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自動車の「運転支援システム」、実は危険だった? 人間の学習能力が裏目に―衝撃の米国研究が明らかに

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自動車の「運転支援システム」、実は危険だった? 人間の学習能力が裏目に―衝撃の米国研究が明らかに

進化続けるADAS技術の最前線

 運転初心者にとって頼りになる「運転支援システム」は、毎年進化を遂げ、その性能が飛躍的に向上している。

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 欧州では2024年7月から、新車に特定の先進運転支援システム(ADAS)の搭載を義務付ける欧州連合(EU)指令が施行されている。

 この技術は、自家用車にとって欠かせない存在となりつつある一方で、米国からは注目すべき調査結果が報告されている。運転支援システムへの依存が

「ドライバーの集中力を低下させる可能性」

が指摘されているのだ。

自動運転の普及がもたらす課題

 米国道路安全保険協会(IIHS)は、運転支援システムに対するドライバーの反応を調べるため、2台の車両を対象に調査を実施した。同協会は保険会社の資金提供を受け、運転行動に関する研究を行う組織だ。

 今回の調査対象となったのは、

・ボルボS90(2017年型)
・テスラモデル3(2020年型)

である。両車両には、次のような「レベル2」の自動運転機能が搭載されている。

・アダプティブクルーズコントロール:車両の速度を一定に保ちながら、前方車両との車間距離を自動で調整する機能。
・レーンセンタリングアシスト:走行中に車線の中央を維持するようステアリング操作を補助する機能。
・ドライバー注意喚起:ドライバーの疲労や不注意を検知し、警告を促す機能。

これらの技術が、ドライバーの運転行動にどのような影響を与えるのか注目されている。
 レベル2の自動運転とは、米国自動車技術会(SAE)が定めた自動運転レベル分類のひとつだ。「部分運転自動化」にあたり、車両が加速・減速やハンドル操作を同時に支援する。ただし、ドライバーの監視と即時介入は必須であり、運転の責任は依然としてドライバーにある点が特徴だ。

運転支援システムの落とし穴

 ボランティア29人が4週間にわたりボルボS90を運転し、その挙動を詳細に検証した結果、運転支援システムを使用している場合の方が注意散漫な行動を取る頻度が高いことがわかった。具体的には、

・運転中の食事
・身だしなみの調整
・電子機器の操作

などが増加する傾向が見られた。

 さらに、過去の研究と同様、運転支援システムに慣れるにつれて、参加者が運転に対して無防備で注意を怠る傾向が強まることも示された。実験後半では、参加者が

「運転時間の約30%を注意散漫な状態で過ごしている」

ことが判明している。

テスラ実験の警告頻発

 次に、IIHSとマサチューセッツ工科大学エイジラボの研究チームは、テスラモデル3を使った実験を実施した。この実験では、テスラのオートパイロットや半自動運転技術を初めて利用する14人が参加し、4週間にわたり運転中の挙動がモニタリングされた。

 14人の参加者は合計で約1万9000kmを走行し、オートパイロット機能使用中に3858回の注意喚起警告を受けた。その半数近くは、少なくとも片手がハンドルに触れているものの、トルクセンサーが検知するほどの圧力が加えられていない状況で発生した。この結果、システムが

「手放し運転」

と判断し警告を発したケースが多かったことが明らかになった。今回の調査結果は、運転支援システムがもたらす利便性と課題の両面を改めて浮き彫りにしている。

オートパイロットの落とし穴

 システムは、一定時間以上ドライバーのハンドル操作を検知できなかった場合、最初の注意喚起を発し、中央ディスプレイにハンドル操作アイコンを表示する。また、青色の点滅ライトとともに、ドライバーにハンドルを軽く回すよう指示するメッセージも表示される。

 ドライバーは、ハンドルをしっかり握り、わずかに動かすことで操作をしていることを示せる。システムがこれらの反応をすぐに検知できなかった場合、視覚および聴覚による警告が段階的に発せられる。それでも反応がない場合、オートパイロットは車両を停止させ、その後の運転中には機能が利用できなくなる。

 注意喚起を受けたドライバーのほとんどは、3秒以内にハンドルをしっかり握って警告に反応した。最初の注意喚起への反応時間は、1週目以降約0.5秒短縮された。

 ドライバーは警告に迅速に反応するようになったが、実際には警告前後に注意がそらされる時間が増加していた。システムの警告に慣れた結果、反応は速くなったものの、その間に気が散る時間が長くなっていた。

 さらに、オートパイロットシステムの使用期間が長くなると、警告が解除された後に再びハンドルから手を離す時間が短縮される傾向も見られた。人間の

・学習能力
・適応力

が裏目に出て、警告に対する反応が条件反射的になり、結果的に安全運転支援の効果が薄れてしまう恐れがある。ドライバーの注意が散漫になる時間が長くなるほど、事故に巻き込まれるリスクは増加する。

 さらに、短時間の注意散漫が頻繁に発生するようになると、実際に運転に集中している時間が意味を持たなくなってしまう可能性がある。

習慣化する警告、さらなる対策が必須

 IIHSの上級研究科学者であり、テスラの研究主執筆者であるアレクサンドラ・ミューラー氏は、今回の結果がドライバーの習慣を変えていることを示している一方で、より安全な運転の実現にはさらなる対策が必要である可能性があると警鐘を鳴らしている。

「これらの結果は、段階的に強化されるマルチモーダルな注意喚起が、ドライバーの行動を変えるのに非常に効果的であることを示しています。しかし行動の変化が実際により注意深い運転につながるようにするには、より優れた安全策が必要です」

とミューラー氏は述べている。

 人間は便利さにすぐに慣れるため、今後は警告をランダムに発するなど、バリエーションを増やすライフハック的な工夫が必要になる可能性がある。

 運転支援システムは将来の「レベル4」自動運転に向けた重要な技術として開発が進められているが、あくまで運転をサポートするものであり、ドライバーは常に気を引き締めて運転し続けることが重要である。

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