医学会では再生医療の実現のためにiPS細胞に注目が集まっている。一度失われたものが元のように再生する夢のようなことが実現しようとしている。
クルマ界では、日産のスクラッチシールド、トヨタ&レクサスのセルフリストアニングコートがすでに商品化されている。これは、ヘアスクラッチや塗装面に届かないような小傷を自己修復するという画期的な塗装だ。
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クルマに限らず、自己修復、自己再生は夢物語とわかっていても実現を願うものだが、2020年3月にグッドイヤーがコンセプトの段階ながら、摩耗したタイヤが自己再生するという驚くべき技術を発表した。
ユーザーにとっては夢のようなタイヤは本当に市販化されるのだろうか? タイヤのスペシャリストである斎藤聡氏がその可能性について考察する。
文:斎藤聡/写真:GOODYEAR、TOYOTA、HONDA、池之平昌信、ベストカー編集部
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摩耗を自己再生する夢のようなタイヤとは?
2020年年3月3日にグッドイヤーから自己再生するタイヤのコンセプト“recharge”が発表されました。
平たく言ってしまえば、摩耗するタイヤを再生しながら使い続けることができるタイヤで、カートリッジに封入された液体コンパウンドをホイールに組み込むことで、コンパウンドの充填を行うというものです。
グッドイヤーが発表した自己再生タイヤのrecharge(リチャージ)。カートリッジを取り付け、そこから液体コンパウンドが供給され摩耗を自己再生する
ホイール&タイヤユニットは、軽量なエアレス・フレームと周囲に巻かれたトレッドコンパウンドで構成されています。
エアレス・フレームの中心部に液体コンパウンドが封入されたカートリッジを取り付けここから液体コンパウンドがトレッドゴムに供給され、摩耗したコンパウンドを自己再生させる仕組みになっています。
一見荒唐無稽(全体としてかなり荒唐無稽な感じはありますが)ですが、グッドイヤーによればトレッドコンパウンドの再生には、世界で最も強力といわれるクモの糸から発想を得た繊維を使うのだそうです。
非常に複雑な構造だが、rechargeは理にかなっているため、実現の可能性はゼロではないと思われる
タイヤにどうやって液体ゴムで補強するのかというのは当然の疑問ですが、液体コンパウンドを含んだクモの糸のような繊維をトレッドゴムに貼りつけるようにして補強するのならば、できなくはない…かもしれません。
そもそも摩耗タイヤの再生といっても、日々の微細な摩耗をその都度再生するという考え方です。毎日、走るとごとにタイヤの磨耗分が補修されているといったイメージです。
しかもこのコンパウンドは生分解性(微生物によって分解可能)の材料なので、摩耗しても環境への負荷にならないのだといいます。
また、このタイヤはAIによってドライバーの走行パターンや走るシチュエーションを読み取り、用途にあったコンパウンドが調合されます。
街中だけを走るのか、高速道路を走るのかといった走る場所、あるいは天候。特に雪や氷の路面では、低温域で柔軟性を発揮するコンパウンドが求められます。
充填するコンパウンドは、カートリッジ式ですから季節ごとにカートリッジ交換を促されたり、オールシーズンタイヤ的なコンパウンドが調合されたりするのかもしれません。
そうなるとタイヤを2セット持つ必要もなければ、メンテナンス自体もほぼ必要なくなります。
装着するカートリッジの種類を変更することで、いろいろなコンディションにも対応することができるのも画期的
完全自動運転時代には何が起こっても不思議ではない
ところで、なぜこのようなコンセプトのタイヤが発表されたのかということですが、ご察しのとおり来たるべき完全自動運転時代のクルマを想定したタイヤなのだろうと思います。
完全自動運転のクルマは、ドライバーが運転しなくていいわけですから、事故やトラブルの責任が自動車メーカーに多く求められるようになります。
世界中の自動車メーカーが自動運転化の実現に向けて精力的に開発を進ると同時にサプライヤーの対応は急務(写真はトヨタの自動運転レベル4実験車のTRI-P4)
そうなるとクルマのメンテナンスも自動的に行う人用が出てくるわけです。いまのクルマでさえ、車内にCANが張り巡らされ、クルマの状態や走行モードが記録され、トラブルや故障があれば検出できるようになっているわけです。
自動運転化すると例えば「ルンバ」が充電をするために自動で充電器に戻るように、クルマもメンテナンスをするためにメンテナンスガレージに自動的に入庫するようなことが起こるのかもしれません。
タイヤのメンテナンスフリー化のひとつの解
そんな中もっとも問題を抱えそうなのが実はタイヤなのです。
タイヤは消耗品なので、定期的なメンテナンスや交換が必要になります。空気圧やタイヤの磨耗はもちろん天候への対応、その他のトラブルにどう対処するかというのはとても重要な問題なのです。
タイヤは消耗品で摩耗するのが当たり前。一般的に5000km走行で1mm摩耗すると言われていて、3万2000kmが交換目安となる
ユーザーにメンテナンスの義務(責任)がなくなれば、自動車メーカーは(タイヤはクルマの部品なので)タイヤの保守管理をどう行うかが問題になるわけです。
グッドイヤーではエアレス・タイヤで空気圧をメンテナンスフリーにするとともに、タイヤに自動再生機能を与えることでメンテナンスフリーのひとつの回答を提示したということです。
タイヤのメンテナンスフリー化は自動運転実現のためには越えなければならない、かなり高いハードルなのですが、グッドイヤーのreChangeという自己再生コンセプトタイヤはそのひとつの解というというわけです。
タイヤのメンテナンスフリーが自動運転には欠かせない要素で、グッドイヤーのrechargeはその最適解のひとつと考えられる
姿を変えて実現するかもしれない
というわけで、もしクルマが完全自動運転化されるようになったならば、reChargeは、タイヤのあり方としてかなり有望なのではないかと思います。ただし、全自動化になったらの話です。
現実的には、ここしばらくは主流にはならないと思います。
ただ、トレッドの自動再生を可能にするメカニズムや、コンパウンドを走るシチュエーションによって変えることができるという発想は、もしかしたら近い将来形を変えて実現するものがあるかもしれません。
※編集部註
「完全メインテナンスフリー」といっても、実際は(他の消耗部品と同じく)車検のタイミングまで(つまり3年間)新品同様の性能が保てればいいわけで(そのときに交換するよう慣習化することになるが)、そう考えると製品化のハードルはかなり下がるはず。
とはいえもしこの「減らないタイヤ」が完成すると、後付け(リプレイス)タイヤの需要および販売が激減することになると思うのだが、タイヤメーカーはそれで大丈夫なのだろうか……。
F1をはじめモータースポーツはタイヤの摩耗が勝敗を左右する大きな要素となっているが、rechargeの技術が実用化されればガラリと変革が起こるハズ
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みんなのコメント
交換しなければならない。山がたっぷりあっても。
何年経っても山があるかぎり劣化しないタイヤがあったらいいと思う。