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プーマGTE xアルファ・ロメオ1750 GTV ワールドカップ優勝国のクルマ 8台を比較(4)

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プーマGTE xアルファ・ロメオ1750 GTV ワールドカップ優勝国のクルマ 8台を比較(4)

ブラジル:プーマGTE

W杯優勝:1958年、1982年、1970年、1994年、2002年

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サッカー・ワールドカップの優勝回数が最多のブラジル。1960年代から1970年代のクルマの代表も、身体能力に長けたモデルが選ばれた。プーマGTEが発売されたのは1970年だが、同年にサッカーの神様と称されるペレは、見事なゴールで優勝に導いている。

初耳という読者も多いであろうプーマは、1964年にイタリア系移民のリノ・マルゾーニ氏が創業した小さな自動車メーカー。実は今も存在している。

当初はDKW(現アウディ)のプラットフォームを流用していたが、1967年にフォルクスワーゲン傘下になったことをきっかけに、ビートルのプラットフォームへ変更。独自のスポーツモデルを生産した。

GTEは1970年に欧州へ輸出が始まり、1973年から1974年には英国でも売られていた。ちなみに、本来のモデル名はGT。Eはエクスポート(輸出)を意味していた。かなりの低価格だったが、欧州市場で成功することはなかった。

スタイリングはカッコいい。小さなサイズに曲線的なダイナミックさが表現されている。当時としてはモダンで、イタリアン・カロッツエリアの作品に見えなくもない。リアエンジンのビートル・ベースだということを感じさせない。

ルックスだけではない。プーマの技術者は、ビートル1302S用の1584cc空冷水平対向4気筒エンジンをチューニング。圧縮比を7.5:1から9:1へ上昇させ、ツイン・ソレックスキャブレターを組み、最高出力を60psから91psへ高めていた。

車重は700kgと軽く、0-97km/h加速は9.9秒。最高速度は177km/hと、まったく不足ないパフォーマンスを発揮した。

動力性能は今回の8台でトップクラス

GTEは装備も充実していた。ダッシュボードはフェイクウッドのパネルで飾られ、スピードメーターだけでなくタコメーターも配置。ステアリングホイールはスポーティな3スポークで、マップランプも付いていた。

英国価格は左ハンドル車で当時2200ポンド。右ハンドル車の場合、改造費用が加わり2350ポンドだった。

さらにGTEは、南アフリカでも製造された。今回ご登場願ったのは、そのシリーズ1の1台。269台がラインオフしているが、こちらはビートル1500用のフロアパンをベースにしている。

このレッドのGTEは、オーナーがかなり手を加えている。サスペンションはボールジョイント化され、エンジンは2.1Lへ排気量を増大。最高出力は約120psということで、極めて活発だった。楽しくて、運転中は笑いが止まらなかったほど。

ドライビング体験にはオリジナル・ビートルの香りが残るが、シングルマフラーのエッジの効いたノイズがそれを忘れさせる。サーキットでも、グリップ力は充分以上だ。

カーブへ突っ込むとアンダーステアが顔を出すものの、アクセルペダルをわずかに緩めると自然にラインが内側へ絞られる。気難しい挙動は一切ない。

ステアリングホイールは適度に重く、フィードバックが豊かに伝わる。動力性能も、今回の8台ではトップクラス。強豪国の代表モデルも、なかなかの強豪といえそうだ。

イタリア:アルファ・ロメオ1750 GTV

W杯優勝:1934年、1938年、1982年、2006年

ワールドカップでの優勝回数ではブラジルに及ばないが、エモーショナルなクルマ作りでイタリアは揺るがない。代表としたアルファ・ロメオ1750 GTVは、まったく動じる気配はない。

イタリアは第二次大戦前からの優勝経験を持つ古株といえるが、同じくアルファ・ロメオの歴史も長い。自国が誇る美意識と技術が体現されている。

今回ご登場願ったクルマは、105系のオリジナル。英国仕様で、1968年6月にナンバープレートを取得したシリーズ1に当たる。

デザイナーは、ベルトーネに在籍していたジョルジェット・ジウジアーロ氏。プラットフォームは、サルーンのジュリア用を短縮したもの。1963年にジュリア・スプリントGTとして発売されてから、改良を受けつつ1977年まで美しいスタイリングが継承された。

