ハイブリッドは怒涛の加速が魅力!
カワサキの描くバイクの未来!Vol.1【EVでも「ニンジャ」か「Z」。それがカワサキ流!】
カワサキの描くバイクの未来!Vol.1では2023年発売予定のEVの2台を紹介したが、今回クローズアップするのは、2024年に市販化予定のエンジンと電気のハイブリッドバイクであるHEV(ハイブリッドエレクトリックビーグル)モーターサイクルだ。「エンジン」「モーター」「エンジン+モーター」の3つの動力源が生み出す加速とは?
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加速を楽しめればファンの部分、趣味性の高さが出てくる
今は世界中でカーボンニュートラル&SDGsが叫ばれている時代。久しぶりにEICMAに行って、それを痛感したのは、聞いたこともないメーカーがEVに進出して巨大ブースを出していたり、ベネリやファンティックなどはEV自転車を大々的にPRしていたからだ。
さらに欧州のメジャーなメーカーの担当者に「EVが凄いですね」とふると「最近は普段CAKEに乗っているんだ」と写真を見せてくれたり、EVがすでに日常に浸透しているのだ。そんな中、日本メーカーでもっともカーボンニュートラルをアピールしていたのがカワサキだ。
特にHEV(ハイブリッドエレクトリックビーグル)モーターサイクルはどこもやっていないチャレンジの塊。カワサキの松田義基さんに話を聞いてみた。
「排気量の小さなモデルは、EVの方がエネルギー効率が良いことがわかってきたんです。だから125ccクラスまではEVを提案していきます。でも街から出たいし、遠くに行きたいじゃないですか。そこで考えたのがハイブリッドです。
ガソリンエンジンのままではいつまでもカーボンニュートラルにならないけれど、少しでも燃費をよくするという話です。ハイブリットは燃費を良くするための道具なんです。四輪のハイブリッドは、燃費を良くすることだけにふっていますが、それだとファンの部分をつくるのが難しい。だからカワサキのハイブリッドは加速方向を楽しめるハイブリッドです」と松田さん。
―― エンジンは見た目から想像すると650ccのパラレルツイン。それにモーターを組み合わせる。 [写真タップで拡大]
本気で将来のことを考えたら燃費に辿り着く
ハイブリッドは2014年あたりから松田さんが机上で可能性を模索し、2016年あたりから基礎研究を開始。2年ほど前に「量産やるぞ!」となり、このカタチでスタートしたのだという。しかし、ハイブリッドには、システムが大きくなってしまうという懸念もあった。これがバイクにハイブリッドは向かないと思われているところだ。
「カワサキのハイブリッドは、油圧のクラッチシステムでモーターとエンジンを切り替えられるシンプルなパラレル式のハイブリッドです。市街地ではモーターだけでも走れるし、力強い加速が欲しい時はエンジンとモーターの両方を使える。加速した瞬間はビッグ並みの力がありますよ。0スタートからバンッといく。テストライダーも凄いって言っています。加速感はまさしくエンジンとモーターを足した感じ。面白いのは間違いないんです。しかも燃費も稼げるんです」と松田さん。
いま、欧州のガソリン価格は1リットル/約2ユーロ。バイクでの移動はコスト的に楽ではないのだ。ライダーの多くがこのガソリン価格の問題に直面している。さらに今後ガソリンはさらに高くなるはずだ。
世界的にカーボンニュートラル&SDGsの話が進めば、ガソリンはより多くの税金がかけられるようになり、合成燃料(eフューエル、カーボンニュートラル燃料とも言われる非化石燃料由来のモノ)は税金を少なくし、補助金などを出しながら価格を下げていく流れになる可能性が高いからだ。
「燃費と加速を両立するのがカワサキのハイブリッドです。合成燃料になっても燃費が良い方がいいじゃないですか。技術的には大変です。難しいところもたくさんある。やっぱり無理だなぁ、と思ったこともあります。でもハイブリッドを広げていったらカーボンニュートラルも怖くないと思うんです」と松田さん。
誰もやっていない世界に果敢に挑んでいくカワサキ。カーボンニュートラル化でもコミューターに特化しない勢いと強さはカワサキならでは。まだまだ課題はたくさんあるけれど、市販化はすでに射程距離圏内だというから、楽しみに待ちたい。「モーター+エンジン」の加速を早く体感してみたい!
―― スタイリングは完全にニンジャ。テストライダーも驚いたというその加速感に期待が募る。 [写真タップで拡大]
―― カワサキのハイブリッドは、「エンジン」「モーター」「エンジン+モーター」の3つの加速を楽しむことが可能。「eboost」「WALK」「AT/MT」「HEV/EV」「SPORT」「ECO」など、このスイッチの配列を見るだけでもワクワクする。 [写真タップで拡大]
水素はまだまだ答えが出ていない
カーボンニュートラルという共通のターゲットに対し、どう取り組むか。それがバイクの国産4メーカー+トヨタ+デンソーのコンソーシアムで行っている水素エンジンの開発だ。すでに四輪バギーに水素エンジンを搭載して走らせるなどチャレンジが進んでいる。
「例えばカワサキ以外のメーカーがエンジンをやめるってなったら、エンジンの部品って手に入らなくなるじゃないですか。そうすると将来の選択肢がなくなってしまう。このコンソーシアムは日本だけでなくヨーロッパやアメリカともやりたいくらいです。
ガソリンエンジンはみんなが作れるから競争すればいい。でも、水素エンジンはできない。四の五の言っている場合じゃない。答えがないんです。でも将来のためにライバル会社と頻繁に会議をしています。だからこそ、このメンバーでやっていてできなかったら、できないだろうなぁとも思いますよ。
市街地はEVで、遠くに行くにはエンジンを使う。燃料は合成燃料か水素。水素自体は価格が安いんですが、輸送費がかかるんです。だから普及するには地域性も出ると思います。
水素の充填に関してもプロトコルというのがあって、まず水素自体の温度を冷やして、タンクの圧力を見ながら温度が上がらないようにして入れるんです。これはトヨタさんのミライとかですでにステーションがあるので、技術的には十分。普及してくれば、いま出ている問題は解決できると思います。
さらにウーブン・プラネットさんがカートリッジ式の水素ボンベをやっていて、このボンベを入れ替えるのもいいアイデアだと思っています。
EVもハイブリッドも開発をスタートした時点で、今みたいなカタチのものになるとは思っていませんでした。水素も同じです。計画的というよりは、やりながら考えていく感じです。少しずつカタチになって発表させてもらっています。カワサキは、水素も本気だし、ハイブリッドも本気だし、EVも本気です」と松田さん。
カタチも答えもないところに向かっていくチャレンジはとてつもなく大変だ。でも松田さんの話を聞くと、これからのカーボンニュートラルやSDGsといったトレンドの鍵がカワサキの中にたくさんあるような気がした。
―― ニンジャH2系のスーパーチャージドエンジンをベースとするカワサキの水素エンジン。直噴化するが内部パーツはニンジャH2系と大きな違いはないそう。インジェクターはデンソーが開発した水素用で、トヨタの水素カローラと共通。9月にモビリティリゾートもてぎで走行した四輪バギーに搭載していたのがまさにこのエンジン。ライバル会社と頻繁にミーティングを行い、試行錯誤しながら開発は進められている。 [写真タップで拡大]
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