ホンダが世界初のレベル3の自動運転車を発売したニュースが話題になった。アメリカでも自動運転の実用化に向けての実証実験が着々と進んでいる。2020年は2019年と比べると新型コロナウイルスの影響で実験そのものがやや減少したものの、カリフォルニア州では昨年1年間で延べ200万マイル(約320万km)に及ぶ走行実験が行われた。
カリフォルニア州の陸運局(DMV)は、自動運転オペレーターに報告書の提出を義務付けており、そこには走行距離数の他、人間のオペレーターが危険を察知して介入(ハンドル操作もしくはブレーキング)を行った頻度も含まれる。
2020年のレポートによると、トップクラスだったのがグーグルの自動運転部門ウェイモで、走行距離数は62万8838マイル(約100万6140km)。そのうち人間による介入の回数はわずか21回で、1000マイル当たりにすると0.033回となる。2019年の0.076回から半分以下に改善されており、現在のアメリカで最も安全な完全自動運転システム、と評価されている。
これに続くのがGMの出資を受けるクルーズで、走行距離はウェイモよりも多い77万49マイル(約123万2000km)。介入回数は26回で、1000マイル当たりは0.034回。2019年の0.082回から改善が見られた。
ウェイモとクルーズだけでカリフォルニア州の自動運転走行実験のおよそ7割を占めており、両社は早ければ今年中にも州内で顧客を乗せる自動運転のロボタクシー事業に乗り出す予定だ。
注目は、「自社で自動運転のEVを生産する」というウワサが流れているアップル。昨年は1万8805マイル(約3万km)と、前年の7544マイルから2倍以上走っている。しかし介入回数は130回、1000マイル当たり6.89回、とウェイモやクルーズに比べるとかなり精度が落ちる(2019年は8.47回)。
アマゾンが買収した自動運転のスタートアップ、ズークスは10万2521マイル(約16万4000km)を走行。シリコンバレーのスタートアップ、ポニーAIは22万5496マイル(36万800km)走った。
自動運転で無視できないのがテスラの存在。ベータ版とはいえ完全自動運転のソフトを配布しており、未承認ながらすでに完全自動運転を一部実現できる、と公言している。
そのテスラがベータ版をめぐりカリフォルニア州DMVと交わした書簡が公開され、話題になっている。テスラは政府規制とは一定の距離を置いており、同社は自動運転についてのレポートをDMVに提出していない。しかし、テスラのオートパイロットシステムは立派な自動運転システムでもあり、多くのテスラ・ユーザーが実際に利用している。
テスラとDMVとの書簡によると、テスラは同社のオートパイロットや完全自動運転のベータ版について「(ドライバーのアシストを必要とする)レベル2である」と主張している。これはイーロン・マスク氏が繰り返しユーザーに対して語ってきた「今年末までにはレベル5の完全自動運転を実現できる」という言葉とは矛盾する。
これがテスラがDMVの報告書提出義務を逃れるための口実なのか、実際にはオートパイロットは完全自動運転には成り得ないものなのか、その真意は不明だ。ただしDMVが行っているメーカーに対する報告書の提出義務は「意味のないもの」と批判するメーカーが多いことも事実で、テスラはこれまで「他州などでも公道、私道で実証実験を行い、その結果のデータを蓄積・分析している」としており、今後もカリフォルニア州の規範に従うつもりはなさそうだ。
いずれにせよ、今回の報告書からわかるのは、ドライバーが介入しない完全自動運転を目指すトップランナーはやはりウェイモとクルーズ、それを追い上げるアップル、という構図であり、テスラがこの中のどこに入るのかは不明な現状、という事実だ。やはり完全自動運転の実現にはまだしばらく時間がかかりそうだが、今年ロボタクシーが実際に導入されれば、政府承認への道筋が明らかになっていくかもしれない。
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