フロントに載るエンジンは排気量に関係なく、ツインキャブレター付きのオールアルミ・ツインカム。5速MTを介してリアタイヤを駆動し、前後にディスクブレーキも奢られていた。1960年代の基準としては、突出した内容だった。

サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン式、リアがリジッドアクスルながらトレーリングアーム式。前後ともコイルスプリングが支えた。

情熱的に運転したいという気にさせる

先進的な105系として、一気に評価を高めたのが1779ccエンジンを搭載した1750 GTVだった。最高出力は119ps/5500rpm、最大トルクは18.9kg-m/3000rpmとたくましく、0-97km/h加速を11.2秒でこなした。最高速度は189km/hがうたわれた。

大人4名が乗ることができる、インテリアの仕立ても上質だった。フェイクウッド・パネルがあしらわれたダッシュボードには、速度と回転数の大きなメーターが2枚並び、ウッドリムの3スポーク・ステアリングホイールが手前に伸びる。

センターコンソールが滑らかに展開し、シフトレバーが真横に突き出ている。シートも美しい。1960年代のアイテムではベストの1つだろう。フェラーリ・デイトナを想起させる、リブが並んだ座面や背もたれが、高めのサイドボルスターに挟まれている。

アクセルペダルを一度傾ければ、勢い良く加速を始める。ツイン・ウェーバーキャブレターが勢い良く空気を吸い込み、自ら熱望するように回転数が高まる。5500rpm以上では特に快感。素晴らしいサウンドが一帯に充満する。

右足の操作に対する反応は見事。中回転域でのトルクも豊か。乗り心地は硬めながら、ソリッド感のあるステアリングホイールの感触と相まって、情熱的に運転したいという気にさせる。アルファ・ロメオが決勝へ進まなければ、番狂わせ以外の何物でもない。

それでは、この8台から英国編集部が選んだベストとは。スペックの後にお伝えしよう。

プーマGTEとアルファ・ロメオ1750 GTVのスペック

プーマGTE(1970~1980年/南米仕様)

英国価格:2200ポンド(新車時)/2万ポンド(約332万円)以下(現在)
販売台数:約2万2000台(GT合計)
最高速度:177km/h
0-97km/h加速:9.9秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:700kg
パワートレイン:水平対向4気筒1584cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:91ps
最大トルク:13.1kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

アルファ・ロメオ1750 GTV(1967~1972年/英国仕様)

英国価格:1899ポンド(新車時)/5万ポンド(約830万円)以下(現在)
販売台数:3万6234台
最高速度:189km/h
0-97km/h加速:11.2秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:−
車両重量:1038kg
パワートレイン:直列4気筒1779cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:119ps/55000rpm
最大トルク:18.9kg-m/3000rpm
ギアボックス:5速マニュアル

運転で得られる興奮は他を寄せ付けない

今回の8台から、英国編集部がトップ2に残したのは、BMCミニ・クーパーSとアルファ・ロメオ1750 GTV。ミニは1960年代の英国を象徴するコンパクトカーであり、世界的なアイコンへ成長した名車中の名車だ。

一方、表現力豊かな1750 GTVは情熱的なラテン気質。近いようで個性は大きく異る。

ミニ・クーパーSは可愛らしく、英国人としてはひいき目を持ってしまいがちだが、1750 GTVの実力は圧倒的。美しいボディに甘美な音響も味わえるツインカム・エンジンが組み合わされ、キックオフ前から優勢といえた。

ドライビング体験ではどちらも魅力的といえるが、比較すればこちらも1750 GTVが数段上。カーブの続く区間では、ドライバーを存分に楽しませてくれる。ミニ・クーパーSも、一体感が堪らないけれど。

軽量なボディに扱いやすいシャシー、スピードやドライバーの腕を問わず、多くの人を幸せにしてくれる2台ながら、総合力では1750 GTVに軍配が上がる。運転で得られる興奮は他を寄せ付けない。

これまで多くのファンを獲得してきたことを、改めて証明してみせた。今回の8台の比較、優勝はアルファ・ロメオ1750 GTVとしよう。

協力:アンディ・フォス氏、マーカス・クーパー氏、ルカ・ルチアーノ氏、フランク・ホフマン氏、マーク・ライリー氏、ポール・サムナー氏、スティーブ・ビリング氏、スターター・モーター社、ビスター・ヘリテージ社

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