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6400万円でもバーゲン価格?「ランチア037ラリー」復刻モデルが「本物を超える」完成度だった

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6400万円でもバーゲン価格?「ランチア037ラリー」復刻モデルが「本物を超える」完成度だった

最近流行のレストモッドスタイルで「復刻」

 知人と電話しているときのこと。たわいもない会話の途中で「そういえば、ランチア037ラリーが復活するらしいよ。それも名だたるメンバーが仕立て上げているから相当な作り込みらしい」という話が上がってきた。早速教えてもらったHPにアクセスをすると言葉を失った。最近流行のレストモッドスタイルではあるものの、かつてのランチア・ラリーそのものだからだ。

「1億円」で落札の個体も! 「ランチア」なのに「アバルト」のエンブレムが付く「037ラリー」という名車

ランチア・ラリーとはどんなクルマだったのか?

 クルマ好きには説明が不要かもしれないが、あらためて解説をすると1982年から始まるGr.BカテゴリーのWRCに参戦をするためのマシンとして登場したのがランチア・ラリーだ。シャーシはランボルギーニ・ミウラやBMW M1の設計も手掛けたジャンパオロ・ダラーラ、エンジンはアバルト製、ボディはフェラーリのデザインも担当しているピニンファリーナという豪華な陣容で、競技用に開発されたとは思えない美しいスタイリングを持つ。

 ちなみに開発車両コードには「SE037」が付けられ、マニアから「037ラリー」とも呼ばれる理由は、これに由来するもの。その037ラリーを、イタリア人のラリードライバーであり起業家でもあるルカ・ベッティが率いるキメラ・オートモーティブ社が現代版としてモディファイしたモデルが「EVO37」。5月22日に発表されたものだ。

最新技術を惜しみなく採用

 それもただ復刻するだけではなく、冒頭でも少し触れたがレストモッド、つまりはレストアとモディファイをかけ合わせた造語で、古き良きデザインの魅力を殺すことなく、随所に最新のテクノロジーを附合させて作り上げたものなのだ。当時の弱点を改良したモデルと言っても過言ではない。 アメリカ車などでよく見かけるスタイルだが、最近ではフェラーリ250GT SWBのレストモッドスタイルが発表されるなど、クルマ好きに密かに注目されているジャンルだ。

開発メンバーは当時も関与していたメンバーが参加

 この開発プロジェクトを実現するために開発メンバーにはオリジナルの037ラリーに深く関わったメンバーが協力をしている。当時、ランチア・アバルトのラリー部門のボスであり、037ラリーの開発者でもあったセルジオ・リモーネがシャーシとセットアップを担当。エンジンはランチアのエンジニアとして活躍したクラウディオ・ロンバルディ、生産工程と構造材料はヴィットリオ・ロベルティとフランコ・イノチェンティによって進められた。

 そしてマシンのテストを行うのは、1988年と1989年に2度のWRCチャンピオンに輝いたミキ・ビアジオンというのだから、本気度がうかがえる。

ボディはフルカーボン&LED化されたヘッドライトが特徴的

 エクステリアは4灯のヘッドライトがLED化され、グリルやフォグライトリムにカーボンパーツが奢られている点を除けば、まさに037ラリーそのもの。エンジンルームの左右にあるエアインテークや、フロントカウルにパワーバルジ風のコブが付くのも変わらない。

 ちなみにミッドシップなのになぜフロントフードにパワーバルジがあるのかご存じだろうか? フタを開けるとテンパータイヤとジャッキ、工具などが収められるトランクスペースパンクなのだが、実はバーストやパンクをした際に装着していた16インチタイヤを収納するためのクリアランス(=バルジ)なのだという。

 ルーフはふたつのコブがあるダブルバブル形状で、ミラーもビタローニ・カリフォルニア風なタイプが装着される。ピニンファリーナが描く曲線こそないものの、張り出したブリスターフェンダーは迫力がある。

 リヤ周りはワークスカーを彷彿させるスポイラーが特徴的だ。しかもリヤカウル一体型となっているのだから驚く。テールレンズはオリジナルのストラダーレの長方形型ではなく、いわゆるワークスマシンを彷彿させる丸形を採用しLED化されている。マフラーはディフューザーに埋め込まれた4本出しとなっている。

 また、オリジナルのモデルでは前後のカウルなどにグラスファイバーを採用していたが、EVO37ではカーボンファイバーで作られている。

 ちなみにボディ寸法はオリジナルの037ラリーが、全長×全幅×全高=3915×1850×1245(mm)となり、ホイールベースが2440mmとなっていた。EVO37では全長×全幅×全高=4055×1905×1200(mm)でホイールベースが2520mmと拡大はしているが、スタイリングは維持されている。

