6月下旬、ついにカローラハッチバックが“復活”する。現在、カローラはセダンとワゴンのみの設定。日本でカローラの名が付くハッチバック車が発売されるのは、実に12年ぶりとなる。この新生カローラハッチバックは「カローラスポーツ」という車名で、オーリスに替わり日本市場に投入される見込みだ。セダンのイメージが強いカローラながら、実はハッチバックとしても長く、そして、なかなか波乱万丈な歴史を持っている。
文:片岡英明/写真:編集部、TOYOTA
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初のFFハッチバックは“カローラ”にあらず!?
1976年、カローラに歴代で初めて追加された3ドアリフトバック。セダン同様、駆動方式は後輪駆動だった
トヨタが、そして日本が誇る上質なファミリーカーがカローラだ。半世紀を超える長い歴史を誇るカローラに、利便性に優れたハッチゲートを持つ3ドアモデルが登場したのは1976年のことである。
3代目のE30系カローラに、新たにワゴン感覚のリフトバックを設定した。驚かされるのは、EFI(電子制御燃料噴射装置)で武装した高性能な直列4気筒DOHC(2T-GEU型)エンジン搭載の1600GTが用意されていたことだ。
広いキャビンスペースを実現するために、前輪駆動(FF)方式を採用した実用的な5ドアのハッチバックが登場するのは1980年代になってからである。
第1弾は1982年5月に誕生したカローラIIだった。エントリーユーザーや女性など、若いユーザーを狙い、ボディタイプは3ドアと5ドアのハッチバックだけの設定だ。
写真は1990年発売の2代目カローラII。ターセル/コルサの姉妹車ながら「カローラ」の名を与えられた
駆動方式もカローラは後輪駆動だったが、カローラIIは前輪駆動方式を採用。カローラを名乗っているが、ベースになっているのは2代目のターセルと兄弟車のコルサだ。カローラより格下のイメージが強い。
カローラIIを一族に加えたのは、1980年代前半に爆発的に売れ、カローラを販売トップの座から引きずり下ろしたマツダのFFファミリアに対抗するFF車がなかったからである。
カローラIIはFF方式を採用するが、エンジンはFR車と同じ縦置きタイプだ。スペース効率の点では不利だが、すぐに4WDに発展させることができる。この手法で誕生したのが4WDワゴンのスプリンター・カリブだ。
“カローラベース”の正統ハッチバック「FX」誕生
1984年に誕生した初代カローラFX。セダンのカローラをベースとしたハッチバックは、このFXが初めて。写真は1.6Lエンジン搭載の「GT」
カローラは1983年5月にモデルチェンジし、5代目のE80系に進化する。この時にセダン系は横置きエンジンのFF車になり、ハッチゲートを備えたファストバックの5ドアモデルも誕生した。
が、カローラIIのような2ボックスフォルムではない。今につながるFFの2ボックスハッチバックが仲間に加わるのは1984年10月だ。車名は「カローラFX」で、3ドアと5ドアが用意された。
カローラIIと違い、セダンとプラットフォームを共用する本家筋のFFハッチバックで、キャッチコピーは「2ボックス上級生」である。
ウエッジシェイプの強いデザインで、リアエンドは大胆に切り落とした。フロントもセダン系と違う専用デザインだ。
パワートレインは1.5Lと1.6Lの直列4気筒を設定する。イメージリーダーのFX 1600GTは、レビンのDOHCエンジン(4A-GEU型)を横置きに変更し搭載した。
ホットハッチと位置付けられるFX 1600GTは、メーターの照明をオレンジ色とし、シートもホールド性を高めたバケットタイプになる。
サスペンションは前後ともストラットの4輪独立懸架だ。リアが4リンク式のレビンよりコーナーでは踏ん張りが利く。ブレーキも4輪にディスクを配し、フロントはベンチレーテッドディスクとしている。
FX 1600GTはツーリングカーレースでも大暴れし、カローラのイメージアップに大きく貢献。個性を好むヤングジェネレーションも、積極的にカローラFXに乗った。
FXの終焉でカローラベースのハッチバックは消滅
1987年発売の2代目カローラFX。このモデルは1992年まで販売され、バトンタッチした3代目は1995年で生産終了。ここで一旦、日本国内でのカローラベースのハッチバックは途絶えることになった
初代カローラFXは短命に終わった。本家のカローラがモデルチェンジしたためだ。1987年5月、2ボックス版のカローラFXも一緒にデザインを一新し、2代目になった。
が、初代のような尖ったデザインではない。リアピラーは太く、フォルムもふくよかになった。このデザインは欧州の2ボックス市場を見据えたものだ。走りの実力もレベルアップしている。
リーダーは、4A-GE型スポーツツインカムを積む3ドアのFX-GTだ。6ウェイスポーツシートを採用し、タイヤも185/60 R14サイズのラジアルを履いていた。
3代目はカローラのセダン系より11カ月遅く、1992年春にモデルチェンジを敢行。狙いを若者だけに絞り、日本向けは3ドアハッチバックだけとした。
「GT」が積むのは、5バルブ化し、可変バルブタイミング機構と各気筒独立スロットルを採用した4A-GE型直列4気筒DOHCだ。
4輪ストラットのサスペンションには、レビンと同じスーパーストラットも用意している。スポーティ度は高かったが、人気回復はならず、8代目カローラが登場した1995年に市場から消えていった。
ランクスで復活したカローラの名、オーリスで再び消滅
2001年登場のカローラランクス。カローラベースのハッチバックが日本に再登場したが、後継車のオーリスからは「カローラ」の車名から外れた
6年のブランクの後の2001年1月、カローラにハッチバックが復活する。「先いくって、ドキドキ。」をキャッチフレーズにしたカローラランクスだ。
欧州市場を狙ったFFの2ボックスで、日本は5ドアモデルだけだが、海外向けには3ドアもある。ネッツ店向けの兄弟車、アレックスも登場した。
エンジンは1.5Lのハイメカツインカムと1.8Lのスポーツツインカムだ。1.8Lの2ZZ-GE型直列4気筒DOHCエンジン搭載車には6速MTもある。
が、カローラが10代目になった後の2006年10月、アレックスの後継ハッチバックがベールを脱いだ。それが世界戦略車の「オーリス」である。これを機にランクスは第一線から退いた。そのためカローラ店から一時期、コンパクト系のハッチバックモデルが消滅することになった。
オーリスはカローラハッチバックの事実上の後継モデル。日本仕様は1.5Lと1.8Lの直列4気筒DOHCエンジンを積んでいる。
FF車が主役だが、アクティブトルクコントロール式の4WDも用意された。2009年秋のマイナーチェンジを機に17インチタイヤや専用サスペンション、6速MTなどを採用した「RS」を仲間に加えている。
第2世代のオーリスにバトンを託したのは2012年8月だ。トヨタの新しいデザイン「キーンルック」で登場したのは記憶に新しいところである。欧州を狙ったモデルだから、ハンドリングも冴えていた。
このオーリス以降、痛快な走りのハッチバックは消えていたが、2018年に再び感動のハッチバックがカローラの名を冠して復活する。
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