キャストでもスポークでもない独自構造のホイール「コムスター」
国産の二輪車にキャストホイール車が登場し始めたのは1970年代後半のこと。当初は一部の高級モデルにのみ採用されたこともあり、ワイヤースポークとは違う新アイテムに当時のバイクファンは憧れたものだが、そのトレンドに乗らず、独自の道を歩んだのがホンダの最新ホイールだった。
【画像19点】ホーク、CB750F、VT250F、CBX400Fなど歴代コムスターホイール採用車を見る
車軸周りのハブとアルミリムをスポークプレート(当初はスチール、後にアルミ製)で繋ぐ、組立式のコムスターホイールである。各部とスポークとの接合はリベットを用いていた。
コムスター(COM-STAR)という名称は、その構造と五芒星のような形状に由来し、COMPOSITE(合成の)とSTAR(星)を組み合わせた造語。
当時はかなりの重さだったキャストに対し、「キャストホイールの剛性と、スポークホイールのしなりの両立」を謳い文句にしており、さらにコムスターでは軽さも利点としてアピールした。
この最新ホイールの初採用車は1977年4月発売のCB750FourII(後期型)で、前期型スポーク仕様からのマイナーチェンジ車という地味な登場だったが、ホンダがこのホイールを積極的にアピールしたのは、むしろ同年12月発売のGL500からだった。新開発の水冷縦置きVツインエンジンと車体をはじめ、斬新なヨーロピアンツアラーのスタイルも特徴としたGL500は新機軸のオンパレードだったが、同車で採用されたコムスターホイールには、二輪車で初となるチューブレスタイヤが採用されたのだ。
その後、コムスターホイール採用車は数を増やし、ホークシリーズ(250/400)、国内フラッグシップモデルのCB750F、小排気量ではCB125Tや原付のMB50まで、主要なロードスポーツモデルに装着されていった。
次々と「モデルチェンジ」していったコムスターホイール
登場当初はスチール製だったスポークプレートが1979年登場のCB750Fからアルミ製に代わり、オールアルミ製を謳うようになったコムスターホイールだが、以降も形状に変化があった。以下がその4代4形態の変遷だ。
■第1世代・コムスターホイール(1977~1980年ごろ)
前述のようにスポークプレートの材質変更はあったものの、5本スポークでシルバー塗色が基本。機種によって、リム側のリベット取り付け部を黒い樹脂カバーで覆う仕様と、剥き出しの仕様がある。
採用車はCB750FourII後期型、GL500、ホークII CB400T、CB750F(FZ)など。
■第2世代・裏コムスターホイール(1980~1982年ごろ)
初代のプレス打ち抜きの内側折り返しとは反対に、スポークプレートを外側に折り返したような形状から「裏コムスター」と通称されるが、正式名称ではない。この折り返し方のほうが剛性を出しやすい故の変更だったと非公式に聞いたことがあるが、名称も従来どおりのコムスターホイール。スポークプレートの凹部は黒系仕上げが基本。
採用車はCB750F(FB)やGL400カスタム(後期型)など。
■第3世代・ブーメラン型コムスターホイール(1981~1984年ごろ)
3つのブーメラン型スポークプレートが、ハブからリム側へ向かって伸びた形状(接合は6×2点支持)に由来し、ホンダはブーメラン型と命名。CBX400F(1981年)、VT250F(1982年)、CB750F(FC:1982年)などが代表機種で、当時の新機構であるインボードディスクと合わせた外観で、非常に斬新な印象を与えた。
■第4世代・NSコムスターホイール(1983~1985年)
ファクトリーマシンのNR500(1979~1983年)で採用され、NS500(1982~1984年)、NSR500(1984~1985年)でも使われたのが、通称「組み立て式コムスター」。
そのホイール形状に準じたデザインとしたのが「NSコムスター」で、コムスターホイールの最終形態だ。板状の12枚のスポークプレートを2枚ずつ三角形に組み合わせた6点支持の構造が特徴で、CBR400F(1983年)、NS250R(1984年)、NS400R(1985年)と、レプリカ系スポーツモデルに採用されたものの、ホンダは1986年以降キャストホイールに転換し、コムスターホイールはフロントの小径16インチタイヤとともに姿を消すこととなる。
NSコムスターの「本家」は、ファクトリーマシンNR500(1979年型)。V4長円ピストン32バルブエンジンをアルミモノコックフレームに搭載したことに始まり、独創的な技術の塊だったマシン。組み立て式コムスターもその革新技術の一環として採用された。
当初スポークプレートはアルミ製だったが、1983年のNS500でCFRP製のスポークプレートやリムが開発され、1984年のNSR500からはオールCFRPの超軽量ホイールとなった。しかし、そこでは組み立て精度の確保と、強度の保証性の確立が課題となっていた(1984年のNSR500ではレース走行中にリヤホイールが破断し、バラバラになるというアクシデントが起きている)。
このため、ホンダはこの頃に品質とコストが両立できるようになった鋳造ホイールにシフト、1985年型のNSR500を最後にコムスターはレースシーンからも退場することとなる──。
コムスター真説「RCB1000由来のレーステクノロジーでは無かった!?」
コムスターホイールの由来は、耐久レーサーRCB1000と言われる。
実際、市販車で初採用となったCB750F II(後期型)発表時の資料には「76年度ヨーロッパ2輪耐久ロード・レース優勝のレーシング・マシン(ホンダRCB)に装備された、新開発のコムスター・ホイールを採用」という記述があるほか、RCBの活躍に関連させたPR用ポスターも制作されている。
いわゆる「レースで培われた最新技術を市販車にも投入」というケースだが、その実態は少し異なる。
そもそも、1976年にデビューしたRCB1000はその年の第5戦まではフランスのメーカーであるSMAC製のマグネシウムキャストホイールを使用しており、コムスターを投入したのは9月の第6戦からである。
CB750FourIIの発売は1977年4月だから、同車の開発期間とRCB1000への採用タイミングを考えると、ほぼオーバラップしている。CB750FourIIの生産立ち上がりは少なくとも1977年の初頭だろうから、RCB1000への採用からせいぜい3ヵ月の開発時間となる。まずあり得ない話だ。
実は当時RCB1000開発の総責任者だった秋鹿方彦さんは、以下のように語っている。
「ホンダが独自に開発した『軽量アルミホイール』が完成したということで、『これを使うように』と会社から指示があったのですが、まだ名前も付いていませんでした。5本スポークなので、その形から『スターホイール』とでも呼ぼうかと思ったわけです」
「コムスターホイールは板状スポークの両端がリベット留めなので、高荷重が加わるとそこから振れてしまう。市販車なら問題なかったでしょうが、レース使用になると……。(スプリントよりは穏やかな走りの)耐久レースということもあって、なんとか騙し騙し使っていましたが」
つまり、「市販車用」として軽量かつ生産性に優れたコムスターホイールは開発され、そのプロモーションのためRCB1000に採用したというのが、本当のところなのだ。
レポート●阪本一史/モーサイ編集部 写真●ホンダ/八重洲出版
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みんなのコメント
星型キャストホイールとかも最高じゃないですか。