  ホイールはワークスカーに装着していたスピードラインのデザインに似ており、補強のリブがスポークで再現されている。さらに恐らくはオプション設定になるが、ホイールベンチレーターも選べそうだ。

インテリアは競技マシンそのもの

 インテリアについてはEVO37のコクピットの写真こそ公表はされていないものの、技術仕様書によると037ラリーと同じ構造のダッシュボードとセンタートンネルを採用しているようだ。(写真は037ラリー) ダッシュボードにはカーボンファイバーを使用し、エッヂ部分にはアルカンターラやレザーを採用することで80年代、90年代のランチアのスポーツカーを演出。オリジナルの037ラリーには16個のサーキットブレーカーが備えられていたが、EVO37も赤いボタンを使ってクルマのさまざまな電子設定をアナログ的に行うことができるよう、ダッシュボードに赤いボタンが備えられているという。

 また、計器類はすべてアナログで表示され、ランチアのレーシングカーを参考にデザインがなされているという。シートの形状はデルタS4のものを踏襲しアルカンターラとレザーの2種類のシートを用意。4点式シートベルトが組み込まれている。

 ちなみに、ハンドブレーキは油圧式になる予定とのこと。まさに競技車両といったスパルタンな内容となっている。

シャーシはオリジナル同様にベータ・モンテカルロを使用

 シャーシは元の037ラリーと同様に、ランチア・ベータ・モンテカルロのセンター・モノコックをベースとし、その前後に最近の技術で加工されたクロムモリブデン製のチューブラーフレームを溶接している再設計のオリジナル品だ。クルマ好きなら、このフレームだけでもずっと眺めていたくなる構造美だ。

 サスペンションは当時と同じダブルウィッシュボーン式。リヤにはホモロゲーションモデルで話題でもあった4本のダンパーが据えられているレイアウトを維持しながらも、完全に再設計がされている。オーリンズ製の車高調整機能付きが与えられ、タイヤはピレリが装着されるものだ。

 サイズはフロントが245/35R18、リヤが295/30R19と偏平タイヤになっている。またブレーキはブレンボ製で、フロント・リヤともに365mmのベンチレーテッドディスク。素材はスチールかカーボンセラミックブレーキを選択することが可能だという。

 走ることを目的として登場しただけのことのことはあり、スチールとアルミニウムだけではなくカーボンやケブラー、チタンなど軽量化と剛性の向上を目的とした素材が多く使用されている。

ロンバルディが関与したエンジン

 今回の目玉ともいえるのがカウル越しに見えるオリジナル同様に縦置きされたエンジンだ。最近のクルマはブラックボックスだらけだが、EVO37はどこか懐かしい。カムカバーが剥き出しでオリジナルの037ラリーの雰囲気がちりばめられている。 搭載されるエンジンはロンバルディの指導のもと、イタルテクニカによってゼロから再設計された2150ccの直列4気筒DOHCターボ+ルーツ式スーパーチャージャー(電磁クラッチ付き)を搭載。まるでデルタS4のような組み合わせであるエンジンの最高出力は505ps/7000~7250rpm、最大トルクは550N・m/2000rpmを発揮する。 残念ながら車両重量の公式スペックは出ていないが、パワーウェイトレシオは2.0kg/psとなっているので、公式馬力の505psと考えてもおおよそ1010kg(誤差あり)くらいだろうか。オリジナルの037ラリーが1170kgということを考えると、モンスターマシンであることは間違いなさそうだ。

 このエンジンを操るのは、もちろん2ペダルのパドル付き6速シーケンシャルミッションと3ペダルのHパターンMTを選択することができる。もちろん、後輪駆動というのだから嬉しい。

豊富なカラーバリエーション

 さらにボディカラーは写真のロッソ037ストラダーレ以外にも豊富なバリエーションの中から選ぶことができる。例えば、037ラリーの次の世代として登場したデルタS4に採用されたボディ色のボルダーS4や、これまでランチアデルタの限定車に採用されていたブルーラゴス(ブルー)、ヴェルデヨーク(グリーン)、ジャッロ・ジオネストラ(イエロー)、グリジオ16バルブ(グレー)、パールホワイトなどが選択できるという。もちろん、ワークスカラーのマルティーニも選べるというのだから、今からその姿を見られることが楽しみで仕方がない。 キメラEVO37は、車名に由来し37台のみ製造され、すでに11台が先行販売されている。価格は48万ユーロ(約6400万円)だという。

 ちなみにEVO37は7月にイギリスで開催されるグッドウッドフェスティバルオブスピードで公式に発表され、9月から納車が始まるという。

 1日も早くEVO37の走る姿を見てみたいと思うのは私だけではないだろう。

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