいプロダクト・デザインだとすれば、筆者が疑問を抱くようなこともなかったと思う。
メルセデス・ベンツEQE 350+(欧州仕様)のスペック
英国価格:7万6450ポンド(約1276万円)
全長:4946mm
全幅:1961mm
全高:1512mm
最高速度:210km/h
0-100km/h加速:6.4秒
航続距離:572-634km
電費:5.3-6.2km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2280kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:90kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:292ps
最大トルク:57.5kg-m
ギアボックス:シングルスピード・オートマティック
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